第46話:良男の会社復帰と木島輝彦さんの癌転移

文字数 2,589文字

 そう言う話を下を向いて聞いていた麗子さんが
「ハンカチで涙をふきながら、馬鹿、あんまり心配させるんじゃ無いよ」と笑いながら安心した様子で言ったので犬山重臣と奥さんは安心した。寛太と範子が、あー良かったと大きな声で言ったので笑い声が上がった。そうして退院パーティーは終わり床についた。

 翌日、出かけていた木島輝彦、葉子夫妻が帰って来たので息子の犬山良男を紹介した。8月11日から犬山良男は毎日、手すりを使ってリハビリをして極力、車いすを使わない様に生活していたが母の淑子さんが、いつも、その後を追いかけて見守っていて汗びっしょりなったらタオルを渡しシャツを着替えさせたりしてリハビリの補助をしていた。

 そんな日が何日も続いて、やがて涼しくなってきた9月の中旬、紹介された東京の病院に経過観察のために犬山重臣と奥さんと良男の3人で行くと靱帯もしっかりついてるようだし筋肉もだいぶ戻ってきましたと言ってくれて、このままいれば今年中には完全に車いすは使わなくて生活できるようになりますと言った。しかしプロサッカー選手に戻るには、まだまだ早い。やめる決断も必要かも知れませんねと言った。

 それを聞いて良男は、もう30歳になるのでプロサッカー選手はあきらめますと、あっさりと言った。しかし東京ガスの会社に所属したので内勤業務は支障ないですよねと聞くと、その先生が大丈夫でしょうと言ってくれた。この結果を封書でFC東京と東京ガスに送ると数日後、東京ガスから2名の方が家を訪ねてきて退院おめでとうと言い来年1月から自宅から近い東京ガスの営業所で事務の仕事に復帰して下さいと言いに来てくれた。

 この話を聞いて犬山良男は流れる涙を拭いて、ありがとうございますと言い、これからは仕事に頑張りますと上司と思しき人と、がっちりと握手をした。犬山重臣夫妻も、その方に頭を下げて、ありがとうございますというと、私は、彼を入社以来、見ていますが気が利いて頭が良くて明るくて社員にも、お客様にも愛される良い男だと言い良男の肩をたたいた。

 そして去って行った。その後も毎日、リハビリ、筋肉トレーニングを続けて、しっかりとした足取りで歩けるようになった。11月、12月になり12月24日、恒例のクリスマスパーティーを開いた。3組の夫婦と1家族4人の合計10人の共同生活は、その後もトラブルなく助け合って続いていった。そうして、2015年となった。この年、犬山良男が、東京ガスの家から徒歩10分の営業所に勤務することになった。

 あまりに心配なので両親が黙って後をついていき職場の場所を確認した。そして2月になり梅が咲き3月になり暖かくなってくると、やがて早咲きの桜が芽吹いてきた。4月になり春本場になり中旬には桜が満開となった。そして美しい春、辛い花粉症を乗り越え、5月のゴールデンウイークで東京の多くの外国人観光客が来る様になり6月の梅雨を迎えた。

 6月28日、2階の部屋に住んでる木島葉子さんが早足で階段を降りてきたかと思うと大変なの助けてと犬山淑子と吉田和子に助けを求めてきた。輝彦さんが苦しそうなのと言った。すると良男が体温計と血圧計をくれと言い犬山淑子から渡されると直ぐに2階に駆け上り奥さんの葉子さんを呼んだ。良男が体温36.7度、脈拍、上が142,下が110、脈拍をとると80で年齢が75歳。これをメモ帳に書いた。

 そうして自分の大型1ボックスカーの1席をフラットにして犬山重臣と犬山淑子と葉子さんをのせて、電話した救急病院に運んだ。メモした紙をみせて治療室に入り血液、尿もとって眼底検査や目の検査、胸部、腹部の触診をして、腹部、頭部、CTスキャン、体幹部のMRIをとり2時間ほどして、診察室に呼ばれて葉子さんと犬山重臣と犬山淑子の3人が入って聞いた。出てくると葉子さんが顔面蒼白になった。

 そして木島輝彦さんが緊急入院となった。話によると肺と肝臓に嫌な影があって肺がんと肝臓癌の疑いがあると言う。2日後、病院から呼ばれ木島葉子さんと犬山重臣と犬山淑子がついていった。すると循環器科の偉い先生が多分、肝臓癌が静かに進行して肺に転移したと思われると言い肝臓癌は既に進行していて手術は出来ない癌治療しても延命はするが副作用が大きい事と患者さんの容態を考え合わせると厳しいかも知れないと告げた。

 すると犬山重臣が先生のお考えの、これからの治療法はと聞くと緩和ケアで苦しまずに過ごす方法が患者さんのためにも良いと考えますと言った。ただし緩和ケアの場合、特別室で快適な環境作りのため費用がかさみますと言った。いくらくらいですかというと1日2万円から5万円ですと言った。すると木島葉子さんが、そりゃ無理ですと言った。

 単刀直入に伺いますが良いですかと犬山重臣が先生に聞くと構いませんよと言うので余命は、だいたいどの位だと考えておられますかと聞くと難しい質問でズバリ当たるという訳にはいかないことを承知いただければ、話しますというので了解した。すると多分3ケ月から9ヶ月、1年は難しいでしょうと言った。

 すると木島葉子さんが、そりゃ、あんまりだわと言って取り乱したので淑子さんが気丈に診察室から連れだした。その後、犬山重臣が、わかりました、ところで、その緩和ケアの部屋は空いてるのですかと聞くと、それは事務で聞いて下さいと言ったので了解しました、ありがとうございましたと言って診察室を出た。

 待合室で木島葉子さんを介抱している淑子さんに、ちょっと事務室で聞いてくることがあるからちょっと待っていてくれと告げた。エレベーターで1階の事務室で緩和ケアの空き状態を聞くと最近3室、空いたと言い1室が1日1万円、もう一つが3万円と言った。全部込みの料金ですねと確認すると消費税抜きの値段で全部込みだと言った。

 違いはと言うと3万円は患者さん用ともう1つベッドとソファーベッドがあり部屋が高層階で広い2万円はソファーベッド1つと中層階だと言った。どちらも、景色や太陽の入り方は同程度で快適ですと言った。2万円の部屋を予約して、キャンセルは可能かと聞くと、3日間の間に決めて下されば結構ですと言った。了解と言い2万円の部屋を予約しておいて下さいと言い、患者の名前を伝えた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み