第6話  憧憬の路・竹原

文字数 584文字

 日常系アニメ『たまゆら』で、竹原のイベント『憧憬の路』を知ったわたしと夫は、ミッションを口実に、竹原へ行った。

竹原の坂のお地蔵さんは、温和な顔で、自分を持ち上げてみろとけしかける。
「持ち上がらなかったら、夢はかないません」
 看板にしっかり、書いてあった。

 ひとつ、やってみるか。お地蔵さん、お地蔵さん、わたしの体重を、まずは10キロおとしてくださいませませ。
 ぐわし。地蔵のおしりに手をやる。石のざらざらした手触り。両膝をクッションにして、むんっ。力をこめる。

 ……あがらない。

「なぜ? どーして?」
 地蔵は、冷笑を浮かべるばかり。
 苦闘(バトル)30分。汗がダラダラ、息がハアハア。それでも持ち上がらず。
「日が暮れたけど……?」

夫はあきれ顔。しかたなくミッションに戻った。イベントは、いま、たけなわだ。

道行く人々は、ドロップ飴のような竹細工の光輝を反射して、白くなったり青くなったりしている。

 竹筒の切り細工は種々あった。箒に乗った魔女をかたどったもの。マンガ風のデブ猫、両手をふりあげたカープ坊や……。ほのかに聞こえる琴の音色。屋根の低い時代劇風の家々。ここでは、光と竹と闇が溶け合っている。

 ひとり、スマホをにぎりしめて決意した。
今度ここに来たら、お地蔵さんに、リベンジだ。
体重、ぜったい落としてやる!

そして、晩ご飯に、ハンバーガーを食べるのだった……。


 
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