天職

文字数 585文字

 代々男系の昇龍家。


 男ばかりの兄弟で、女性といえば母親
だけ。


 家の中はいつもバタバタしていて色が
ないというか、花がないというか。


 厳格な父のお陰で横道に()れずに生きて
()れたが、そんな導光も若い頃には父に反抗
したこともあった。


 だが、そんな時。


 父から譲り受けた部屋の間仕切りに描かれ
た昇龍家の《守護神》、

 『清天瑞幸龍(せいてんずいこうりゅう)

 その《龍》の姿を見ていると、なぜか己の
浅はかさや愚かさに気づかされた。


 そして。。。


 進むべき道に迷った時。


 決断を下せない時。


 いつもこの《龍神》が導いてくれた。



 こういう仕事をしていると、心ない言葉を
浴びせられることがある。


 罵倒(ばとう)され、殴られたこともあった。


 その度に、相手の幸せを想うからこその
助言を受け入れてもらえない(くや)しさや
歯がゆさで心は傷つき、人を正しい方向へ
導くことの難しさを改めて思い知らされた
のである。



 導光の名は、父が名付けてくれたもの。


 その名前には、絶望という暗闇の中で苦し
んでいる人々に進むべき道を説き、光ある
人生へ導いてほしいという父の願いが込めら
れている。


 振り返ってみると、いろいろなことが
あったが、今は自信を持って、

「自分の仕事に誇りを持っている。」

 そう言えるようになった。


 まさに天命の職。


 この上なくやりがいのある使命とも言う
べき天職。


 今では、同じ志を持つ仲間が増え、
祈祷師間の交流も盛んに行われている。

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登場人物紹介

昇龍 導光《しょうりゅう どうこう》


代々続く祈祷師の家系に生まれた。昇龍家第四十八代当主。五十歳。

非常に高い霊能力を持つ。

ダンディで背が高く、スポーツマン。 

物腰柔らかで一見祈祷師には見えない。

導光が愛するものは何といっても龍と家族そしてスイーツ。

持って生まれた類まれなる霊能力と格の高い魂で、様々な視えざる存在と対峙しながら

迷える人々を幸福へ導くことを天命の職と自覚し、日々精進を重ねるまさに正統派の祈祷師。

昇龍 輝羽《しょうりゅう てるは》


導光の娘。ニ十歳。 

聖宝德学園大学 国際文化学部二年生。両親譲りの非常に高い霊能力の持ち主。

自分の霊能力をひけらかすこともなく、持って生まれたその力に感謝し、

将来は父のような祈祷師になりたいと思っている。

龍と月に縁がある。

龍を愛する気持ちは父の導光に劣らない。

穏やかな性格だが、我が道を行くタイプ。

自分の人生は自分で切り拓くがモットーで、誰の指図も受けないという頑固な面がある。 

昇龍 澄子《しょうりゅう すみこ》


導光の妻。四十七歳。 

元客室乗務員。導光とは、機内で知り合った。

現在は、息子の縁成とともにイギリスに滞在中。

かつて偉大な巫女であったという前世を持つ。

導光同様、非常に高い霊能力と癒やしの力で多くの人々を内面から支え、癒やしながら心を修復し、

本来の自分を取り戻せるよう救える人物。

桜と龍に縁がある。

性格は、かなり天然で、かなりズレている。

どこまでが本気で、どこまでが冗談なのか、家族との会話がかみ合わない面がある。 

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