第10話 始まりの日

文字数 993文字

巨大な球形の物体が完全に空を覆う。

薄明の空はその物体の変に鮮やかなマーブリング模様に埋め尽くされた。

突然テレビやスマホやパソコンなどディスプレイのついた機器が勝手に起動して映像を写し出した。

まだ早朝なのに窓の外がやたらと明るい。

カーテンを開けて見ると空に巨大なスクリーンがあってテレビやスマホと同じ映像が表示されている。

「異星人の侵略か?」

世界ではまだ夜中の所もあるだろうに一方的に叩き起こされるって何?

まあ知らないうちに地球をぶち壊されたり虐殺されるよりはましかもしれないが。

ああ、ここはロンドンから2時間ほど離れた農園。

俺は農夫、ファーマーって奴。

日本人からすると西洋人ってのはなんでもカッコよく見えるらしいな。

この間も日本から観光に来たって言う女の子達が
「素敵ー。」
「かっこいい。」
とかおだてるもんだから調子にのってじゃが芋をいっぱいあげたんだけど、重いし検疫に引っかかって持って帰れないから要らないって言われた。

あれ?なんだったっけ。

そうだ、この空いっぱいのスクリーンだ。

この技術差や物量差はダメだ絶対に戦って勝てないと見せつけられているようなもんだ。

なんだか子供みたいな種族ばかりだがネオテニー(幼形成熟)と言っていつまでも子供のままの方が脳としては成長する時間が長くなる。

より柔軟に多くの知識が得られるらしいので高度な知性を持つ種族と言うのは子供のまま長い時を生きているのかもしれん。

沢山のピンク色の服の女の子達の1人が何やら話し始める。

「星間通商連合法第254条対下位知性体種族特例65に基づいて惑星ヴァイ統一国家、星間通商連合新規事業部開拓課課長ピータンはその権限により文明レベル第5種知性体辺境惑星ペコの住人 田延 伸(たのべ しん)を惑星ペコの代表に任命する。」

そう言った直後何やら法律の条文のような物やそれを理解するために必要な知識や情報がどっと頭の中に飛び込んでくる。

とんでもない知識や情報を頭に突っ込まれた。
おそらく人類は一気に何万年分かの進歩をした。

そうでなければ彼らの法律や言語が理解できないからだ。

全人類を対象に一律でインストールされた。

これって占領下の統一化教育と何が違うんだ?

「だってせめて知識レベルや言語はわからないとなんにも理解できないでしょ?」

こいつらにとってはこの星とどう付き合うかは決まりきっているので誰が代表でも全く問題がないんだろうな。


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