第55話 第5683次宇宙大戦2
文字数 1,325文字
「なんだー。突然子供が現れたー。」
いきなり艦隊の旗艦が消滅したかと思ったら食パンみたいな長方形の角を少し丸くした様な宇宙船が前方に現れたのだ。
我々はこの宙域を支配するブリサワルス皇国所属のパトロール艦隊だ。
この食パンはいくら信号を投げかけても全く返事をしないので敵勢力の宇宙船だと判断して攻撃したのだが皇国の強力なビーム砲が全然効かない。
すでに近隣を航行している皇軍の艦隊には報告した。
当初、艦橋に突然現れた3人の子供は我々の知らない言語で話していたのだけれど翻訳機の様なものがあるのか徐々に我々のわかる言語で話す様になったのだが。
「ダメだよ、リニア航行している航行器の前に飛び出してきちゃ。」
「はっ?何が?」
「ワープ航法なら実体化する前に実体化ポイント周辺を走査しないとダメじゃん。」
「リニア航行している艦船を感知して通り過ぎるのを待つのがマナーだし常識でしょう?」
ピータンと名乗るちっちゃい女の子がまるで大人みたいに説教してくる。
ブリサワルス皇国所属のパトロール艦隊は20歳から30歳ぐらいの隊員で構成されている。
「いやいやリニア航行とか亜空間内から実体化点の走査とか訳わかんないし、常識とかマナーとかなんなん?」
「ピータン、この人達の技術レベルだと理解出来ないんじゃないかな?許してあげたら?」
「ななな、許してあげたらってなんだよ、お前たちがぶつかって来たんじゃないか。」
「それにこっちの旗艦を破壊しただろうが。」
「何言ってんだよ、避けられない位置に実体化して来たから次元カプセルに収納しただけじゃん。」
「収納?」
ブリサワルス皇国の技術レベルでは理解出来ない事をペラペラと喋る子供だ。
そう言っている内にもう1人転移して来た。
「人間だけで交渉を始めちゃダメじゃないの。」
これは少しお姉さんっぽい。
ピータンとシンはラドの転移能力にくっついて来たのでアーフを忘れて来ちゃったのだ。
「もう充分に話しがこじれているみたいね。」
「だってこいつら何にもわかってないんだ。バカみたいにビームをばら撒いてさー。」
無表情のまま口が悪い。
怒ってんのかな?
知性と品性って別物?
アーフが困っている。
「あなた方は認識していないようなので説明するとあなた方は星間連合の定める宙航法を違反しています。」
「安全義務違反です。」
「さらにビーム砲を乱射するというあおり運転をしており危険航行にあたります。」
「減点13点で航行免許の取り消しと罰金が課せられます。」
後からやって来た女性型の人造人間がなんか言っているけどそんな決まりなんか知らない。
「あなた方は連合に未加入なので連合法をご存知ないと思いますので今回は法の適用を猶予しますが、今後この様な事がない様に教育を実施します。」
頭の中に直接ダウンロードするやつだな。
シンがかつてエデンであった事を思い出す。
ブリサワルス皇国のパトロール艦隊のクルーが色めき出す。
「何を一方的な事を言っている。ここは皇国の領域だし、連合や法律など知らん。それに教育ってなんだ?」
この艦の艦長だろうか?30歳ぐらいの青年が言う。
もっともだけどね。
「間もなく我が皇国艦隊が到着する。」
青年がどうだと言わんばかりの様子。
ピータン的にはだからなんだって感じ。