第二十五話 どうやっても給与明細は届かない

文字数 665文字

 なんの問題もなく普通に仕事をしている人にとって給与明細はそれほど重要なものには思えないだろう。しっかり見るのは年末調整時や初給与時くらいであって、あとは毎月ほとんど金額が変わらないわけだから(残業していれば別だが)封も明けずにひきだしにそのままそっと積み重なっていくものかもしれない。
 しかし、これは極めて重要なものなのである。


 一月に振り込まれた分とは十二月に働いた給与だ。この明細が二月になっても届かないというのが異常事態なのだった。
 私は辛抱強く待った。
 けれど、どうやっても明細は届かなかった。

「12月の所得が不明のままなので、給付額が決定できないんです」

と、窓口に座るおっとりした男性職員さんは言った。私は目をぱちくりさせた。

「雇用保険説明会のときには離職票は届けていますよね? それから二週間は経っているし、そのときに金額の問い合わせ願いの申請用紙にも記入しましたよ?」
「問い合わせはしています。ただ少々厄介なんですよ。どうやら先方は雇用保険の申請を商工会議所に委託しているようで。そうなると商工会から会社へ問い合わせをしてもらって、その連絡を待たないといけないので。商工会に聞いても回答なしということですから、計算はできないんです。今日か明日くらいには回答が来ると思いますけどねえ。さすがに二週間ですから」

――のんびりしてやがるな、おいっ!

 そう思うものの、結果的に計算はできませんよで話は打ち切られる。一週間以内に振り込まれる予定だった失業保険はこうして、いつもらえるかわからない状態になってしまったのであった。




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