第4話

文字数 1,173文字

藤田はひょこっと顔を出し、私が持っている資料をめくって読みながら鶴乃さんに、

「ちゃらんぽらんとか言うんなら、それこそ剛にでも任せればよかったのに。」

といたずらっぽく言った。鶴乃さんは険しい顔をした。槇原さんは硬い笑顔になった。眉村さんは爆笑している。

「織政君ってダメなの?」

 私はこっそりゆりちゃんに聞く。ゆりちゃんは、

「脳みそが筋肉でできてるから、多分話し合いとか理解できないよ。」

と教えてくれた。槇原さんはそれを聞いて困ったように

「悪い人じゃないんだよ。」

と、フォローになってないフォローを入れた。眉村さんが、

「悪くないからタチが悪いんだニャー。 暴走機関車にクラスの代表は向かないにゃ。
 なったらなったでしっかり者のくだっちがなんとかしてくれるだろーけど、くだっち
 は美術部だから文化祭期間中はそっちに専念させてあげたいよね。それなら帰宅部が
 適任よね。でもって、上級生相手に発言できる度胸がある。
 ウチは元々、二人がちょうどいいかなと思ってたから目論見通りだニャン」

だから、下松君さっきあんなに嫌がったんだ。

「ふーん、まゆまゆって結構よく見てるねえ。」

藤田が感心して言った。

「私はつるタンのブレーンにゃ。級長つるタンの目が届かないトコはウチの領分だもん。でも、ユーリがふじふじのコト推薦するなんて思わなかったよ。いつの間に仲よくなったんだニャー?」

「仲良くはないよ」

ゆりちゃんが間髪入れず真顔で言った。眉村さんは「あらあら」と言いながらも私のほうを見てにっこり笑う。

「なるほど。そこでマリちゃんが必要なのね。じゃあ、マリちゃんの双肩に文化祭はかかってるんだ。」

眉村さんは一人で納得している。私はどうやら大きな仕事を授かったらしい。

「マリリ!ガンバだニャー!」

えいえいおー!とジェスチャーをしながら、眉村さんは私を応援してくれている。それと、私のあだ名もマリリになったらしい。

「大丈夫かなぁ」

心配する私に向かって眉村さんは

「大丈夫ニャよ。二人は責任感強いもん。なんとかしてくれるよ!マリリの仕事は、二人が仲たがいしないように、槇原さんが困らないように調整することよ。」

と笑って見せる。私は二人がもめないように見ているのが、仕事かぁ
すでに二人はどっちが委員会で出るかでもめている。ゆりちゃんが泣きつく。

「マリ!槇原、藤田ペアで出るべきだと思わない?言い出しっぺよ!」

藤田も負けずに反論する。

「女子二人のほうがいいでしょ!みゆうちゃんと谷村で!」

 あれ、文化祭実行委員って……。私が思い出す前にあきれた様子で鶴乃さんが言った。

「っていうか決める時も言ったけど、実行委員は男女ひとりずつよ?」

 藤田が嫌そうな顔をする。
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