『さえずり』を想う『赤心』王子

文字数 713文字

 遥か遠い火星から、なぜこの地を訪れたの
か、なぜ『さえずり』を助けようとするのか。


 実は、『赤心(せきしん)』王子は、ずっと以前から
地球にいる『せせらぎ』と『さえずり』の様子
を見護っていたのであった。


 美しく輝く瑠璃色(るりいろ)の地球。


 『赤心(せきしん)』王子もまた、火星と同じ惑星で
あるこの地球が大好きであった。


 そして、ある日。


 その地球で、その地球の美しさにも劣らな
い、いや、その美しさ以上に美しいひとつの光
を見つけたのである。


 それこそが『さえずり』であった。


 『さえずり』の魂は、数多(あまた)の《神々》でさえ
魅了されるほどの美しさ。


 《桜の花》のごとく透き通るような薄紅(うすくれない)
に輝く《魂光(こんこう)》。


 あらゆる存在を(いや)し、心からの安らぎを与
え、生きる活力を見い出させてくれる。


 『赤心』王子は、そんな『さえずり』に完全
に心を(うば)われていたのであった。


 だが、その(かたわ)らには、いつも『せせらぎ』
がいた。


 『せせらぎ』の『さえずり』を(いとお)しむ
想い。

 そして、『さえずり』の『せせらぎ』を
(いとお)しむ想いを感じていた『赤心』王子は、
二人の幸せをずっと願いながら見護っていた
のである。



 そんなある日。


 二人に異変が起こっているのを察知し、
しばらくは静観していたのだが。。。


 彼らが地上より《月》に思念を送り続けて
いるのは知っていた。


 ところが一向に《月》からの返事がない。


 それを不思議に思っていたのだ。


 (いったいどうしたのだ。

 なぜ二人の想いを受け取らぬ?)


 彼らの祈りは、《月》には届かなかった。


 だが、その心からの祈りの声は、火星に
は、いや、『赤心』王子には、しっかりと
届いていたのである。


 「彼らの祖国は、彼らを見捨てたのか? 

 ならばこの私が代わりに彼らの願いを引き

受けよう。」

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登場人物紹介

昇龍 導光《しょうりゅう どうこう》


代々続く祈祷師の家系に生まれた。昇龍家第四十八代当主。五十歳。

非常に高い霊能力を持つ。

ダンディで背が高く、スポーツマン。 

物腰柔らかで一見祈祷師には見えない。

導光が愛するものは何といっても龍と家族そしてスイーツ。

持って生まれた類まれなる霊能力と格の高い魂で、様々な視えざる存在と対峙しながら

迷える人々を幸福へ導くことを天命の職と自覚し、日々精進を重ねるまさに正統派の祈祷師。

昇龍 輝羽《しょうりゅう てるは》


導光の娘。ニ十歳。 

聖宝德学園大学 国際文化学部二年生。両親譲りの非常に高い霊能力の持ち主。

自分の霊能力をひけらかすこともなく、持って生まれたその力に感謝し、

将来は父のような祈祷師になりたいと思っている。

龍と月に縁がある。

龍を愛する気持ちは父の導光に劣らない。

穏やかな性格だが、我が道を行くタイプ。

自分の人生は自分で切り拓くがモットーで、誰の指図も受けないという頑固な面がある。 

昇龍 澄子《しょうりゅう すみこ》


導光の妻。四十七歳。 

元客室乗務員。導光とは、機内で知り合った。

現在は、息子の縁成とともにイギリスに滞在中。

かつて偉大な巫女であったという前世を持つ。

導光同様、非常に高い霊能力と癒やしの力で多くの人々を内面から支え、癒やしながら心を修復し、

本来の自分を取り戻せるよう救える人物。

桜と龍に縁がある。

性格は、かなり天然で、かなりズレている。

どこまでが本気で、どこまでが冗談なのか、家族との会話がかみ合わない面がある。 

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