第1話 第3種接近遭遇

文字数 1,424文字

「なんだこれ?」

「それ」は床からにょっきりと生えているようにみえる。

あるいは床に開いた穴から出てきている?

だけど僕の部屋にそんな穴はないし、ここは2階なのでそんな深い穴があったら1階のリビングでも見えたはず。

「それ」はソーセージに大きな目をふたつつけただけ。

ああ、頭?の上にチョウチンアンコウのように一本毛が生えているかのように伸びた触角のようなアンテナのような...。

まあ、そんなようなものの先に発光する丸いピンポン球のようなものがついている。

まばたきはするみたいだ。

大きさは....。
太さが直径30cmぐらいで70cmぐらいの高さ。

頭の上のアンテナみたいなものを含めたら90cmぐらいにはなるだろうか。

「それ」はキョロキョロと眼球を動かして部屋の中を見まわしている。

べつに4畳半の子供部屋でそんなに見るものもないと思うけど。

こんな生き物は見た事がない。

ただキョロキョロしているだけでその場からは動かないし、何かしゃべるわけでもない。

僕は 田延 伸(たのべ しん)小学5年生。

学校はもう半年ぐらい行っていない。
勉強は家でしているから大丈夫。

何年か前からイジメにあったり、集団行動に馴染まない子供に向けて登校しなくても在宅で勉強ができるようになっている。

僕は5年生になってすぐの頃たくさん人がいるところでは過呼吸症候群になったり、嘔吐してしまう病気になってしまった。

原因はよくわからない。

とりあえずこの変な奴がなんなのか写真を撮って画像検索してみる。

結構世界中で目撃されている。

海だろうが山だろうが街中だろうがお構いなしに出没している。

ただなんなのかはわかっていない。

宇宙人かも?とか言われている。

動画では何もないところに黒い穴が出現してそこからニョロって出てきてするっと引っ込んで消えてしまう。

こいつみたいにずーっといるような、また人のすぐそばでじっとしているようなのは無い。

なんなんだ?何しに来ているんだ?

母が部屋に入ってくる。

「そろそろお昼にする?」

今日は仕事が休みみたいだ。

母は「それ」を見ても何にも動じない。

「友達?この子もお昼食べる?出来たら呼ぶから降りてくるのよ。」

そう言って一階に降りて行った。

「ん?」

それはそれでびっくりだ。
何も不自然に思わなかったんだろうか?

「それ」はジーッと僕を見ている。

これ触れるのかな?ちょっと触ってみようかな。

そーっと手を伸ばすと「それ」は床の穴ごとスルスルと後退りする。

うーん、嫌なのか。
それならやめておこうと手を戻すとスルスルと退がった分だけ戻ってくる。

今日はタブレットで算数のドリルをやろうと思っていたんだけど「それ」が気になってぜんぜん手につかない。
そりゃそうでしょ。
でもなんだかずーっと見ていられる。

「シンちゃん、ごはん出来たわよ。降りてきなさい。」

「それ」はどうするんだろ?と思うけど「それ」は話しが通じるのかな?

「おまえ、ごはん食べる?」

聞いてみる。

「それ」はまばたきをしてそれから左右に揺れている。

なんだかよくわからないのでとりあえず置いていく。

ところがダイニングに行くと「それ」がいる。

テーブルの上に黒い穴が出来てそこから出てきている。

母は別に気にする様子も無く僕とそいつの前にパンケーキを並べる。

なんでなんだろう?

ジーッとパンケーキを見ている。

僕が食べ始めると「それ」の前のパンケーキが消えた。

「食べた?」

パッと、急に、唐突に「それ」が消えた。

なんだったんだろう?

少し寂しい気がした。






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