第13話 惑星ヴァイ

文字数 1,567文字

次元航行が一瞬で終わると目前には地球に似た青い惑星が現れる。

海と陸の比率が地球とは逆転している。

地表面に建築物などは見当たらない。

ただ森林が広がっている。
雑木林的な自然さではなく高度に管理された整然とした植林地のように感じる。

入口らしきものが何も無く唐突に構築物の中に入る。

広大な空洞と言った場所だ。

蜂の巣のように規則的なパターンが組み合わせられた非常に無機質なデザインの建築物が林立している。

「私達は道具によらない移動手段を持っているし、次元移動が出来るので出入り口と言った概念がないの。」

だから地上から唐突に地中の都市空間に移動できたのか。

ピータンは額にある目の瞼をぱちぱちさせている。
ピータンには目が3つあって手指は6本ある。

時計やダース単位の数え方があって大昔にも地球に来ていたことがあるのでは?と聞くと。

「それは我々ではない。辺境のいくつかの文明レベル第4種知性体が何度か都市実験と言って惑星ペコに干渉していたことはある。」

とのことだ。

星間通商連合の宗主国M76星団 ウリアレス恒星団、惑星ヴァイ統一国家の議事堂に案内される。

史書集団や種族学の研究者が集まってくるけれどみんな子供に見える。

それにみんなアニメのキャラクターみたいな衣装を着ている。
コスプレしているの?

「ピータンなんで普通のカッコしてんの?みんなはお客さんが来るからおしゃれって言うのをしようって決めたのよ。」

この人技術院の代表らしいんだけど魔法使いみたいな衣装を着て箒まで持っている。
他にもプリキXXみたいなのや、セーラーXXXみたいな人など魔法少女系が人気みたいだ。

ハロウィンか?

どうやらすっかり地球のアニメにかぶれてしまったようだ。

「どうだシン、これ似合うじゃろう。」

キミちゃん帝王様が魔王の衣装を着ている。
多分「王」ってのが気に入ったんだろう。変に似合っている。

「うん、かっこいいよ。」
って言うと満面の笑みで喜んでる。
何着ても充分かわいいんだけどね。

高度な知性や文明を得るには長期の成長期が必要なのだろう。
ネオテニー(幼形成熟)であり、さらに長寿命である事が必要なのだろうか?

ヴァイ人には寿命がない。
ごく稀に人数の維持の為だけに繁殖する。

繁殖はクローンが用いられる。
男女の性差がないのはそれを必要としないからだろう。

「それ」と呼ばれたラドはそんな彼女達にとっても彼女達以前から存在する謎なのだそうだ。

だがラドはシンについてきただけ、シンもまた惑星ヴァイを見にきただけでそれ以上の目的があるわけではない。

何か新しいものを見るたびに「わーっ」とか「きゃあー。」とか言っている。

完全に遠足気分。

この都市には道路がない。
そして建物に出入り口がない。
ヴァイ人は空中に浮かんで移動して壁面を透過する。
だから自動車とか飛行機などの概念がない。
恒星間ドライブのような航行器があるぐらいだ。

だいたいみんなが集まったのだろう。
シンも案内されて席についた。
人造人間(Artificial Human)アーフが給仕のようにプリンやドーナツ、カルXスをみんなに配る。

さっきの技術院の代表の人が言う。

「ピータンが収集して来た情報から再現したんだよ。美味しい?」

普通に母が作ったのと同じ味。

「私達には料理と言う概念がないの、食事は効率的で効果的に栄養を摂取する事で味覚を楽しむ事ではなかったから。」

ファウェルと言う名の技術院の代表は言う。

「およそ多くの高度な知性レベルの種族は情緒とか無駄を嫌うから高度な文明は築いても豊かな文明を育てることにエネルギーをかけることはなかったの。」

「ペコ人は知性レベルこそ低くて未開の人種だけど豊かな文化を持っている稀有な存在だって事が今回のピータンの調査で分かったの。」

「これは長く停滞していた先進の連合星の種族に強烈な刺激を与えることになるわ。」





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