第29話 宙族の襲撃3

文字数 958文字



キチフェス船長は、頭についた大きな耳をぺたんと下げて涙目になって呆然としている。

「なんだ?なにが起こった?無敵のはずの我がウサミミ艦隊がなす術もなく壊滅した。しかも余裕をこかれて、この艦だけを残して。」

虫みたいに触角のついた少女と少年、それから小さな女の子が艦橋に実体化する。

「乗り込んできた?」

艦のクルー達が硬直する。

ワープ航法は実用化したが生身の人間を転送する技術はまだ無い。

ウサミミ達の技術力では不可能だと考えられていた。

「シンちゃんぅ、このぐらいの作りだとぅ戦艦だなーってぇわかりやすいだろうぅ。連合からするとものすごく過去の技術なんだけどねぅ。」

ミルゥカさんが見学しようって言ってウサミミの宇宙船の艦橋に転送して来てんだ。

まるでウサミミ人達がいないみたいな振る舞い。

キチフェス船長やクルー達が呆気に取られている。

「お前たちは何者だ?」

我にかえったように耳をピンと立ててキチフェス船長が言う。

「星間通商連合の宗主国M76星団 ウリアレス恒星団、惑星ヴァイ統一国家の星間通商連合新規事業部開拓課観光係主任ミルゥカだよぅ。(長い)今は臨時宙族監視官を兼任しているぅ。」

「星間通商連合?宙族?なんの事かさっぱりわからない。」

キチフェス船長は首を傾げる。

「そりゃそうだよぅ。通常、連合は文明レベル第4種知性体以下の種族とは交流を持たないからねぅ。」

「この惑星わぅ連合管轄の観光地区だしぃ、今はお客さんがいるからぅ、お前たちを放置するわけにぃいかなかったんだよぅ。」

だいたい一方的に宙族って言われても意味がわからないだろう。
連合法の基準でのことだから。

連合も管轄外の惑星外でのことだったり観光バスの運航中じゃなかったら相手にしなかっただろう。

キチフェス船長はただ運が悪かっただけだ。

連合が宙族を完全に駆逐せずに少し残すのは温情からではない。

何も残らないと宙族の本国が何が起こったのかわからないで、またノコノコと出て来る可能性があるからだ。

不可侵条約を結ばせて連合のテリトリーに入って来ないようにするためだ。

「シンちゃんぅ、こいつらって結構かわいいじゃんぅ。本国を見に行こうよぅ。」

どっちみちキチフェス船長の艦はバスの攻撃を受けてボロボロだから自力で帰れないだろうしね。

でもこれ本当に観光バスだよね、っていまさらだけど。


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