第30話  惑星ウサミミ 1

文字数 1,039文字

第30話 惑星ウサミミ 1

宇宙星域285モリノアナ星系 ウサミミ惑星 文明レベル第4.5種知性体ウサミミ星人。
キチフェス船長は第332宇宙艦隊の旗艦ホワイトバーニーの船長だった。

歴戦の戦士だ......が。

今はミルゥカの膝の上で顔を真っ赤にして頭を撫でられている。

「ふわふわの耳で気持ちいいね。」

アキもウサミミ人のクルーを1人つかまえて撫でている。

どうやら撫でられると大人しくなる習性があるみたいでうっとりとしているように見える。

星間通商連合の宗主国M76星団 ウリアレス恒星団、惑星ヴァイ統一国家の星間通商連合新規事業部開拓課観光係が運営する星間旅行社スタベラの観光バスはホワイトバーニーを曳航してウサミミ惑星に行く。

「ツアーのスケジュールに問題はないの?」

「大丈夫ぅ。トイレ休憩みたいなものよぅ。」

ラドが艦橋のすみでちぢこまっているウサミミ人クルーの1人の耳に手を伸ばす。

一瞬ビクッとするけど大人しく耳をラドの方に向ける。

厳しい軍事訓練とかして来た軍人なんだろうに、相手が悪いと愛玩動物扱い?

宇宙って厳しい。

ウサミミ惑星の衛星軌道上に到達すると雪うさぎのような形状の宇宙船団がバスを取り囲む。

「おーいキチフェス、艦隊はどうした?負けておめおめと自分だけ生きて帰って来たのか恥知らずが。」

「やめろ、ククウェル手出しをするな。」

「そんなちっこい船1隻に負けるってどんな詭計にはまって、どんな失策をしたのか?策を弄するものは策に溺れるとは良く言ったものだ。」

どうやらキチフェス船長は頭脳派の軍人で同僚からは妬まれていたようだ。

「いいからおまえは手を出さずにピキティル代表を出せ。」

キチフェスは必死だ。

仕方がないのだけど、こいつらは連合の怖さが何もわかっていない。

「腰抜けの話しなど聞く耳持たんわ。代表が出るまでもない、まとめて死ね。」

いきなりミサイルを撃って来た。

「バカぅだなぅ。」

「あれ?回避しないの?」

「あれには核弾頭がのっているぞ。」

「あんな旧式の熱核爆弾がぅこのバスに効くわけないじゃないぅ。」

ミルゥカさんは全然動じない。

そう言っているうちにミサイルはバスに着弾する。

一瞬窓が外部の光を遮断して機内灯の灯りだけになる。


異星人の小さな船と曳航されて来たぼろぼろのホワイトバーニーがあった宇宙空間を真っ白な光が包む。

「あーははは、のこのこ丸腰でやって来るからさ。目の上のたんこぶもいなくなって一石二鳥だよ。」

ククウェルと言われた少女に見えるウサミミ星人が上機嫌で笑っている。
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