まかせろ! ライダー!

文字数 4,211文字

(前作の『見てくれ!』の続編、お題も同じです。 オリジナル新ライダーが登場です)

          『まかせろ! ライダー!』

「わははは、ライダー、ノコノコと現れたな? ここが貴様の墓場となるのだ」
「地獄大使かっ……死神博士はどうした?」
「謹慎中だ、失敗続きで首領様の不興を買ったのよ、今日からはこのワシが貴様の相手になってやる」
「だが、クビではないのなら復帰の可能性もあるのだろう?」
「わははは、それはこのワシが許さん! 貴様を倒してワシが正式に筆頭大幹部となってみせる」
「倒せるものならば倒してみろ!」
「言ったな? ライダー! 出でよ! 十人のスーツド・戦闘員共!」
「うっ……何だ? こいつらは」
「ワシが開発した戦闘員強化スーツを装着した戦闘員だ、パワーが平常時の二倍になるだけでなく、衝撃吸収力も従来のスーツに比べて二倍(当社比)の優れものよ」
「なるほど、得体の知れなかったプチ改造に比べると余程人道的だな」
「そうであろう? 死神のミスは人望を念頭に置かなかったことよ、秘密結社と言えども会社組織であることにに変わりはないからな」
「ところで、そのヘルメットは何だ? アメリカンフットボール用にしか見えないが?」
「むむ……専用ヘルメットの制作を中国企業に依頼したのが拙かったようだ、壊れ易くて使い物にならなかったのだ……」
「安物買いの銭失いとはよく言ったものだな」
「うるさい! これは元々スポーツ用だからな、軽くて動きやすい上にフェイスガードで顔面への打撃も防げる優れモノだ、発注した新開発ヘルメットより余程コストがかかっているのだ!」
「では新開発ヘルメットとやらも知れているな……来るなら来い!」
「行け! スーツド・戦闘員どもよ、憎っくきライダーを血祭りに上げてしまえ!」
「「「「「「「「「「イーッ!」」」」」」」」」」
「む……確かにパワーは上がっているな、とおっ……何!? 何だ? この気色悪い感覚は!」
「わははは、怪人プラナリアンの細胞から開発した衝撃吸収体を織込んであるのよ、貴様の攻撃力は文字通り半減する」
「プラナリアン……さぞ着心地は悪いのだろうな」
「知ったことか! 行け! 選ばれしスーツド・戦闘員どもよ!」
「そうとわかれば手加減もできん、怪我をしても私を恨むなよ! とお~っ!」
「ギャー!」
「見たか! 地獄大使、衝撃吸収力があるといっても、この通りふっ飛ばしてしまえば同じことだ!」
「わははは、想定範囲内だ、このワシにぬかりはないわ! 出でよ、メンタリスト怪人!」
「何っ!? 怪人まで……いや、しかし、どう見ても強そうではないな、むしろひ弱そうに見えるが?」
「発想の転換だ、貴様に武力のみで立ち向かおうとした死神の過ちをワシが犯すとでも思ったか」
「どういうことだ!?」
「貴様の精神を乱すのよ、言い知れぬほどのストレスに苦しむが良い! やれ! DaiGoN!」
「DAIGO?」
「違う! DaiGoNだ! 綴りも発音も同じだがこっちは大文字、小文字混在でNもついている、ええい! そんな事はどうでも良い、その力を見せ付けろ、DaiGoN!」
「あっ、オーソドックススタイルで構えましたね、しかしこれはフェイントです、まず繰り出すのは左ジャブ、そして右は右横の戦闘員に向けてストレートを繰り出そうとしていますね、そしてその反動を利用して左側の戦闘員に横蹴りを、その後右腕は後ろの戦闘員へのバックブローを狙い、その回転を利用して左足の回し蹴りで複数の戦闘員をなぎ倒そうとしています」
「な、何だ? なぜ私の動きを読める!? しかもテープを早回ししたような異常な早口だ」
「テープとは貴様もレトロだな、しかし言ったであろう? メンタリスト怪人だと、DaiGoNは貴様の動きの中の僅かな兆候を読み取ることができるのだ、そして過去の戦闘から貴様の癖や戦闘パターン、そして精神状態までも加味して瞬時に行動を予測しているのだ!」
「くそっ」
「あ、くそって言いましたね、動揺した時のライダーの口癖です、その際、ライダーの動きは一瞬止まります、そしてその後は力が入り過ぎるので動きのスピードが10%落ち、フェイントを入れる動きが極度に減ります、正面前蹴りに来ますが、その際横への警戒が薄れます、戦闘員のスピードでそれを衝くのは困難ですが、背後からの攻撃に対してはほぼ無防備になります」
「後ろかっ!」
 ドスッ!
「し、しまった、背後と言われて後ろに気を取られた、正面からボディ攻撃とは……」
「わはは! DaiGoNの言葉のフェイントにも気をつけろよ、ライダー、我々ショッカーはお人好しではないからな」
「く、くそっ!」
「おっと、二度目のくそっです、動揺が表面化しています、するとライダーは冷静な判断力を欠きます、左からの攻撃に右パンチを繰り出しますから背中ががら空きになります」
「ぐわっ」
「膝をつくのをこらえていますが正面の戦闘員には気を配っています、背後からの前蹴りが有効です、つんのめるのをこらえようとしますので左右からのローキック、顎が上がりますので正面からの前蹴り、脇が空きますから左右同時にわき腹にパンチを」
「ぐあぁぁぁ!」
「闇雲に腕を振ってきます、同時に脚払いを掛けてきますからぴょんと飛び上がって避けてっ、空中からの攻撃に備えますから第二陣は脚払いを」
「うわっ」
「今こそストンピングです、あ、違う、ライダーは石頭です、ボディに踏みつけ攻撃を」
「おい! スーツド・戦闘員共! DaiGoNの指示に従わんかっ!」
「地獄大使! 早口過ぎて着いていけません!」
「なんとしたことだ! ……いや、待てよ、ライダーはDaiGoNの指示に惑わされているな……そうか! 神経が研ぎ澄まされる変身時のライダーにはDaiGoNの早口が聞き取れるのか……わははははははは! ライダー、見たか! ワシの計算どおりだ!」
「さすがは地獄大使、転んでもただでは起きない貪欲さ、ミスを認めずに予想外の結果を手柄にしようとする姑息さはまさに……」
「DaiGoN! 誰がワシの分析をしろと言った! ええい! もっとライダーを混乱させるのだ、ストレスで体が動かんようにしてやれ!」
「ジャンプで空中に逃げようとしています、つけている意味がわからない赤いマフラーが狙い目です、マフラーを掴んでっ」
「うわぁっ!」
「いいぞ! お前たち! 恩賞は目の前だ!」
「「「「「「「「「「ハワ・イ~ッ!」」」」」」」」」」
 危うし! ライダー! ライダーのピンチは世界のピンチだ!

