第3話  愕然! 神社のモニュメント

文字数 674文字

 引っ越して30年以上。広島は地元になったが、実家は三重県伊勢市である。

 それは秋の日の高校の、感性豊かな修学旅行になるはずだった。わたしは、平和資料館のヤケドでズルムケの人形を眺め、こういう感想を持った。

「季節が違う」
 お化け屋敷、と思ったのである。

結婚して気づいた。この広島では、戦後70年以上経っても、まだテレビ報道などで、被爆証言がよく報道されている。いったい、これはどうしたことだろう。

 そんなおり、饒津神社(にぎつじんじゃ)でミッションをした。まさかと思うだろうが、それが、認識を一変させることになった。

 JR広島駅から歩いて30分。東区、饒津神社駐車場の入口に、雨粒形の石のモニュメント(チェックポイント)がある。慰霊碑だ。碑文を読み愕然とした。目を疑い、こすった。碑文に、こう書かれていたのだ。

 ――ここに数十名の爆死者が眠る。

 饒津神社から中区の原爆ドームまで、歩いて一時間はかかる。

背筋がゾーッとした。目の前にかすみがかかった。市内が、いちめんの焼け野原、人を生ごみのように焼き尽くす、広範囲の地獄の爪痕……というのは、与太話ではなかった。

 その後ミッションを続けていくうちに、わたしは街のあちこちで、原爆についてのモニュメントを発見した。小さな子どもたちの遊ぶ公園の、六畳はある原爆慰霊碑。街角にひっそりたたずむ、直方形の銅板に貼られた戦争当時の写真(すぐ隣に雑居ビル)。平和大通りの灯籠たち。
 頭蓋骨や肋骨などが、ゴロゴロころがっていた、という小学校の庭……。
 平和って、なんだろう。

 広島の願いが、少しわかる気がしていた。
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