第3話:格差婚、突破作戦

文字数 2,238文字

 その後、鮫島課長の所に挨拶に行くと奥さんが出てきて、どうぞお上がりなさいと言ってくれリビングに通してくれた。最初に木下淑子さんから、
「遂に、私たち2人、結婚する事を決めました」と言うと、奥さんが、彼女の手を握って、
「おめでとう、本当に良かったね」と言うと
「2人で抱き合って目に涙を浮かべて喜びあった」。

 今晩、犬山重臣さんと初めて吉祥寺の実家の両親に会い結婚の話をして了解を得られたら、すぐに結婚式場の予約を入れるつもりですと話した。すると奥さんが木下淑子さんに、もっと早く手を打っておけば良かったのにと言うと木下淑子さんが木下家の話をし始めた。木下家は武家の出身で戦前には華族として登録される名家だった。

 しかし、戦前、戦後の混乱期に苦労して手に入れた広大な土地、貴金属、着物、陶磁器、絵画のほとんどを売り払った。唯一吉祥寺の東京で最初に住み着いた土地だけは手放さずに済んだ。家の近くに、未だに5軒の親戚の家が建っていると言った。それを聞いた鮫島課長が、
「まさか吉祥寺の木下大尽の事かと聞くと、そうです」と答えると顔を曇らせた。
「わー、参ったなー犬山重臣君!何という事だと言い頭を抱えた」。

 その後、おもむろに奥さんに向かって、
「結婚の承諾を得るために、今晩、いちかばちか、一緒に付き添って行って」、
「格差婚、突破に協力してやろうか」と話すと奥さんが
「面白そう、やりましょう」と笑った。

 そうして犬山重臣君はタキシード持ってるかと聞くので持ってません。スーツだけですと言い一番上等なスーツを持ってこいと言った。少ししてスーツも持って来ると鮫島課長がタキシードに奥さんが素敵なドレスに着替えて犬山重臣君もスーツに着替えなさいと言われ着替た。約束の1976年1月3日、17時過ぎに鮫島家を出て電車で吉祥寺へ行った、

 そこで大型タクシーに乗り木下家に着いた。タクシーの中で鮫島課長が、これは儀式だと思って緊張感を持って、そそうのない様に振舞えと言い相手には、必ず敬語を使って話しなさいとアドバイスした。タクシーを降りると案の定、案内役の人が玄関まで誘導してくれ4人は緊張しながら玄関を上がった。そして案内係の人が6畳ほどの洋間に案内した。

 ここで、しばらくお待ち下さいと言われ、椅子に腰掛けた。10分程して木下淑子さんのお父さん、木下公彦さんと、お母さんの木下貴子さんがやってきた。その後、鮫島課長が名刺を御両親に名刺を渡して
「イトーヨーカ堂本社、経営企画部の鮫島と申します」と挨拶した。続いて鮫島課長が彼は私の元部下のイトーヨーカ堂、三鷹店の経理部の勤務してる犬山重臣と申しますと紹介してくれ、
「緊張していたが、できるだけの笑顔を浮かべ犬山重臣と申します」どうぞ宜しくと挨拶した。

 そして奥さんが彼女に何か耳打ちすると彼女が真っ赤になった。そして喜んでもらい2人は鮫島課長の、お宅を後にした。三鷹駅近くの喫茶店で、お茶を飲みながら
「犬山重臣がさっき、なんで、真っ赤になったの」と聞くと、
「だって、奥さんが、この人なら間違いないわ」、
「うまくやって、早く結婚しちゃいなさいと言ったのよ」と照れながら話した。

 その後、
「男はつらいよ・寅次郎忘れな草」という映画を見てラーメンを食べながら、
「浅丘ルリ子さんって、本当に綺麗ね」と、うっとりした顔で言うので、
「木下淑子さんも負けないくらい綺麗だよ」と真面目な顔して、犬山重臣が、ぽつりと言うと、
「ほんと、じゃー結婚してくれる」と真面目な顔で、言い返すので、思わず、
「もちろん良いよと答えると彼女の目に涙が、にじんで、こぼれ落ちた」。
「うれしい、本当にうれしいわ、信じて良いのね、約束よ」と言って、
「指切りげんまんをさせられ、結婚の約束をしてしまった」。

 それから春のピクニック、夏の湘南の海水浴、1974年9月、貯金が昇給や郵便貯金の高い金利もあって100万円を越えた。やがて1975年を迎え、木下淑子さんと調布の深大寺に行き、お参りした。その後、境内を歩きながら淑子さんが犬山重臣に何を祈願したのと聞くので商売繁盛と健康ともう一つと、意味深なことを言うと、もう一つって何と、しつこく聞くので、2人の結婚というと、立ち止まってしまい、泣き出した。

「大丈夫」と声をかけると、
「うれし泣きが、だから心配しないで」と答えた。重臣は続けて、
「今年中に結婚したいんだ」と言うと、淑子さんが
「うれしいわ、早く結婚、一緒に住みたいわ」と言って、
「今日中に、実家の両親に挨拶に行こう」と言うので、
「構わないよ」と答えた。

すると、
「すぐ吉祥寺の実家に電話を入れるから今晩、行きましょう」と言うので、わかったと答えた。彼女が、近くの公衆電話から、実家に電話して今晩18時に行く事を伝えたと教えてくれた。

 その後、三鷹の吉田和子、姉ちゃんの所へ行き、新年の挨拶をして、子供達にお年玉を渡し、「今年、結婚すると決めたんだと、お姉さんに伝えると」、
「それはおめでとうございますと言ってくれた」。

 旦那さんの吉田良介さんも
「お似合いのカップルだ」と喜んでくれ、もちろん、その時は
「僕たちも結婚式に呼んでくれるよね」
と笑いながら言うので、もちろんですと犬山重臣が答えたが、と言っても、まだ、
「木下淑子さんの実家に、今晩行って、結婚の承諾を得てからの話ですけれどね」
と付け加えた。
「じゃー結果がわかり次第、電話して頂戴ね」と、姉ちゃんが言ったので、わかったと答えた。
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