第二十九話 労働組合入ります

文字数 1,002文字

 労働組合というと、大きな会社にしかないように思っている人が多いのではないだろうか。
 しかしユニオンと呼ばれる労働組合には個人でも加入できる。もっと言うとパートやアルバイトでも入会は可能だ。地域内の同業種の労働者が業種を飛び越えて組織しているからである。
 建設関係だと、個人でやっている内装業(ひとり親方)の労働者などはこうした組合に入っている場合が多いそうだ。
 そんな組合の書記長さんは私の話を聞いて、こう励ましてくれた。

「失業保険受給は労働者の当然の権利ですよ。あきらめる必要なんてまったくないんです」

 力強かった。電話の向こうから聞こえる声が私にはとてもたくましいものに聞こえた。
 彼はさらに続けた。

「こういう場合はとにかく公的な機関に動いてもらうべきです。ハロワに働きかけましょう。待っているだけなんて、ハロワも悠長すぎます。とにかくハロワから会社を突いてもらいましょう。あとは税務署にも聞いてみましょう。未だに給与明細が届かないのはおかしいです」
「はい、わかりました。ハロワと税務署のほうへ問い合わせしてみます。ありがとうございます」

 夜の九時を超えていたにも関わらず、電話をくれた書記長さんに(本人からは見えないが)深く頭を下げて電話を切った。
 しばらく興奮がやまなかった。これまでには感じたことのない高揚感だった。
 
 翌日。ユニオンの書記長さんの言葉に従う私。

「これって遅いほうじゃないんですか?」
『まあまあ遅いほうですかねえ。二週間になりますからね。でも、もっと遅い場合もありますし。そろそろ確認してみますよ。何度か確認はしてくれているみたいですけど、商工会のほうにぜんぜん返ってこないみたいなんで』
「それ、今からやってもらっていいですか? 結果は必ず私のほうへ連絡をください」
『わかりました。午後になるかもしれませんけど』
「かまいません」

 これまでは相手がやってくれるだろう、連絡くれるだろうと思って言わなかったが、今回はきっちり返事をよこせと伝えた。それが功を奏したのか、その日の午後には『商工会議所から返答が来たから、支給額が決定できますよ』という連絡をもらうことができた。

――やればできるじゃないか!

という言葉は飲み込んだものの、もっと早い段階でハロワがちゃんと急かせていたら支給決定日を過ぎるようなことにはならなかったのではないかと思った。
 しかし、これで失業保険はもらえる。






 



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