 その時だった!

 49ccツーストロークエンジンの耳障りに甲高い爆音! 額のショッカーエンブレムに大きな赤い×印をつけた黒いマスクを被り、海水パンツにリングシューズのマッチョマンが原付に跨って駆けつけたのだ!

「ライダー! そいつらは俺に任せてくれ!」
「き、君は?」
「リングネーム、マスクド・アンショッカー! 君に情けを掛けてもらったプチ改造戦闘員だ! 助けに来たぞ! 恩返しをさせてくれ!」
「た、助かる……だが気をつけてくれ! そいつらもただの戦闘員ではない!」
「わかってるさ! 元同僚でも手加減はしないぜ! これでも食らえっ!」
「ギャッ!」
「そ、その武器は一体……」
「プロレス名物、折り畳みパイプ椅子だ! これを持たせたら俺は百人力だぜ!」
「な、何をしている! スーツド・戦闘員共! 裏切り者をひねり潰してしまえ!」
「出来るものならな! そのアメフト用ヘルメットの弱点はここだ!」
 マスクド・アンショッカーはヘルメットの額とフェイスガードの隙間を狙ってパイプ椅子で突く、鼻っ柱を折られた二人目のスーツド・戦闘員がもんどりうって倒れた。
「だ、DaiGoN、何をしている、奴も混乱させるんだ!」
「すみません、やっているのですが、彼には私の早口は聞き取れないようです、しかも彼に関するデータはまだ頭脳にインプットされておらず、分析には多少時間が……」
「もういい! お前には頼らん、下がっていろ!」
「え? おお、ストレスが体から抜けて行くようだ……ライダ~・復活!」
「あ、しまった、DaiGoN、ライダーだけでも封じ込めろ!……おい! どうした!? 声が出ていないぞ! 何? 耳を貸せだと?……喋り過ぎで喉が涸れました? 使えん奴だ!」
「ライダー・パンチ!」
「ウエスタン・ラリアート!」
「ライダー・チョップ!」
「アトミック・ドロップ!」
 うろたえる地獄大使を他所に、復活したライダーとマスクド・アンショッカーは、次から次へとスーツド・戦闘員を蹴散らして行く!
「ライダー! そろそろケリをつけようぜ! タッグマッチの王道、ツープラトン攻撃だ!」
「何っ? 腰を落として手を組んだ構え……そうか! わかったぞ!」
「おうっ!」
 ライダーが駆け寄り、組んだ手に足を掛けるとマスクド・アンショッカーはその怪力でライダーを空中高く舞い上がらせる。
「食らえ! パワーアシスト・ライダーキィ~ック!」
「「「「「「「「「「ギィヤァァァァッ!」」」」」」」」」」」
「ああっ! いかん! 退却だ!」
「「「「「「「「「「イ~~~~」」」」」」」」」」」


「ありがとう、危ないところだった」
「いいんだ、ライダー、君には大きな借りがあるからな」
「しかし、これで君もショッカーの裏切り者になってしまったな……」
「何てことはないさ、自分の身ぐらいは自分で守れる」
「しかし、君には家族もいるのだろう?」
「う……まぁ、女房一人だが……」
「君さえ良ければ、私のところへ来ないか?」
「え? 君の家へ?」
「私に家はないさ、立花レーシングクラブ、それが我々の隠れ家なんだ」
「……随分と目立つ隠れ家だったんだな……しかし、ライダー、お言葉に甘えさせてもらうよ、一人では女房も守りきれないからな……また恩を受けてしまったな」
「恩だなどと……世界平和のために戦う仲間が増えるのは私も心強いよ」
「ああ、ライダー、共に戦わせてくれ!」
「ショッカーを倒し、世界に平和が戻るまで!」

 サイクロン号と原付バイクは夕日に向かって走り去るのであった。
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