第三十一話 所得税法231条
文字数 914文字
【所得税法 第231条 給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書】
居住者に対し国内において給与等、退職手当等又は公的年金等の支払をする者は、財務省令で定めるところにより、その給与等、退職手当等又は公的年金等の金額その他必要な事項を記載した支払明細書を、その支払を受ける者に交付しなければならない。
と、このように記載されている。簡単に言うと『お支払いがあるかぎり、交付するのが義務ですよ』ということだ。交付に当たっては紙である必要性はなく、例えばメールのようなペーパーレスでもいいのである。
しかし交付はしなければならないのに、遅れた場合の罰則は明記されていない。完全に交付をしないという場合においては所得税法違反になるのに、遅延は違法ではないという。
実際、税務署に問い合わせたときには『最終的に出れば問題ないでしょうよ』という見解だったのも、法律上お咎めなしという点が大きいのだろうと思われる。
そこで今回しっかりと国税局に尋ねたのである。税務署に言われたことも併せて問うと、国税局の女性職員さんはため息を吐くように答えた。
『そもそも給与明細を交付が遅れること自体がありえないことです。『当たり前のこと』をわざわざ期限を書いていないのはあまりにも『当たり前のこと』だからです。給与振り込み前後に速やかに振り込まれるべきであるものです。本当にずさんな会社ですね、それは』
残す問題は労働組合として団体交渉を申し込めるかだった。
辞めた人間が会社に対して物申すことが労働委員会に認められるか――である。
だが、私には実はもうひとつ『切り札』が残されていた。未払い金である。
一ヵ月に一回精算をしてもらう小口現金が立て替えたまま払われていないのだ。これは給与とは別だったし、千円に満たないとはいえど領収書の写真は撮っておいてある。
給与明細と未払金という問題がある以上は可能なはずと思っていたところへ、ユニオンさんから連絡が入った。
『労働委員会に確認したら大丈夫だということです。団体交渉しますか?』
そう問われた迷うことなく、はっきりと答えた。
「やります!」
こうしてまた、リベンジに向けて着々と進んでいくのであった。