第29話:義理の父の葬儀とハワイクルーズ

文字数 2,215文字

 それなら、今、書類を書くからハンコを押しなさいと貴子さんが言い、便せんに財産分与として2000万円を贈与すると書き、下段に以上の事、了解致しましたと書いた書類を作り、上段に、父、木下公彦の実印を押し、下段に重道のハンコをと言うと、持って来てないというので、拇印を押しなさいと言い押させた。

 あなたの銀行の口座番号というと手帳を出して、メモして貴子さんに渡した。これでいいですねと貴子さんが言うと重道さんが小さな声で、わかったよと反抗的な顔で言うと貴子さんが馬鹿者、そんな優柔不断で煮え切らない男だから公彦さんが、あなたに見切りをつけたのよと大きな声で怒鳴った。

 そうして淑子さんが重道さんに、しっかりしてよと肩を叩いた。すると、小さくうなずいて財産分与の2部の書類の1部を持って去って行った。木下重道さんが帰ってから淑子さんが母の貴子さんに、どうしたら良いと聞くと、とりあえず、私は、まだ大きな病気もないし元気だから、また、ちょくちょく、家に顔を出してと言い1人で気儘に生きて行くわと言い、お互いに、その方が気楽だと思うと笑顔になった。

 でも、もし具合が悪くなったり家を改修とか売る事になった時は助けてと言い、もし自分で自立して行くのが厳しくなったら淑子の家の近くの老人ホームに入るわと言った。ありがたい事に公彦さんが十分な財産を残してくれたから経済的に困ることはないわと言った。税金など、わからないことがあったら犬山重臣に、お願いする事が多くなるかも知れないので宜しくと言った。了解です、できる限り協力しますと犬山重臣が木下貴子さんに答えた。

 やがて2月17日になり立川葬儀所で葬儀が行われ木下家の関係者18名、仕事関係社22名、犬山家関連が2名の合計42名で盛大に葬儀が行われ、仕事関係のある大手企業の社長が弔辞を読み上げ木下公彦さんの厳しさと優しさについて話をして、お礼を述べた。弔電の中には国会議員や企業の社長からも数多くの弔電が来ていて花輪の数も多く故人の仕事での活躍ぶりを推し量ることが出来た。

 お墓まで行って葬儀が終了して木下家へ犬山重臣と淑子さんと木下貴子さんお3人が帰って来て、お茶を飲んで貴子さんが、これからも宜しくねと、犬山重臣に言うと、わかりましたと言い、淑子さんも、ちょくちょく、実家に、お邪魔しますと笑いながら言った。葬儀が終わって、翌月3月に木下貴子さんにハワイクルーズに行きませんかと、淑子さんが聞いた。

 お父さんが亡くなったばっかりで大丈夫かしらと言うと奥さんが家で暗くしてるよりも明るく元気に笑っている方が良いに決まってますよと言うと行こうかしらと言い犬山重臣が4月5日からのハワイ4島クルーズのノルウェイジャン・クルーズに3人で使えるジュニアスイートの船室を予約した。4月2日に新宿から上野へ出てスカイライナーで成田空港からホノルルへ飛びホノルルのホテルにチェックインした。

 その後、ダイヤモンドヘッドやポリネシアン文化センターへ行き、観光を楽しみ、淑子さんと貴子さんは本場のロミロミ・マッサージのサロンへ出かけて上機嫌で帰って来た。やがて4月5日10時になりタクシーで、アロハタワー近くのハワイクルーズターミナルへ行き乗船手続きを取ったが、やはり多くの乗客で、ごった返していた。

 以前クルーズへ行ったので内容はわかっていたが、やはりホノルル港を出港する時に拍手と湾内の船に見送られるのはとても気持ちの良いものだ。そして、2日目、マウイ島のカフルイに到着した。マウイ島は「渓谷の島」と呼ばれハレアカラ山を中心とした広大な国立公園と、イアオ渓谷、白い砂浜の海岸で有名でハレアカラのオプショナルツアーに3人で参加した。

 休火山としては世界最大級のハレアカラ山火口をの巨大なハレアカラ山は、その大きさゆえ見る者を圧倒するマウイの最高峰。この日は晴天に恵まれハワイ島やオアフ島が遠くに見えた。ツアーを終え船に戻り、ディナーショーを見たりして楽しんで、夕食後、床についた。3日目は、マウイプランテーション&イアオ渓谷ツアーに出かけた。

 プランテーション・農園をトラムバスで40分間、マカダミアナッツ農園、サトウキビ園、フラワーガーデンを見学した後、ハワイの神話の舞台にもなった美しい自然が今も残るパワースポットイアオ渓谷へ行ったが、展望台までは、長い階段があり、途中で休み、休み、ゆっくりとの上がっていった。

 ツアーコンダクターのサムに何段あるのか聞くと139段だと教えてくれた。そしてイアオ・ニードル・「針のように尖った山」にまつわる悲しい伝説を話し始めた。その昔、美しい娘イアオが半漁人の神プウオカモアと恋に落ちた。その恋に猛反対のイアオの父である神マウイはプウオカモアを殺すと怒り狂った。

 火山の女神ペレとイアオが「命だけは助けてほしい」と必死に、お願いしプウオカモアは殺されることは免れたが、岩に変えられてしまった。その岩がイアオ・ニードル。イアオは岩になったプウオカモアを、その後も一途に想い続けていたのだと言われています。貴子さんと淑子さんが素敵な話ねと、うっとりと聞いていた。

 更に続けて、イアオ渓谷は自然の美しさだけではなく歴史的にも重要な場所なんだと言い、多くの戦いの舞台となっていて渓谷全体を見張ることができる位置にあったイアオ・ニードルは、戦時中の見張り台としても使われていた。
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