守られた約束

文字数 826文字

 封印していた千三百年前の記憶の中では、
おそらく二度と『せせらぎ』には再会できな
いと思っていた『さえずり』。

 だが、約束どおり、再び『さえずり』の
目の前に『せせらぎ』は現れた。


 あの時。。。


 『せせらぎ』が、先に旅立ってしまった
あの時。

 絶望と孤独に心が押しつぶされそうに
なったあの時。

 いつかはやって来る『せせらぎ』との
別れ。


 せめてそれまでは一緒にいたい。。。


 過去に感じた様々な想いが、『せせらぎ』
を視た瞬間。。。

 ()られた矢の如く息もつかせぬ勢いで、
一気に『さえずり』の心に押し寄せて来たので
ある。

 魂の奥深くからずっと望んでいた
『せせらぎ』との再会。

 その『せせらぎ』の魂が、まさに今、
やっと愛しい『さえずり』の元へ帰ってきた
のであった。


 「『さえずり』。。。『さえずり』。。。」


 「『せせらぎ』。。。」


 どれだけ待ち望んだことだろう。


 『さえずり』は、『せせらぎ』の胸の中へ
飛び込んだ。


 「『せせらぎ』。。。

 逢いたかった。。。」



 「我も同じ。

 どんなにこの日が来ることを願っていた

ことか。」


 『せせらぎ』は、『さえずり』をその胸に
しっかり抱き寄せ、そう(つぶや)いた。


 (なつ)かしい香り。


 そして、温かいぬくもり。



 耐えられぬほど悲しいことがあると、
『さえずり』は、いつも『せせらぎ』の胸の中
で泣いていた。

 その度に優しく包んでくれた
『せせらぎ』。

 『せせらぎ』の両腕は、まるで雛鳥(ひなどり)を護る
親鳥の羽の如く柔らかく、そして温かい。

 その羽の中に顔をうずめると、なぜか
とても安心できた。


 人々を襲う天変地異。


 自然の猛威。


 人々の争いから生まれる(いくさ)の数々。


 その度に失われる罪なき多くの人々の命。


 そして、貧困。


 『さえずり』は、人々の命が失われる度に
心を痛めた。


 そして、無力な自分を責めた。


 祖国、≪月界帝国≫でさえも力及ばぬ地上
の災い。

 そのような状況の中で生きていくには、
『さえずり』一人だけではあまりにも(つら)く、
とても耐えられなかったことであろう。

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登場人物紹介

昇龍 導光《しょうりゅう どうこう》


代々続く祈祷師の家系に生まれた。昇龍家第四十八代当主。五十歳。

非常に高い霊能力を持つ。

ダンディで背が高く、スポーツマン。 

物腰柔らかで一見祈祷師には見えない。

導光が愛するものは何といっても龍と家族そしてスイーツ。

持って生まれた類まれなる霊能力と格の高い魂で、様々な視えざる存在と対峙しながら

迷える人々を幸福へ導くことを天命の職と自覚し、日々精進を重ねるまさに正統派の祈祷師。

昇龍 輝羽《しょうりゅう てるは》


導光の娘。ニ十歳。 

聖宝德学園大学 国際文化学部二年生。両親譲りの非常に高い霊能力の持ち主。

自分の霊能力をひけらかすこともなく、持って生まれたその力に感謝し、

将来は父のような祈祷師になりたいと思っている。

龍と月に縁がある。

龍を愛する気持ちは父の導光に劣らない。

穏やかな性格だが、我が道を行くタイプ。

自分の人生は自分で切り拓くがモットーで、誰の指図も受けないという頑固な面がある。 

昇龍 澄子《しょうりゅう すみこ》


導光の妻。四十七歳。 

元客室乗務員。導光とは、機内で知り合った。

現在は、息子の縁成とともにイギリスに滞在中。

かつて偉大な巫女であったという前世を持つ。

導光同様、非常に高い霊能力と癒やしの力で多くの人々を内面から支え、癒やしながら心を修復し、

本来の自分を取り戻せるよう救える人物。

桜と龍に縁がある。

性格は、かなり天然で、かなりズレている。

どこまでが本気で、どこまでが冗談なのか、家族との会話がかみ合わない面がある。 

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