第40話:東日本大震災と家の改修

文字数 2,829文字

 2010年も12月を迎え12月24日、犬山夫妻と吉田夫妻の4人で、ささやかなクリスマスパーティーを開いて美味しい和子さんの料理をいただきながら、お酒やジュースを飲んで最後にクリスマスケーキを食べ楽しんだ。やがて2011年を迎えた。2011年、初詣で今後の同居してる人達と家族の健康を祈願した。

 2月、3月と少しずつ暖かくなった2011年3月11日、午後2時47分、突如、東北の太平洋沿岸を震源とする大きな地震が起きて宮城県栗原市築館で震度7、仙台市宮城野区、茨城、福島、栃木でも震度6強、成田で震度6弱、遠く離れた東京、橫浜の多くの地域でも震度5を越え、直ぐに電気が使えなくなった。

 その後、数時間後に電気が付きニュースの映像が流れると、夕方、首都圏では職場からの帰宅時間になると鉄道網は麻痺でバスも道路も渋滞で機能麻痺して、しかたなく国道を歩いて家に帰る人の波で長く続いていた。東北地方の海岸にから押し寄せる大きな波に車も家も流される有様が映し出され、流れに飲み込まれて助けを求める人の姿まで、まざまざと映し出され、背筋が凍る思いがした。

 やがて夜になると東北沿岸のコンビナートの石油タンクに火がついて燃え広がり夜空にその大きな炎が映し出された。これからどうなるのだろうという漠然とした強い恐怖感に苛まれ、ただ呆然のテレビの映像を眺めていた。少しして我に返り庭の物置を見に行くと整然と整理していたはずの荷物が、めちゃくちゃに、なっていた。明日、太陽が上がってから、かたづけるしかないと覚悟を決めた。

 和室の両親の仏壇も一部が落ちていてので、きれいに掃除して元通りの位置にもどした。翌朝、家の周りに亀裂がないか4人で手分けして目で見て特段、亀裂は見当たらなかったが電話して工務店に人に見てもらおうとしたが家の検査の依頼が多すぎて、いつになるか、わからないと言い、基本的な家をチェックする方法をホームページを見て参考にして自分でできる範囲は自分でやって下さいと言われた。

 そのチェックを終えて明後日、その工務店に、これから修理など、お任せするつもりだから優先的に出来るだけ早く見に来てと言うと現金なもので、翌日、朝早くやってきて6人で、1時間程、壁、天井、窓、サッシ、床板などを調べて数カ所、赤のチョーク4つと黄色のチョーク8つのマークした。赤のマークは必ず修理が必要な所、黄色は出来たら修理した方が良い所だと説明してくれた。

 修理を依頼しますかと聞くと犬山重臣が、お願いしますと言うと後日出来るだけ早く修理に来ますと言った。帰り際、料金はと聞くと修理の時に一緒に御主人に見てもらうと言って去って行った。2週間後、また6人で来て赤のチョークの所を最初に修理を終えて黄色のどうしますかと聞くので、どの位の時間と費用がかかるというと、わからないと言い、もし、全部直すなら、直せるところが全部、直ぐ直します言った。

 今日直せない所は値段が高いが、すぐ直せる所は1万円以下だと言ったのでお願いしますと言うと6人で手分けして修理ヶ所を調べあげ、頭領と何やら電話で話して直ぐに修理に取りかかり2時間足らずで終了した。修理が必要な場所の応急処置は完璧ですと言い全部で3万円と言い前回の下見の料金は無料で良いと言ってくれ助かった。

 大震災から早くも3ヶ月、福島第一原発の放射能問題以外は全部終了。やがて梅雨が始まり空けて7月、暑い日が続き東日本大震災の余震と思われる地震3から4の地震が頻発。シドニーの幸子から大丈夫だったと連絡が入り現状を話すと安心してくれた。その後、長男の犬山良男から電話が入り大震災後、自宅にいた犬山麗子と3歳の寛太と1歳半の範子が東京の湾岸地域の超高層マンションの長周期地震動で恐怖を味わったそうだ。

 大きな揺れが15分近く続きトイレのタンク容器が割れ水びたしになったと教えてくれ、とにかく犬山麗子が、このマンションを売り木造の住宅に住みたいと言いだし困っていると語った。出来たら両親の戸建て住宅の3部屋を使わしてくれないかと言い家賃として月に20万円支払うと言った。出来るだけ早く検討してくれと言った。

 そこで犬山重臣と淑子さんが母屋の1階応接室、リビング、ダイニングキッチンと8畳の部屋3つと2階の洋間6つをうまく利用して父の書斎の多くの本を処分し使う事にして4人で母屋を使い離れの4室を良男に提供し離れにもう1ケ所風呂場を作ろうと考えた。そして翌日、良男に実際に建物を見に来るように言うと了解と言い7月31日に来ると連絡が入った。

 朝8時半に到着して朝食を一緒にとってから離れを見に行くと完璧と言い、この4室があれば十分だというので洋室に水道を持って来て庭の一部に風呂場を建てても良いと提案し改築費用を出してくれるなら4室貸して20万円でOKと答えると、わかったと言った。ただ今のマンションが売れるまで工事費用を貸しておいて欲しいと言うので犬山重臣が了解した。

 その後地震の時に修理してくれた業者に風呂の入った4畳半の風呂場用のプレハブ住宅と水道とトイレの工事の見積もりを、お願いした。すると全部で500万円で、やってくれると言い工期は材料が入り次第なので未定と言った。その話を良男にすると是非、早くにお願いしたいと言うので了解し工事を依頼した。8月3日から工事が始まり8月25日に完成した。

 風呂が1.25坪タイプの大型バスタブでトイレが男女兼用1つと男性用2つ、水道とシンク、サービスと最新型の中古の3口のコンロをつけてくれた。完成の日、その工務店の頭領が来て素晴らしい家だと言い、これが木下家の本家だねと見て回った。そして犬山重臣に今、あんたが大将かと聞くので、ええと答えると、金があるなら、もう塗り直しをしないと後10-20年後、修理代がかかって仕方がないぞと言った。

 中も見せてくれるかというので、どうぞというと3人の大工と思しき男達と見て回り何やらメモをとっていた。30分位して応接室に来て良い部材を使っていると言い、まだ直ぐに交換するような柱は、ないが大事に補修しながら使えば数十年持つ、すごい建物だと太鼓判を押すと言ってくれた。その気があれば、うちに言ってくれ、悪いようにはしないからと言った。うちで出来ない仕事や、うちよりも他社の方が優れていれば紹介する。

 何せ、こんな良い建物は、めったにないからと真剣な顔で言うので犬山重臣が、わかりました。私も木下家の両親に預かった大事な家ですから私の代で駄目にする訳にはいかないときっぱり言うと、その頭領が、それで、こそ、男だと言い、握手を求め、2人は、がっちりと握手をした。犬山重臣が今後とも宜しくというと、こちらこそ宜しくと言い颯爽と帰っていった。その翌日、500万円が山重工務店に振り込まれた事を確認したと連絡が入った。
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