第52話 惑星ウェクイ
文字数 886文字
連合とは反対側の星域をテリトリーとしている第327星間連盟は第4期コスモツアーをきっかけに連合と協定を結んでツアーへの参加とエデン文化の享受を合法化した。
もう200年ぐらい前の事だ。
連盟の代表 文明レベル第4種知性体ウェクイ惑星人ルキルカは音楽配信グループ アポカリプスの歌姫として参加している。
アポカリプスにはエアリアとクミンとルキルカの3人の歌姫がいる事になる。
惑星ウェクイのイベントホールは恒星タルミソを周回するウェクイのラグランジュポイントの一つにあった小惑星ソヨンをくり抜いて建造されている。
この小惑星は内部に水と大気が存在している。
生物としては手の平大の巨大な単核生物が生息している。
水はくり抜かれた惑星外殻の内側に張り付いて海のように見える。
イベントホールは小惑星内部の中空にあって球形をしている。
出入り口のようなものはなく密閉されている。
内部へは主に転送で移動する。
広さって言うか大きさは月の4分の1ぐらいかな?
宇宙中から観客が集まるから別に大きすぎるってほどでもない。
今は他のグループの歌姫が歌っている。
大歓声がホールに響き渡る。
最近の一番人気の歌い手だ。
歌い手は完全なシルエットで姿を見せることはない。
それでも声帯を3つ持つエアリアを超える音域と音色を巧みに扱う。
強力に精神に衝撃を与えて揺さぶる。
完全な合成体で実体がないのではないかと言うものもいる。
だとしても、だからどうだって言うんだって思ってしまう魅力がある。
シンがボーっとして聴きいっている。
シンに抱えられたラドが大きな目を見開いている。
少し音源とはアレンジが違う。
「確かにここにいるよ。」
「みんなと同じ時間、同じ空間を共有しているよ。」
そう語りかけている様だ。
それこそがライブの醍醐味だしね。
それが伝わるのか観客はさらに盛り上がって行く。
「なんか凄かったね。」
ルキルカが言う。
クミンとエアリアがこくこくとうなずく。
「原曲の良さを最大限に活かす歌の組み立てをしていた。」
記録と編集ディレクターのグンタが感心している。
「ちょっと練習しようかな?」
クミンが言う。
「心配ないよ。クミンはクミンだよ。」