第19話 アグウグ帝国

文字数 1,043文字

アグウグ帝国は20,000器の航行器の中にある。

この中にある惑星は中心となっていた恒星を失った星々で高度な技術力がなければ恒星とともに失われていた。

恒星が白色矮星になったり超新星になってはじけてしまう何万年か前の変調が著しくなる頃、アグウグ人は総力を決してこの航行器を作り上げ恒星から自立した。

そしてその後も同じような境遇の星を収容して来た。

気候や地殻変動は完全にコントロールされ安定している。

広大な農地があって帝国と連合の食糧庫になっている。

元はエネルギー源として効果的なタウログと言う穀類が大半を占めていた。

けれど最近は少しずつアグウグ人には馴染みのなかった野菜や果物が栽培される様になった。

農地には関心を持たなかったアグウグ人がアーフに混ざって農地ので浮遊する監視台のから畑の様子を見下ろしている。

アグウグ帝国を見に来たシンも一緒に畑を見下ろす。

農地の一部といっても見渡す限りにトマトが赤く実っている。

元々連合や帝国では料理とか味覚とかいう概念はなかった。

食事はただエネルギーを効果的に効率よく摂取するだけのことだった。

「どうしてトマトの栽培をしているの?」

アグウグ人の栽培官クノグルはシンを見てニコニコしながら話す。

「キミちゃん帝王様にピータンが頼んで来たんだよ。ケチャップを作るんだって。君のうちで食べたって。」

「美味しいってどんな感覚なんだろう?共有感覚情報ではなんとなくわかるんだけど、自分でも感じてみたいな。」

クノグルは王冠とマントがないだけで後はキミちゃん帝王様とそっくり。

「僕たちは分裂して増殖するんだよ。」

「だからそっくりなの?」

「遺伝子情報が一緒だからね。一回あたり4人に分裂するんだ。」

「キミちゃんが原初の1体でそこから増殖したんだよ。」

「因みに僕はF83個体。」

帝国にはキミちゃんの分裂体とアーフそれから一部連合のお客さんぐらいしかいない。

キミちゃん帝王様の分裂体とはいってもそれぞれ個々のパーソナリティを持っている。

明らかに別の独立した存在。

ただしキミちゃん帝王様の持つ情報や知識はそれぞれにそのまま受け継がれる4つに分られるわけではない。

ストレージを4つに分ける事でキャパシティを増やそうと言う考えではない様だ。

「たくさんいた方が色んなものを見る事が出来るし経験も出来るでしょう?」

クノグルがにっこり笑うとやっぱりキミちゃん帝王様にそっくり。

キミちゃん帝王様の分裂体はみんな情報や経験を共有しているって事?

帝国ではプリンやドーナツが大流行しているらしい。


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