第40話 急襲2

文字数 1,441文字

聞いたことのない言語が器内に流れる。

ナビコが意思疎通のために適当に歌いはじめた。

先方がその歌の言語を解析したようだ。

少ししてインターコスモ語で話しかけてきた。

「あなた方の船はおら達が支配しただ。余はオケラの手袋だ。」

「その船の情報からおまいらの母星の位置は把握した。」

「おのれらはうちらのご飯のおかずになるだろう。」

あんまり翻訳機の精度は高くないようだ。

与えた情報が歌だったせいか何かメロディがついて変な感じだ。

しかし、まずいなあいつ結構強いぞ。

連合は助けてくれるのか?

ゆらりと器体が揺らいだような気がした。

シナイのすぐそばを巨大な円錐形の宇宙艦が通り過ぎていく。

「シュッツグル星人の宇宙艦です。」

「彼らは第3種知性体です。」

「残念ながら私達では太刀打ちできません。」

シナイに乗っていた人造人間(Artificial Human)アーフが言う。

アーフはヒューマンエラーを防止
するために航行には必ず1体は同行させる事が義務化されている。

器の移動能力は奪われて、通信も今は出来ない。

連合の救援を待つばかりだ。

どうしようもない。

「しょうがないカレーライスでも食べよう。」


突然サロンの前壁面のモニターが女の子を映す。

まあこっちも子供ばっかりなんだけど。

(エデン人には進化プログラムが連合との協約の一部として施行されてネオテニー-幼形成熟化のための遺伝子操作がされている。

これは成長期を長期化する事で効果的な学習期間を設けてさまざまな知識のダウンロードに対応するためだそうだ。

って訳で見た目子供のまんまが普通の状態になっている。)

ピンク色の髪でツインテールってこういうの好きな奴多そうだ。

「うらは毛根のトンネルだー。うちらはおまいらの亀を支配する。言う事を聞かなくても浅漬けを飲むぞ。」

キンキン声で飛び跳ねながら訳の分からない事を言っている。

翻訳機の調整が今ひとつのようだ。

「どうやら侵略を受けているようだ。」

エデン統合政府副首長アキが言う。

「まずいですね、あれは連合に加盟していない第3種知性体シュッツグル星人、彼女は第一指導者のクミンです。」

アカシックネット上の情報は一度も見たことがなくても検索出来てしまうのでびっくりする。

副官のアーフが答える。

しかしサロンにいる周囲の人々の反応がおかしい。

「何?なになに、今の独占配信。」

「すげーかわいい。」

「あれ新しいダンス?ぴょんぴょん跳ねてた。めっちゃキュート。」

「あの甲高い声で訳わかんない歌詞、超いけてた。」

「もういっぺん見よ。」

なんか勘違いしているような?

侵略者の第3種知性体シュッツグル星人側でも困惑していた。

「クミン指導者ー、あいつら変です。なんかクミン指導者の演説めちゃうけてます。」

執行委員のターメリが首を傾げている。

「一瞬で72億いいねがつきました。」

「同数のフォローがついています。」

「コメントがなんか変です。」

「ピンクのツインテール尊い。」

「かわいいのがぴょんぴょん跳ねてたー。」

「多分深い意味を持つ歌詞と聞き取りにくい歌声と不思議な踊り、新しい。」

「なんかさっきの演説宇宙中に拡散されているみたい。」

ちょっとキャプチャーを再生して見て見よう。

「あーっ、なんだーその動きー。」
「やめろー。何言ってんだこいつー。」
「うーっ、しぬ、死んじゃう。」
「お願いぴょんぴょん跳ねないでー。」

クミン指導者が自分の動画見て悶えている。

だからちゃんと翻訳機の確認や演説の練習してからの方がいいって言ったのに。

ターメリが呆れて肩をすくめている。


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