第12話 太古の昔へタイムトラベル!

文字数 603文字

  目の前に、大きなトカゲの身体があった。
ぐっと突き出すツメのついた指。天に向けて咆吼する牙のついた口元。
 ティラノサウルスだ。

 6,800万前へ来てしまった。この生物の、異形なこと!
 スマホを眺めていたわたしは、ぼうぜんと道を立ち尽くす。
 ほんとに、時間旅行できるなんて。

 いや、もちろん、ティラノサウルスはまがいものだし、足音も、轟くような吼え声も聞こえない。そもそも、ほかの恐竜もみあたらない。これはただの模型だ。道の片隅で、絶滅した事実を訴えているだけである。

 それでも、強烈なインパクトがあった。
 ミッションで、「時をかける」体験をする。普通の人は、思いつかない。
 ここは、太古の昔だとスマホでは紹介されている。

 わたしは思わず、シャッターを切った。

 次はどこへ? 
 スマホの表示を見ると、ルートは住宅地を越えて、JR五日市へ続いている。
 なるほどなるほど、それではじめてよくわかった。過去から現代、そして未来へと歩いていく、というのがこのミッションのコンセプトなのだね。

 心がサラサラと、砂時計のようになっていった。
 普段は、料理・洗濯・掃除の主婦。

 だけどいったんミッションを実行したとき、わたしは違う人間になれるのだ。なにか目新しいものは、日常の中にまぎれこんでいるのだろう。
 幼い子どものように、発見するぞ。

 退屈だった日々は、色鮮やかになった。
 ――減量大作戦は、真っ黒だったのだが。 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み