第九話 給料さえよければ……しかし木っ端みじん

文字数 1,112文字

 ヘルパーとケアマネの二刀流。これが私を苦しめた。
 ケアマネは利用者さんの都合に合わせて動かないといけないため、流動的な職種である。一方、ヘルパーは基本的に計画された時間に動く固定的なものなのだ。
 私の働き方は『水・金』がケアマネで、それ以外がヘルパーだった。しかし利用者さんに私の勝手都合など関係ない。相手が来てほしいときに行かねばならない以上、こちらが都合をつけるしかなかった。
 ところが、この調整で非常に肩身の狭い思いをした。
 
 会社は現場主義を第一にかがげていた。当然ながら、現場ではなく調整役のケアマネは立場が弱い(他の会社の場合は現場よりもケアマネのほうが立場的に強いことが圧倒的)。
「すみません」「申し訳ない」「ご迷惑おかけします」と平身低頭してお願いして予定を組んでもらう。さらにヘルパーの時間帯にケアマネの業務をどうしても優先したい場合は、働いているのにもかかわらず数時間のお休みをもらった。ただ、このままだと休憩時間は給料が発生しなくなる(有休もないため)ので、残業をして、その穴を埋めるという作業をしなければならなかった。
 さらに言うと、ケアマネの休憩時間にヘルパー側の業務はしても許されるのに、ヘルパー業務中はケアマネの電話すらとるなと言われるのだ。メリハリつけろというのが会社側の主張。
 まったくおかしな話なのである。それならケアマネ業務中にもヘルパーやらせるなよと言いたいのをなんとかこらえる私は、常に社内で握りこぶしを作っているような状態だった。

――これじゃやってらんないわ!

 正直、動きにくかった。これなら二刀流なんてやらないほうがいい。現場のほうが給料がいいかもしれないが、ケアマネ一本にさせてもらおう。そうしなかったらどちらも中途半端になってしまう。
 そんなとき、ちょうどいいタイミングであることに気づいた。
 そう、私はまだ試験期間中である――という点だ。

――試験期間中に試してみたけど、やっぱり無理だってことをわかってもらえさえすればいいじゃん! 

ということで、さっそく社長に伝えてみることにした。

 さらにもう一点。
 私がこの会社を辞めたいと思うきっかけがあった。給料である。

 朝の7時半から夜の19時まで、休憩時間だって削って働いてこれだった。
 給料が低いというのは承知の上で入ったことではあったけれど、修理費を差し引いてしまうと四万円にしかならないという現実が私には受け入れられなかったのだ。
 こんな状況がまた起きたら――と思ったらゾッとした。
 私にはたくさんの扶養家族がいる。貯蓄だって少ない。それでやっていけるのか――
 
 この面接で私はまたしてもパワハラ経験をするのだった。

 


 
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