第10話 アノマリーでの出来事(京都編)

文字数 699文字

 2015年の2月頃、FSという初心者講座を受講した。そこで運営会社ナイアンティックの社長ジョン・ハンケが、京都でIngressのアイデアを得た、という話があった。ハンケは日本びいきであるという。そして、このゲームは、定期的にイベントをするのだそうだ。

 任天堂ゲームには、そういうことはなかったけど、最近ではこれが当たり前なのかー。
 その時点では、ゲームでのイベントは珍しいことだったのだが、主婦のわたしにはわからなかったのである。

 その一月後に世界大会アノマリーのため京都に赴き、石川チームと合流。アノマリーのルールを教えてくれる。わたしには、何を言っているのかサッパリわからなかった。ただ、金魚の糞みたいにチームのあとをおいかけて、京都の街をバスで走り回っていた。右頬にゲームのタトゥシールを貼って(無料で配られていたのである)。

 午後三時頃。勝負もたけなわになってきた。
 ある場所に、チームで降り立つ。
「おや、こんなところにお地蔵さんが」

 歴史ある神社仏閣で有名な京都にも、お地蔵さんがいる。京都は、堅苦しいだけと思っていた。有名なお地蔵さんではないが、ここがゲームの決戦場になるという。

 そのお地蔵さんを眺めていると、ひとりの老婦人が近づいてきた。品のある服装で、眉をひそめ、唇を噛んでいる。

 わたしは、覚悟を決めた。
 いくら京都が観光地だからといって、傍若無人にふるまう観光客は、我慢できないに決まってる。もし、広島の慰霊碑のまえで、気ままに世界ゲームをされたら。

 わたしが、固唾を呑んで待ち構えていると、老婦人はわたしの右頬をさして言った。
「そのタトゥ、似合ってませんね」
 そっちかい。
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