第4話

文字数 952文字

私は怖気づいて、ドアの前で立ち止まってしまう。

「くらもとー!期間限定がラズベリーって!」

藤田が私を呼ぶ。
なんか、恥ずかしい。
注文カウンターに行くと、藤田がいろいろ、言い出した。

「蔵本、トッピング2つまでね。
 俺はー、チョコにマシュマロとクッキートッピングで!」

藤田は恐ろしいスピードで注文してゆく。
私はメニューを見ながら迷っていた。

「え……と、私は……」

見かねたのか、藤田が

「蔵本、ベリーとナッツどっちが好き?」

「えと、ベリー?」

「じゃー、おねーさん。
 この子の注文はラズベリーにチョコスプレーとベリー追加で!
 あと、二人ともコーンのM」

と普通に私の分も注文してくれた。

「俺、会計済ませちゃうから、先に受け取りカウンターで受け取ってもらってもいい?」

私は、受け取りカウンターに行く。
恥ずかしい。
藤田に気を遣わせた。

受け取りカウンターのお姉さんが言う。

「はーい。チョコとラズベリーのお客様ね」

私は二つ受けとる。

「わ。かわいい」

思わず、つぶやいた。
色とりどりのトッピングに、おいしそうなアイス。
上にはチョコレートでハートが書いてある。

「かわいい、カップルね。
 ハートはおまけよ」

ち、違います!

「あ、まだクラスメイトで……」

お姉さんはいたずらっぽく言う。

「じゃぁ、応援してるわ。頑張って!」

違います!
まだ、は間違えて言いました。

とは言えないまま、藤田のとこへ持っていく。

「あ、おかえりー。蔵本」

藤田がアイスを受け取る。
手が触れる。
今日三度目だ。

「蔵本、さぁ」

藤田が言う。
歩きながら、もう食べ始めている。

「ラズベリーでよかった?
 俺、勝手に決めちゃったけど」

少し、悪びれたように言う。

「あ、ありがと。自分じゃ決めきれなかったから、よかった」

私もアイスを口に含む。
おいしい。
確かに、人に勧めるだけある、おいしいアイスだ。

「おいしい?」

藤田が聞く。

「うん、おいしい。
 ごめんね。おごってもらって」

「俺がしたいだけだから。
 気にしないで」

おいしいものを食べると、リラックスするらしい。
多分、本当。
今、藤田といて、少し、楽しい。
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