≪月界帝国≫との縁《えにし》

文字数 525文字

 『さえずり』が、すべての記憶と共に
取り戻したもう一つのもの。


 それは、≪月界帝国≫との(えにし)であった。

 ずっと絶ち切りたいと思っていた帝国
との絆。

 その絆は、再び息を吹き返し、青き(えにし)の糸
となって(よみがえ)り、『さえずり』の右手人差し指
から帝国に向かって真っすぐに伸びて行った。

 千三百年もの間、何度も人間として転生を
繰り返し、成長してきた『さえずり』の魂。


 その魂が、学び(さと)ったこと。


 それは、人間として一番大切なこととは

「自分に正直に生きること。」

 そして、

「自らの中にある正義を(つらぬ)くこと。」

 であった。


 いつの日か、父と対峙(たいじ)する時が来る。


 そう覚悟していた『さえずり』。

 そして、その時こそ自らの思いを全身全霊
で父にぶつける。

 『さえずり』が、封印しながらも長い年月を
かけて紡ぎ続けてきたその青き(えにし)の糸には
『さえずり』の決意が込められていた。


 それは、『さえずり』そのものであった。


 揺るがない信念を創り出した『さえずり』の
強き魂を(たずさ)え、生まれ変わった『さえずり』の
青き【縁糸(えんし)】は、真っすぐに、そして正々堂々
と帝国に向かって伸びて行った。



 千三百年間、『さえずり』を探し続けていた
≪月界帝国≫。

 間もなく帝国は、『さえずり』の居所(いどころ)を知る
ことになるのである。

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登場人物紹介

昇龍 導光《しょうりゅう どうこう》


代々続く祈祷師の家系に生まれた。昇龍家第四十八代当主。五十歳。

非常に高い霊能力を持つ。

ダンディで背が高く、スポーツマン。 

物腰柔らかで一見祈祷師には見えない。

導光が愛するものは何といっても龍と家族そしてスイーツ。

持って生まれた類まれなる霊能力と格の高い魂で、様々な視えざる存在と対峙しながら

迷える人々を幸福へ導くことを天命の職と自覚し、日々精進を重ねるまさに正統派の祈祷師。

昇龍 輝羽《しょうりゅう てるは》


導光の娘。ニ十歳。 

聖宝德学園大学 国際文化学部二年生。両親譲りの非常に高い霊能力の持ち主。

自分の霊能力をひけらかすこともなく、持って生まれたその力に感謝し、

将来は父のような祈祷師になりたいと思っている。

龍と月に縁がある。

龍を愛する気持ちは父の導光に劣らない。

穏やかな性格だが、我が道を行くタイプ。

自分の人生は自分で切り拓くがモットーで、誰の指図も受けないという頑固な面がある。 

昇龍 澄子《しょうりゅう すみこ》


導光の妻。四十七歳。 

元客室乗務員。導光とは、機内で知り合った。

現在は、息子の縁成とともにイギリスに滞在中。

かつて偉大な巫女であったという前世を持つ。

導光同様、非常に高い霊能力と癒やしの力で多くの人々を内面から支え、癒やしながら心を修復し、

本来の自分を取り戻せるよう救える人物。

桜と龍に縁がある。

性格は、かなり天然で、かなりズレている。

どこまでが本気で、どこまでが冗談なのか、家族との会話がかみ合わない面がある。 

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