しばしの別れ

文字数 562文字

 そして 『極月光天』は 『鳳凰』の背に
乗った。

 なんという 神々(こうごう)しい姿であろう。


 あっぱれっ、『極月光天』。
 
 真の強さと優しさを持つ勇士よ。


 『極月光天』が放つ とてつもない《月光》
の力が『鳳凰』を包み込み、もはや一体と
なっている。

 まさに『鳳凰』に選ばれし者。

 そして 『極月光天』は、優しく『麗ら』と
『こもれび』の手を取り、二人を『鳳凰』の
背に乗せた。

 側近の『テイセイ』も その(あと)に続いた。


 「『さえずり』。 

 また いつか逢える。

 しばしの別れだ。」

 『極月光天』が、輝羽に別れを告げた。

 「『さえずり』。時々 近況を知らせてね。」

 「『さえずり』姉さま。

 人生を もっともっと楽しんでください。」

 『麗ら』と『こもれび』の別れの言葉
だった。


 「導光殿。 『澄子』殿。

 そして 『せせらぎ』。。。

 どうか 息災(そくさい)で。」

 そう言うと 『極月光天』は、『鳳凰』に
向かって 旅立ちの合図をした。


 『鳳凰』は 空を見上げ、その美しい銀色の
羽を羽ばたかせ、ゆっくりと、ゆっくりと
空へ昇って行った。

 『鳳凰』の背の上で 手を振り続ける かつて
の『さえずり』、輝羽の家族。


 そして 『鳳凰』は、何度も何度も導光の
屋敷の上空を旋回(せんかい)し、暁紅(ぎょうこう)の空の中に消えて
いった。


 輝羽は、去りゆく家族を ずっと見つめて
いた。

 手を振りながら。。。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

昇龍 導光《しょうりゅう どうこう》


代々続く祈祷師の家系に生まれた。昇龍家第四十八代当主。五十歳。

非常に高い霊能力を持つ。

ダンディで背が高く、スポーツマン。 

物腰柔らかで一見祈祷師には見えない。

導光が愛するものは何といっても龍と家族そしてスイーツ。

持って生まれた類まれなる霊能力と格の高い魂で、様々な視えざる存在と対峙しながら

迷える人々を幸福へ導くことを天命の職と自覚し、日々精進を重ねるまさに正統派の祈祷師。

昇龍 輝羽《しょうりゅう てるは》


導光の娘。ニ十歳。 

聖宝德学園大学 国際文化学部二年生。両親譲りの非常に高い霊能力の持ち主。

自分の霊能力をひけらかすこともなく、持って生まれたその力に感謝し、

将来は父のような祈祷師になりたいと思っている。

龍と月に縁がある。

龍を愛する気持ちは父の導光に劣らない。

穏やかな性格だが、我が道を行くタイプ。

自分の人生は自分で切り拓くがモットーで、誰の指図も受けないという頑固な面がある。 

昇龍 澄子《しょうりゅう すみこ》


導光の妻。四十七歳。 

元客室乗務員。導光とは、機内で知り合った。

現在は、息子の縁成とともにイギリスに滞在中。

かつて偉大な巫女であったという前世を持つ。

導光同様、非常に高い霊能力と癒やしの力で多くの人々を内面から支え、癒やしながら心を修復し、

本来の自分を取り戻せるよう救える人物。

桜と龍に縁がある。

性格は、かなり天然で、かなりズレている。

どこまでが本気で、どこまでが冗談なのか、家族との会話がかみ合わない面がある。 

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み