第14話

文字数 730文字

「あの!」

 話し合い終わりに私が話しかけると委員長は目を丸くした。

「槇原さんのどこがそんなに好きなの?」

 聞くなら今しかないような気がして私はそう尋ねてみる。委員長がぎょっとした顔で私を見る。


「普通それを聞くかよ?」

「槇原さん、よくもててるから気になったの。」

 委員長は私を廊下に誘った。周囲で誰も聞いてないことを確認して言った。

「そうだな、なんでだろうなあ。あの子を入学式で一目見て気になった。何やってても目をひく」

  案外すっと答えてくれる。それにしても鶴乃さんが偲ばれる内容だなあ。

「そうなんだ。槇原さん美人だものね。」

「そう肯定されると、不思議な気分だ。桃の事もあるし」

「鶴乃さんのことは言っちゃだめなのかと思ってた。」

「そう思って本当に言わないのもすごいな。胆が据わってるのか、素直なのか。」

「私も委員長ってもっと横柄なのかと思ってた」

「……」

 委員長がキツネにつままれたような顔をしている。

「それを面と向かって言われるとは……」

 委員長はふっと笑って言った。

「お前たちに頼まなければよかったかも……」

「そんな事いわれても困る。」

 困る。
 私のせいで委員長返事もらえてないんじゃないかという気もするし。そんなこと絶対言えないけど。

 ひとつ向こうの下駄箱の横をさあっと藤田と槇原さんが通り抜けた。二人とも楽しそうに笑っている、委員長の顔色がかわった。

「じゃ、そういうことだから」

 委員長は足早に行ってしまう。ひとり残され、私は立ち上がって委員長の行ってしまった方向を見ていることしかできなかった。


それから先、委員長がこの話を口にすることはなかった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み