今の父と母に感謝

文字数 968文字

 「輝羽。。。」

 「お父さん。。。」

 「疲れただろう。よくやり抜いたね。」

 「立派だったわよ。 輝羽。」

 「お母さん。ありがとう。」


 「皇帝陛下は、本当に立派な方だった。

 私は、陛下の足元にも及ばない。

 陛下が この場に降り立った瞬間から 私は

ずっとそれを感じていた。

 お前を見つめる陛下の瞳は、《愛》であふれ

ていた。

 千三百年もの間、行方不明だった娘。

 もし私なら、例え一日でも耐えられない。

 気が狂ってしまうだろう。

 一国をしょって立つということは、並大抵

の努力で成せるものではない。

 そのあまりの重圧に耐えられず 自らを追い

込んでしまう。

 陛下を支えていたのは、きっと お前たち

家族。

 家族だけが、唯一の支えだったのかもしれ

ない。

 人が独りでは生きていけないように、どの

世界に存在していても 絆というものは 一番

大切なものなのかもしれないな。

 お前には 別の世界に生きる素晴らしい家族

がいる。

 彼らに見護(みまも)ってもらっていることが 何より

の力となる。

 お父さんは、輝羽がうらやましいよ。」


 「私もよ。 輝羽。

 あのお父さま。

 あんなステキなお方。

 生まれて初めて見たわ。

 もし人間なら。。。

 私、自分からプロポーズしてたわ。」

 「えっ?」

 『澄子』のその言葉にギョッとする導光。

 「お母さん、冗談でしょ?」

 「あ~ら。冗談なんかじゃないわよ。

 妻にしてもらおうかしら?

 あっ。。。妻は『麗ら』さまだわ。

 この際、側室でもいいわ。。。」

 あきれ顔の導光を見つめながら、

 「お母さん、やめてよ。」

 輝羽が言った。

 「ねえ、輝羽。

 どうやったら帝国に行けるの?」



 かなり天然で、かなりズレているところが
ある 母の『澄子』。

 どこまでが本気で、どこまでが冗談なのか、
輝羽も時々分からなくなる時があった。


 「あとは 私たちで片づけておくから、

輝羽はもう休みなさい。」

 疲れているように見える輝羽に 導光が
そう言った。

 「うん。 お父さん、お母さん。

 いろいろ ありがとう。」

 「何だい。改まって。。。」

 「私、この昇龍家に生まれて本当に

よかった。。。

 じゃあ、部屋に行って休むね。」

 輝羽は、今までずっと思っていたこと、
「「この家に生まれてよかった。」」
その言葉を 初めて口に出して言えた。

 そして 両親の偉大さを 改めて知ったの
だった。

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登場人物紹介

昇龍 導光《しょうりゅう どうこう》


代々続く祈祷師の家系に生まれた。昇龍家第四十八代当主。五十歳。

非常に高い霊能力を持つ。

ダンディで背が高く、スポーツマン。 

物腰柔らかで一見祈祷師には見えない。

導光が愛するものは何といっても龍と家族そしてスイーツ。

持って生まれた類まれなる霊能力と格の高い魂で、様々な視えざる存在と対峙しながら

迷える人々を幸福へ導くことを天命の職と自覚し、日々精進を重ねるまさに正統派の祈祷師。

昇龍 輝羽《しょうりゅう てるは》


導光の娘。ニ十歳。 

聖宝德学園大学 国際文化学部二年生。両親譲りの非常に高い霊能力の持ち主。

自分の霊能力をひけらかすこともなく、持って生まれたその力に感謝し、

将来は父のような祈祷師になりたいと思っている。

龍と月に縁がある。

龍を愛する気持ちは父の導光に劣らない。

穏やかな性格だが、我が道を行くタイプ。

自分の人生は自分で切り拓くがモットーで、誰の指図も受けないという頑固な面がある。 

昇龍 澄子《しょうりゅう すみこ》


導光の妻。四十七歳。 

元客室乗務員。導光とは、機内で知り合った。

現在は、息子の縁成とともにイギリスに滞在中。

かつて偉大な巫女であったという前世を持つ。

導光同様、非常に高い霊能力と癒やしの力で多くの人々を内面から支え、癒やしながら心を修復し、

本来の自分を取り戻せるよう救える人物。

桜と龍に縁がある。

性格は、かなり天然で、かなりズレている。

どこまでが本気で、どこまでが冗談なのか、家族との会話がかみ合わない面がある。 

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