縁結びの《神》『縁輪』との出会い

文字数 1,164文字

 『せせらぎ』の切なる願いを受け止めて
くれた存在。

 それは、天界に住まう一柱(ひとはしら)の《神》
縁輪(えんりん)』であった。

 実は、この《神》は、千三百年前、
『さえずり』の母である『(うら)ら』の願いを
受け止め、『さえずり』を引き受けてくれた
当時の昇龍家当主『先立(せんだつ)』から(さかのぼ)ること
五百年前の昇龍家の祖先であった。


 何という深い縁であろうか。


 『縁輪(えんりん)』は、天寿を(まっと)うし、天に召された
(あと)、厳しい修行の果てに【神上(かみあ)がり】を果た
した天界でも一目置(いちもくお)かれている存在。


縁輪(えんりん)』の使命は、その名が示すように
縁の輪を広げること。

それにより、人々の絆を深め、《調和》の気
をもたらすのである。

 目には見えぬが、この《調和》は、我々
人間が生きていく中で重きを置くべき心得。

 《教訓》と言ってもよいであろう。

 それと同時に、この《神》『縁輪』は、
縁を絶つという使命も(にな)っている。

 これ以上の結びつきは無用、双方にとって
()しき結果しかもたらさない。。。

そう判断した場合、双方の縁を絶つことも
できる。

 自らが強く望めば、相手の意に関わらず
縁を()つよう取り計らうことすらも可能な
《神》なのである。


 『縁輪(えんりん)』は、いつも天から人々を見護って
いた。

 昇龍家子孫の幸福、そして、地上に住む
人々の幸福を願いながら。

 とりわけ『せせらぎ』と『さえずり』の、
純粋に人々の幸せを願う心には非常に感心し
ていたのである。

・―――・―――・―――・―――・

 「「『せせらぎ』よ。

 そなたの望みは何だ?」」


 「「我は、祖国との縁を切り、

『さえずり』をずっと護りたい。

 『さえずり』が、何度転生を繰り返そうと、

ずっとその(かたわ)らで『さえずり』を護り、幸福を

もたらしたい。

 それが。。。

 それが、(われ)の願いなのです。」」 


 「「人間として再び巡り逢い、結ばれると

いう道は選ばなくてよいのか?」」


「「。。。。。。。」」

・―――・―――・―――・―――・

 「我はずっと迷っていた。

 その『縁輪』さまの言葉に。

 人間として、『さえずり』、そなたと

結ばれ、共に幸せに生きる。

 その道を選ぶか。

 もう一つの道を選ぶか。」


 「そなたは、一体どちらを選んだのだ?」

・―――・―――・―――・―――・

 「「『せせらぎ』よ。

 そなたの熱き想いを、(われ)は理解した。

 だが、そのためには、二つの(えにし)の糸を

絶ち切らねばならぬ。

 その覚悟はあるのか?」」


 『縁輪』は、『せせらぎ』に尋ねた。


 「「はい。

 すべては愛しい『さえずり』のため。

 その覚悟は、当の昔にできております。」」


 「「もう一度だけ尋ねる。

 本当にそれで良いのか? 

 絶ち切ってしまえば、そなたたちは、

もう二度と、けっして人間として結ばれること

はない。」」


 「「(われ)の願いは、永久に『さえずり』と共に

生きること。

 もはや我にとって『さえずり』は、

ただ愛し、(まも)るだけの存在ではない

のです。」」

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登場人物紹介

昇龍 導光《しょうりゅう どうこう》


代々続く祈祷師の家系に生まれた。昇龍家第四十八代当主。五十歳。

非常に高い霊能力を持つ。

ダンディで背が高く、スポーツマン。 

物腰柔らかで一見祈祷師には見えない。

導光が愛するものは何といっても龍と家族そしてスイーツ。

持って生まれた類まれなる霊能力と格の高い魂で、様々な視えざる存在と対峙しながら

迷える人々を幸福へ導くことを天命の職と自覚し、日々精進を重ねるまさに正統派の祈祷師。

昇龍 輝羽《しょうりゅう てるは》


導光の娘。ニ十歳。 

聖宝德学園大学 国際文化学部二年生。両親譲りの非常に高い霊能力の持ち主。

自分の霊能力をひけらかすこともなく、持って生まれたその力に感謝し、

将来は父のような祈祷師になりたいと思っている。

龍と月に縁がある。

龍を愛する気持ちは父の導光に劣らない。

穏やかな性格だが、我が道を行くタイプ。

自分の人生は自分で切り拓くがモットーで、誰の指図も受けないという頑固な面がある。 

昇龍 澄子《しょうりゅう すみこ》


導光の妻。四十七歳。 

元客室乗務員。導光とは、機内で知り合った。

現在は、息子の縁成とともにイギリスに滞在中。

かつて偉大な巫女であったという前世を持つ。

導光同様、非常に高い霊能力と癒やしの力で多くの人々を内面から支え、癒やしながら心を修復し、

本来の自分を取り戻せるよう救える人物。

桜と龍に縁がある。

性格は、かなり天然で、かなりズレている。

どこまでが本気で、どこまでが冗談なのか、家族との会話がかみ合わない面がある。 

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