共犯者 天文師の子孫のお手柄
文字数 2,140文字
一切聞かされなかった当時の天文師一族。
あくまで天文師の一存で犯した罪。
最終的には、そう判決は下された。
代々一族全員が帝国に尽くしてきたその
忠誠心と今に至るまでの功績を考慮され、
一族全員死罪こそ免れたものの、現実は
非常に厳しく、犯してしまった天文師の
罪は後世まで影響し、一族は未だ名誉を
回復できぬまま、みな悲惨な人生を歩ん
でいた。
ところがちょうど百年前。
事態は思わぬ方向へ動き始めたのである。
その一族の
伝わる《
の倉でその書を探していたところ、奥の棚に
見慣れぬ箱が置いてあるのに気づいたのだ。
不思議に思い、『
みると、中には書面で交わされた契約書のよ
うなものが入っていた。
それを読んだ『
止まらなくなってしまった。
その内容は、『チュウチョウ』と祖先である
かつての天文師、『
された密約であることがわかったのである。
そこには、【月帝源】が保管されている部屋
の扉を開ける呪文を『チュウチョウ』に教え
る見返りに、『チュウチョウ』が皇帝となった
折には、《準皇帝》の位、事実上のNo.2
(ナンバーツー)のポストを『
ることを約束すると記されていた。
両名の直筆の署名と刻印もあった。
祖先の『
あったのか。。。
すべての真実を知った『
何とか動かぬ証拠であるこの契約書を
皇帝の元に届けたかった。
だが、天文師の身分をはく
いかにしてこれを皇帝に伝えたらよい
ものか。。。
『星宿』にはまったくその手立てが見つから
ず、途方に暮れてしまっていたのである。
下手に誰かにこの事実を伝えてしまえば
大へんなことになりかねない。
悩んだ末に『星宿』は、
である。
夜空を眺め、そして、心を落ち着かせ、
ひたすら占った。
最善の道は、一体何であるのか。。。
その時。
一瞬だが、流れ星が夜空に現れ、西の方へ
消えていった。
消えた先は。。。
何と《火星》。
「《火星》。。。?
そうかっ! 読めたぞ。
頼みの綱は《火星》だ。
《火星》に助けを求めよう。」
かつて帝国と良好な関係を築いていた
≪火星王国≫。
今は、国交断絶状態であるが、『星宿』
には視えるものがあった。
(皇帝陛下は、きっとこの【月帝源】を
今も探し続けておられるはず。
であれば、例え≪火星王国≫と鎖国状態
であろうとも、手掛かりが
あるのならば、きっと≪火星王国≫の国王
との交渉のテーブルにはついて下さるので
はなかろうか。。。)
『星宿』は、まだ幼い頃、両親からある話を
聞いたことがあった。
それは、《火星》からの使者が、帝国へ忍び
でやって来ては帝国の情報を収集しているらし
いというものであった。
使者が降り立つ場所は、帝国の最北端。
《ラテルノー》という都市。
その都市にある、とある酒場に客として
訪れ、民の言葉を聞き、情報を得ている。
それは月に一度、《満月》の日。
数ある酒場の中で、唯一 《火星》からの
使者が訪れる店には、《火星》と通じている
帝国の民がいると聞いた。
だが、いざとなると再び迷いが頭の中を
よぎってしまう。
《火星》にこの事実を告げ、手を貸してもら
うべきか、別の方法を考えるべきか。
『星宿』は悩んでいた。
そんなある日。
近くに住む者からある
かつて《火星》の王子が、任務で地球に
いる帝国の皇女『さえずり』の命を救った
ことがある。
王子は皇女に《火星》と帝国との関係改善
に協力してほしいと頼んだが、皇女はそれに
応じず去って行ったと。
《火星》も何代にも渡り、帝国との関係
を改善し、国交を回復したいと願っている
らしいと。
『星宿』は、決心した。
(《火星》の使者にすべてを託そう。)
そして、《満月》の日。
『星宿』は、例の酒場に現れた『セイソウ』
と名乗る《火星》の使者に真実を告げた。
「どうか。。。 どうか、お願いです。
≪火星王国≫の国王陛下にお伝え
ください。
何としても
この契約書を届けていただきたいと。」
『星宿』は、張り詰めた表情で、《火星》
の使者『セイソウ』をじっと見つめ、
『セイソウ』にすべてを託した。
『セイソウ』は、
「承知しました。
国王陛下の悲願。
この証拠の契約書は、必ずや国王陛下の
元へ届けさせていただきます。
いずれ
の皇帝陛下へ
また帝国へ来訪した折には、その後の経過
をあなたにお伝えいたしましょう。」
「あなたを信じます。
よろしくお願いいたします。」
それから間もなく、皇帝は、≪火星王国≫
を通じて無事に契約書を入手した。
だが、証拠は手に入れたものの、肝心の
【月帝源】の
いったいどこに隠しているのか。
なかなかボロを出さない『チュウチョウ』
の周辺を捜査し続けて百年間。
すべての証拠の品が揃い、今やっと、罪を
明らかにするべき時がやって来たのであった。
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