第12話:算盤1級不合格とリベンジと今度は英検!

文字数 2,211文字

 やがて1988年があけた。今年は春の全国珠算連盟の1級に挑戦し、もし不合格でも秋の試験で絶対に合格しようと父が言うと幸子がわかってると言った。今年の幸子は覚悟を決めたのか厳しい表情で絶対に風邪を引かないようにと学校から帰ってきたら、必ず、うがい液でうがいし手を洗い外に出る時には必ずマスク着用するようにして出かけた。幸子の受験を知って家族達にも少し緊張感があった。

 2月、受験申込書をもらい書いて提出し3月10日の試験日を待った。その日は東京でも、みぞれ交じりの寒い朝だった。父は有給休暇をとり幸子と一緒に試験会場に向かった。途中の道で父がバランスを崩しそうになって何とか転ばずに済んだが危なかった。その時、幸子が、ちょっと慌てて大丈夫と大きな声で叫んだ。その後、会場に入り開始時間となり父が受験当日に滑りそうになるなんて我ながら馬鹿だなと悔やんだ。

 そして幸子が必要以上に、ぴりぴりしていたのが気になった。やがて試験が終わり会場から出てきた幸子を見ると、ちょっと顔が赤い気がして大丈夫と言うと、ちょっと緊張しすぎ最後の方まで答えを確認できなかったと言った。まー何とかなるだろうと、はげますと駄目、絶対に、合格しなければ駄目なのと言った声に父は驚いた。家に帰っても心配そうな幸子の顔が気になってしょうがなかった。

 数日後、不合格の通知が届いて幸子は、その通知を見て泣き出し、あんなに練習したのにと大声で泣いた。それを見ていた母が人生、いつも成功ばかりとは限らないのよ。次に成功するにはどうしたら良いか考えた方が良いわよと諭した。暖かくなった4月の第二日曜日に犬山重臣が家族4人で世界的に珍しい魚や水棲・陸棲動物を展示している池袋のサンシャイン国際水族館に出かけた。

 ソロバンの1級試験に落ちてから塞ぎがちだった幸子がマンボウやクリオネ、デンキウナギを見ているうちに少しずつ明るさをとりもどした感じがして犬山重臣が、実は俺も1級の試験の時に落ちたんだと打ち明けた。絶対合格したいという気持ちが先走って冷静さを失ってしまい思い通りに行かなかったためさと言い、秋に受かれば良いよと幸子に言うとお父さんも落ちたと聞くと驚きながら安心した表情になった。

 水族館・見学を終えて池袋の町で美味しいものを食べていこうと言いステーキの美味しいという店に入りステーキを頼んだ。もちろん良男は一番大きいサイズを頼んで料理が届くやいなや、すごい勢いで食べ始めると姉の幸子が、誰も、あんたのステーキを取らないから、もっとゆっくり食べなさいと言うとハーイと言って小さく切って食べ出した。

 その後、デパートを回って15時過ぎに喫茶店に入ってジュースやアイスクリーム、珈琲をいただいて帰る頃には、幸子は、いつもの明るさを取り戻しているのに両親は安心した。夏になり良男の好きなサマーランドに出かけ、いろんなプールで泳いで良男は元気いっぱいで、はしゃぎ回っていたが、その後を追いかける父は大変だった。

 淑子さんと幸子さんは彼らを横目で見ながら、ゆっくりと泳いで売店で休んで、しゃべりながら過ごしていた。16時頃にバスで八王子まで30分の間に父は居眠りするほど疲れて電車の中でも居眠りした。家について風呂に入り夕飯を食べた後、父は口数も少なく、すぐ寝た。高尾山にも出かけた時も良男は相変わらず落ち着きがなく動き回って後を追う父が気の毒なほど、はしゃいでいた。

 そして電車での居眠り、家に戻っても一番先に床についた。そして、9月を迎え全国珠算連盟
の1級の受験申込書を手に入れ書いて提出し、数日後、受験票が届いた。受験日は10月10日、その日も父が、ついていき、落ち着けば、絶対に受かるからと受験会場に入る幸子を送り出した。席について軽く手を組んで上に上げてストレッチして深呼吸をしてる様子を見て父は少し安心した。

 試験が始まり、試験時間が終了し戻ってくると、いつもの明るい笑顔で完璧と言った。その言葉通り数日後、全国珠算連盟の1級の合格通知が届いて翌日の晩にケーキを買ってきて合格祝賀会をしてあげた。幸子は晴れ晴れとした顔で、やっと念願の1級だと言った。この調子で中学になったら英語検定試験にも挑戦しようとみんなの前で宣言した。

 彼女は記憶力が良くて日常英会話の100以上の文章を6年にして全部覚えてしまった。後は主語、目的語など英単語を覚えれば、かなりの水準まで達している事を父は知っていた。この話を聞き、また来年から英語検定試験の作戦を練ってみよと幸子の肩を叩いた。そうして12月になり奥さんの実家のクリスマスパーティーに出かけ今年の出来事の中で幸子が全国珠算連盟の1級合格したことを発表した。

 すると義理の父が、
「よく頑張った、これからも、多くの事に挑戦して行きなさい」、私は、
「あなたの味方で、できる限り支援してあげるから」と言うと気丈な幸子が涙を見せて、
「ありがとう、本当にありがとう」と言った。

 その姿を見ていた、祖母が幸子を強く抱きしめ良くやったと頭をなでた。母も幸子を抱きしめて、これからも頑張るのよ、私たち、みんなが幸子の応援するからと優しく言った。すると中学生になったら実用英語検定に挑戦しますと、みんなの前で宣言した。その後、1988年が終わり、1989年を迎えた。犬山家では家族全員で初詣でに行って、それぞれの目標の達成を祈願して来た。
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