第二十二話 朗報、だけど終わりじゃない
文字数 1,057文字
労働弁護士への電話の前に県民生活センターへ電話をかけてみることにした。県民生活センターとは県民サービスの提供拠点として、消費者行政、県民相談等の事務を行っている県の出先機関のことである。消費生活、労働、就職など生活に密着する相談を行ってるというのだ。まさに私の問題にぴったり当てはまる相談場所だった。
「国保申請したいんですけど、喪失届を出してもらえなくて困っているんです」
という現在の困りごとといっしょにこれまでの経緯も伝えた上で、私はこう続けた。
「こういう心労をずっと負わせられていて、慰謝料請求できないでしょうか」
就労中からずっと苦しめられている。これを思い知らせる意味でも、そういう方法がとれないだろうかという希望を伝えてみたのだ。
すると電話応対してくれたおじさん職員さんはやれやれというような苦い声で答えた。
『今までいたところの会社がずさんで労務をしっかりやってくれないということくらいで慰謝料はとても無理ですよ。喪失届の件についてもご自分で何とかするしかないかなあと思います。まあ、給与明細が遅いという点については違法性がないとも言えませんけどね』
「遅いと違法性があるんですか!」
『所得税法に引っかかる可能性がありますねえ。税務署から指導してもらうのがいいと思いますよ』
思いもよらない一言だった。
けれど、いい情報はこれだけだった。
『お話を聞くかぎり、違法性があるのは給与明細の件だけです。あとは無理でしょう。それに年金事務所の対応にしても、直接出向いて話をするべきです。顔が見える見えないというのはとても大きい。顔が見えたほうがあなたの必死さが伝わると思いますよ。向こうも人間ですから、窓口に来てつらさをひしひしと訴えられたら、なんとかしようと思うんじゃないですかねえ。でも、一番にやるべきはあなたが会社に電話をかけるなり、行くなりすることですけどね』
そこで会話は終了。どこに電話をかけても『自分で何とかしろ』と言われるだけの現状に悲しみを通り越してブチ切れた私。その怒りの勢いに任せて会社へ電話を掛けたところ『今、脱退証明書を郵送しようと準備していたんですけど』と言われた。
――なんていうタイミング! 年金事務所に乗りこんで『さっき電話対応した女出せ!』って息巻く前でよかったわ。
「取りに行きます! 今すぐ!」
そうして私はすぐに会社へ向かった。
しかし、これでめでたし、めでたしではなかった。給与明細が届かない――これがさらなる問題へと発展していくのだった。
【おまけの豆知識】