輝羽の覚悟

文字数 310文字

 「わかった。」


 輝羽の答えは、このひと言。

 もうすでに覚悟はできていた。


 その夜、輝羽は、庭に出て夜空を見上げて
いた。


 《満月》の前夜。


 今まで空に浮かぶ《月》を見上げたこと
など一度もなかった。


 小さい頃、母の『澄子』に

 「お月さま、とってもきれいよ。

 見てごらんなさい。」

 そう言われても、《月》を見ようとも
しなかった。


 見たくなかったのかもしれない。


 遠い昔、《月》と何があったのか。

 いずれにしろ、明日の夜、すべてが明らか
になる。


 一瞬、輝羽は、《月》が自分を明るく照ら
したように感じた。



 《月》のスポットライト。


 「自分はここにいる。 

 逃げも隠れもしない。」


 その時、輝羽は、無意識にそう(つぶや)いていた
のである。

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登場人物紹介

昇龍 導光《しょうりゅう どうこう》


代々続く祈祷師の家系に生まれた。昇龍家第四十八代当主。五十歳。

非常に高い霊能力を持つ。

ダンディで背が高く、スポーツマン。 

物腰柔らかで一見祈祷師には見えない。

導光が愛するものは何といっても龍と家族そしてスイーツ。

持って生まれた類まれなる霊能力と格の高い魂で、様々な視えざる存在と対峙しながら

迷える人々を幸福へ導くことを天命の職と自覚し、日々精進を重ねるまさに正統派の祈祷師。

昇龍 輝羽《しょうりゅう てるは》


導光の娘。ニ十歳。 

聖宝德学園大学 国際文化学部二年生。両親譲りの非常に高い霊能力の持ち主。

自分の霊能力をひけらかすこともなく、持って生まれたその力に感謝し、

将来は父のような祈祷師になりたいと思っている。

龍と月に縁がある。

龍を愛する気持ちは父の導光に劣らない。

穏やかな性格だが、我が道を行くタイプ。

自分の人生は自分で切り拓くがモットーで、誰の指図も受けないという頑固な面がある。 

昇龍 澄子《しょうりゅう すみこ》


導光の妻。四十七歳。 

元客室乗務員。導光とは、機内で知り合った。

現在は、息子の縁成とともにイギリスに滞在中。

かつて偉大な巫女であったという前世を持つ。

導光同様、非常に高い霊能力と癒やしの力で多くの人々を内面から支え、癒やしながら心を修復し、

本来の自分を取り戻せるよう救える人物。

桜と龍に縁がある。

性格は、かなり天然で、かなりズレている。

どこまでが本気で、どこまでが冗談なのか、家族との会話がかみ合わない面がある。 

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