第十七話 大事な申請は会社任せにすることなかれ

文字数 1,050文字

 ハロワを出ると今度は税務署へ向かった。所得税の記載がおかしいのではないかということを聞くためだ。
 受付で番号札をもらって奥へ進む。待合に置かれた椅子に座って待っていると10分ほどで呼ばれた。担当の職員さんはいかにもこの道のベテランですというような50代後半に見える白髪交じりのおじさんだった。おじさん職員さんはパーテーションで区切られた相談室に案内すると「どういった御用ですか?」と静かに尋ねた。
 
 そんな展開になるとは思っていなかった私はかなり面食らった。自分から手続きをお願いしたことはこれまでの会社ではなかった。それらしい書類に記入はあった記憶はあるにしても、どこも事務員さんから「この書類に記入してもらえませんか?」と言われて記入していた。それが自己申告だったなんて寝耳に水もいいところだ。
 
 そこでふと「じゃあ、マイナンバー提出ってなんのためにするのよ?」という疑問が頭に浮かんだ。個人情報を確認するためにマイナンバーを提出させているのではないのか。

 税務署は公的機関であるため、民事には介入できないのである。ゆえに個人間でなんとかしてくれというのだ。
 いち民間人としては「なんのための税務署だ」と言いたくなる。おじさん職員さんは顔色一つ変えることなく淡々と言った。

「税務署は個人がどれだけ税金を払ったかなんてものはわかりません。そういうのは会社が管理するものなんです。会社がそこに勤める人たちの税金をまとめて納める。会社がいくら納めたかしかわかりません。我々にお宅様の払った所得税が合っているかどうかは判断つかないのです。そういう手間は全部会社側にお願いしていることですから、知りたければ会社へ問い合わせるしかありませんよ」
「そうですか」

 結局、税務署でも直接会社とやりとりしてくれと言われて終わることになった。それどころか、なんでも会社にお任せしているあなたが悪いと言われたような気がしてならなかった。
 
 今後は必ずやってもらえるかを確認しよう――そう固く心に誓って、私はもう一度労基の扉を叩いた。

【豆知識】
 非課税には『住民税非課税』と『所得税非課税』がある。うちの市町村では住民税を払う収入はあるが所得税は非課税であるという母子家庭は『健康保険控除』が受けられる。ゆえに住民税を払っているから非課税世帯ではない、受けられる公的な制度が限られると思わず、一度相談されることをおススメする。ここ、実は私も勘違いしていたポイントなので、非課税をきちんと押さえておくのは必須である。
 
 


 

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