第21話 後編:しまなみ海道・とびしま海道

文字数 594文字

  とびしま海道としまなみ海道の美しさには脱帽だ。翌日のとびしま海道は、晴れ晴れと光が射し、輝き渡っていた。

蒲刈島には、古代製造塩遺跡の石碑もあった。
 石碑を眺めながら、万葉集を思い浮かべる。

【来ぬ人を松帆の浦の夕なぎに 焼くや藻塩の身もこがれつつ 権中納言定家】

この歌でわかるとおり、昔の人は、藻塩を焼きつつ、エロい妄想に燃えていたわけだ。
おおらかな時代だったのさ。

御手洗の展望台からの眺めは、絶景だった。さすが、アニメ『たまゆら』に出てくるだけはある。具体的には、こんなふうだ。
 展望台まではちょっと歩くが、そこから見える海と島とは、今までに見たどの景色よりも美しかった。
 眼前に広がる島々の翠と、それを反射したようなトルコブルーの海。海はおだやかで鏡のように光っている。
 空のうえにぽっかりと浮かんだ白い雲。展望台をかげらせて、左から右へと消えていく。
 前日の曇天と比べたら、目隠しを取り外したような、からりとした心持ち。

 高く深く、真っ(さお)に澄んだ島と空。
 からだが軽くなるような、気持ちのいい天気であった。

 しかしもちろん、からだは軽くなっていないのである。
「帰ったら、体重計がこわい……!」

 風呂上がりには、体重計に乗ることにしている。今日もカロリーの高い物を食べたなあ。
 青い空を見あげながら、いつになったら10キロ減量できるんだろう、と途方に暮れたりもする、一日であった。

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