第10話:幸子への贈り物と風邪

文字数 2,525文字

 やがて秋風が吹き寒くなり12月、今年も木下家のクリスマスパーティーに呼ばれ豪華なケーキをいただき楽しい一時を過ごし1984年を迎えた。1984年1月も寒い正月であり大雪の知らせが多かった。仕事始めの頃、以前買ったトヨタ株が上昇し1月11日、1140円で18000株売却して残金が894万円になった。

 この冬休みもソロバンの練習帳を再度、復習して5級までの所は完全にこなせるようになり今年の夏休みは更に、その上のソロバンの練習帳を買ってくる事を約束した。またNHKの英語入門の放送に興味を持って、毎週、見ていた。また奥さんの実家では小学生向けの本を買ってきてくれ、毎晩のように寝る前に読んでいた。寒い冬が去り4月になり幸子が2年生になった。

 テレビの歌謡番組でアイリーン・キャラの歌うフラッシュダンスを聞いて幸子がすっかり気に入った様で歌詞を覚えて歌うようになり大きなラジカセが欲しいなと言うようになった。日本の歌では杏里のキャッツ・アイが好きで口ずさんでいた。その他、ABBA、アバや、カーペンターズ、オリビアニュートンジョン、マイケルジャクソンなど洋楽が大好きになった。特に流れるようなメロディーが気に入った様だ。

 この話を聞いた奥さんの両親が夏休み、クリスマスにはちょっと早いがプレゼントにラジカセを買ってやろうと言った。そして大きな電器屋に行き店員と幸子が話した。ラジオ、AM、FM
が聞けて音が良くて持ち運べて可愛いデザインのものが良いと言うとピンク色のソニーZX-7
を持ってきて、これなんか良いのではないですかと言われた。

 すると幸子が、実際に見て聞いて手に持って、これが良いと決めて多くのカセットテープと共に包んでもらい、その後、犬山重臣の社宅に帰って来た。一緒に買ってきた寿司を食べながら、おじいさんにカセットを利用して一生懸命勉強するんだよと言われ、ありがとう、これを使って英語を勉強したり音楽を聴いたりしてするよと幸子が言った。

 それから気に入ったアバやカーペンターズ、オリビアニュートンジョンの曲をカセットに録音して聴いた。また英会話入門の番組も聞いて録音して再度、復習して勉強。英語って格好いいから好きといって英単語、日常の会話を次々に覚えた。また本もよく読んで小学校の図書館の本も借りて読んだ。夏休みが終わり運動会が終わると秋風になり冬、今年は子供達が大きな病気にならずに犬山夫妻も病院のお世話にならずに済んだ。

 今年も12月24日、木下家でクリスマスパーティーを開きケーキや鳥の丸焼きをいただいて歓談。すると突然、幸子が私の書いた、おじい様とおばあ様への手紙を聞いてと言ってポケットから紙を取り出して今年の夏休みにラジオカセットを買っていただき本当にありがとうございました。これを使って一生懸命勉強して両親に楽させてあげられるような立派な大人なになって働いて、いっぱいお金を稼いで見たいです。

 それまで、おじいさんとおばあさんには長生きしてもらいたいと思いますと発表した。これを聞いていた木下家の幸子の祖父母が目頭を押さえて、ありがとうねと言い本当に良い子に育ったと、おばあちゃんが幸子を抱きしめた。この光景を見ていた幸子の両親は涙を浮かべ幸子を呼んで頭をなでて良いお姉ちゃんになったねと感慨深げに言って淑子さんが幸子をしっかり抱きしめた。その後、1985年を迎えた。

 1985年も年初から寒い日が続き風邪に気をつけて生活していたが1月10日に会社から帰って来た犬山重臣が赤い顔をしてるのに奥さんが気づき熱を測ると38.5℃もあり氷嚢を作って布団に寝かせた。そして翌朝も熱が続き熱を測ると39℃を越えたので会社に病欠の電話を入れて近くの内科に連れて行くと、薬を処方された。

 金曜、土曜と休んで翌週の月曜に熱が落ち会社に出勤したが、今度は長男の良男が赤い顔して
熱を出し近くの小児科に行くと流行性感冒と言われて薬を処方された。お姉ちゃんの幸子が掌を良男の額につけて熱い可哀想と言って小さな氷嚢の交換を手伝ってくれた。幸子も母の淑子もマスクをして生活していたが犬山重臣が風邪にかかってから1週間後に熱を出した。

 しかし今日は金曜だから学校へ行くと言い出し無理して学校に行った。家に戻ると赤い顔して、きつそうな顔していた。暖かいお茶と御飯を少し食べて寝たが翌朝も顔が赤いので今日休んだらと母の淑子が言うと今日は土曜で明日、休みだから頑張って学校へ行くと出て行った。昼前に家に着くと幸子は疲れたと行って、うがいをして温かいお茶を飲んで、すぐ寝始めた。

 16時過ぎに起きてきて熱を測ると37℃まで下がり大好きな梅干し入りのおじやを作ってと言ってお風呂入ると言った。風呂から出ると目がしゃっきりとして、おじやを食べると目玉焼きも食べたいと言いミカンも食べると言い21時過ぎに床についた。翌朝には、すっかり熱が落ちて体調がもどったようだ。今年は東京で例年になくインフルエンザが流行しているようだ、

 犬山重臣が言って会社でも病欠の人が多くて困ったと話していた。一方、株の方では1985年2月12日にトヨタ株が下げて753円で1万株、購入し残金が141万円となった。やがて3月となり暖かい日が増えてきてインフルエンザの流行もおさまり4月の下旬に桜の花が一斉に花ひらき美しい桜の季節になり幸子も小学3年生になった。

 そんな日曜日、井の頭公園へピクニックへ行き満開の桜と桜の花吹雪を体験して父がカメラで満開の桜の写真をいっぱい撮ってくれた。今年は家族4人で電車を乗り継いで、ちょっと遠くの多摩動物公園へ行った。珍しい動物を見ると良男が大きな声を上げて喜んだ。長女の幸子は動物園中を走り回って父のカメラで珍しい動物の写真を撮りまくった。

 一休みしてアイスクリームやジュースを食べ昼は持参した弁当を開いて暖かい春の日を浴びながら食べた。幸子は猿の親子の行動に興味を持って、観察して小さな赤ちゃん猿とおかあさんと年上の子供の猿が、こちらを見ながら歩いてる姿を見て私たちみたいねと笑いながら指をさして教えてくれた。父がホント、そっくりだねと大笑いしていた。
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