弟『こもれび』との再会

文字数 776文字

 帝国の使いの者が目の前に連れて来た
人物。

 それは、帝国の皇子(おうじ)『こもれび』で
あった。


 「そこにひざまずけっ。」

 『極月光天』が『こもれび』にそう命じる
と、縄で縛られた『こもれび』は、その場に
ひざまずいた。


 『こもれび』は、『さえずり』の弟。

 皇帝 『極月光天』の実の息子。

 帝位継承の資格を持つ次期皇帝となるはず
の後継者である。

 いったい『極月光天』は、実の息子の
『こもれび』をどうしようというのか。


 「陛下、()が息子、『こもれび』を

いったいどうしようというのですか?」

 『麗ら』は『極月光天』に詰め寄った。


 「簡単なことだ。

 お前がどうしても帝国に逆らうというの

なら、お前の目の前で『こもれび』を処刑

する。」


 「あっ、あなたという方は。。。

 ご自分の私利私欲のためならば、実の息子

さえも(あや)めようとするのですか?」


 「『こもれび』っ。。。」

 輝羽が『こもれび』に大きな声で呼び
かけた。


 「さっ、『さえずり』姉さまっ。。。

 よくぞ。。。よくぞご無事で。。。

 ずっと。。。

 ずっと気にかけておりました。」


 「あなたという方は。。。

 実の娘の私だけでなく息子までも。。。


 それでも父親ですか?

 あなたのような冷酷な親を持ったこの私

は、自分自身を呪います。」


 「反乱を起こすのは勝手だ。

 やりたければやればよい。

 だが、その前に皇子(おうじ)は処刑する。

 次に『さえずり』っ、お前の番だっ。」


 今まで静観していた導光の妻 『澄子』は、
もうこれ以上黙ってはいられなかった。

 居ても立っても居られなくなったので
ある。

 そして、導光に対し、

 「導光さん。 早く何とかしてっ。

 このままでは、輝羽も『麗ら』さまも、

そして、『こもれび』まで。。。

 みな殺されてしまう。

 この私が、手塩に掛けて育てた大切な

娘をあんなヤツに殺されてたまるもので

すかっ。」


 「わかってる。 だが。。。」

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

昇龍 導光《しょうりゅう どうこう》


代々続く祈祷師の家系に生まれた。昇龍家第四十八代当主。五十歳。

非常に高い霊能力を持つ。

ダンディで背が高く、スポーツマン。 

物腰柔らかで一見祈祷師には見えない。

導光が愛するものは何といっても龍と家族そしてスイーツ。

持って生まれた類まれなる霊能力と格の高い魂で、様々な視えざる存在と対峙しながら

迷える人々を幸福へ導くことを天命の職と自覚し、日々精進を重ねるまさに正統派の祈祷師。

昇龍 輝羽《しょうりゅう てるは》


導光の娘。ニ十歳。 

聖宝德学園大学 国際文化学部二年生。両親譲りの非常に高い霊能力の持ち主。

自分の霊能力をひけらかすこともなく、持って生まれたその力に感謝し、

将来は父のような祈祷師になりたいと思っている。

龍と月に縁がある。

龍を愛する気持ちは父の導光に劣らない。

穏やかな性格だが、我が道を行くタイプ。

自分の人生は自分で切り拓くがモットーで、誰の指図も受けないという頑固な面がある。 

昇龍 澄子《しょうりゅう すみこ》


導光の妻。四十七歳。 

元客室乗務員。導光とは、機内で知り合った。

現在は、息子の縁成とともにイギリスに滞在中。

かつて偉大な巫女であったという前世を持つ。

導光同様、非常に高い霊能力と癒やしの力で多くの人々を内面から支え、癒やしながら心を修復し、

本来の自分を取り戻せるよう救える人物。

桜と龍に縁がある。

性格は、かなり天然で、かなりズレている。

どこまでが本気で、どこまでが冗談なのか、家族との会話がかみ合わない面がある。 

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み