熱いぜ! ライダー!
文字数 5,635文字
まだまだ暑い日が続きますね。
そこで、熱いんだか冷たいんだかよくわからない話を投稿しますw
これもお題で書いたもので、お題は……。
①凍る、冷たい、寒いのどれかもしくは全部
②白、青、黄のどれかもしくは全部
③できちゃった
の三つでした。
『熱いぜ! ライダー!』
「きゃぁぁぁぁぁ!」
「うわぁぁぁぁぁ!」
都内のとある遊園地、今日もお化け屋敷は大盛況だ。
それもそのはず、お化け屋敷のお化けたちは全て本物なのだ。
真っ暗な中に狐火が浮かび、唐傘お化けやろくろ首が暗闇からにゅっと現れる。
更に進むとぬりかべにぶち当たり、井戸からは皿を数える声が聞こえて来る。
やせ衰えた女が水飴を乞い、壁にかけられた小袖からはにゅっと手が伸びて来る。
戸板がバンと裏返るとお岩さんが張り付いている、ようやく明るい所に出て来たと思えば提灯が笑い出す……。
へたりこんで動けなくなる女性もいるほどの怖さだ。
だが、その中でも一番人気は雪女だ。
そもそもその部屋に入っただけでぞっとするほど涼しい、部屋の片隅には青色LEDに照らし出された雪女がぼうっと浮かび上がり、その美しい顔を上げると冷気を吹きかけて来る、その冷たさと言ったら……。
『怖いもの選手権』と言うイベントが毎年定期的に開催されるようになり、お化けや妖怪たちも時折現代社会に出てくるようになった。
となるとお化けも人の子……かどうかはわからないが……物欲だって生まれて来る、物欲を満足させたいと思えば金が要る、金を稼ぐには働かないといけない。
そのための夏季限定アルバイトがこのお化け屋敷のキャストなのだ。
雪女は当然お雪本人だが、来場者を凍らすわけにも行かないのでお雪としては相当に手加減した冷気しか吐けない、お雪が吐く冷気のせいで普通の人間にはぞくっとするほど涼しい部屋だがお雪にとってはまだ暑い、お雪が纏う冷気と、湿った空気がせめぎ合ってお雪の周りには常に白い水蒸気が立ち込める、それがお雪を一層幻想的に、かつ美しく見せ、男女を問わずお雪は大人気なのだ。
お雪が東京に滞在しているとあって、お雪の勤務時間が終われば晴子は毎日のようにお雪の元に通っている。
お雪が吐く冷気は一種の『気』だ、だとすれば気を操る陰陽道でも冷気を吐くことが可能になるのではないかと考えたのだ。
「う~ん、やっぱり上手く行かないなぁ」
「でもちょっとは出せるようになったじゃない」
「これくらいじゃ武器としては使えないわ」
「まあ、一朝一夕で出来るもんじゃないわよ、簡単に出来たらあたしの存在価値はどこにあるの? ってカンジだもん」
「なんかコツみたいなものはないのかしら」
「まあ、強いて言えばイメージね、絶対零度のイメージ」
「絶対零度って言われてもねぇ……」
お雪に『イメージが大事』と言われ、おやっさんのツテを頼って冷凍倉庫体験させてもらったりはしている、しかし冷凍倉庫と言えどもせいぜいマイナス50度、絶対零度のマイナス271度には遠く及ばない。
とは言っても液体窒素に浸かるわけにも行かず、晴子が抱けるイメージはマイナス50度が限界なのだ。
「まあ、マイナス50度でも戦闘員を怯ませるくらいはできるんじゃない?」
「あたしにはそれくらいが限界なのかなぁ……」
晴子はちょっと悔しそうにつぶやいた。
あくる日……。
「ショッカーが現れた! みんな、頼むぞ」
おやっさんが警察の連絡を受けて檄を飛ばす。
「どんな怪人なんです?」
「火山のような、と言っていたが……詳細はわからん」
「火山か……この暑いのにまた暑苦しい怪人だな……だがそうも言っていられない、みんな、行こう!」
ライダーチームはそれぞれのマシンにまたがる、晴子もON-3号のタンデムシートにまたがり、志のぶの腰にしっかりと腕を回した。
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
「わはははは……ライダーども、飛んで火に入る夏の虫とはよく言ったものだ、バッタの怪人だけにな」
「地獄大使! その冗談はサムいぞ」
「ははは、毎日毎日暑いからな、この場で死んで行くお前たちにせめてものサービスだ、やれ! マグマ男!」
現れたのは全身が黒い岩に覆われたような怪人、体全体がまるで火山のように円錐形でところどころ見えるひび割れは内部のマグマで真っ赤に見える、そして天辺からは黒煙を吹き出している。
「なるほど、火山みたいな怪人と言う情報はかなり正確だったようだな」
「しかし、あれも改造人間なのか? 火山のDNAなんて聞いたこともないぜ」
「なんだか出て来る怪人が段々現実離れして来たな」
「作者のネタ切れじゃない?」
志のぶの鋭い指摘に三人ライダーがうんうんと頷く……だが作者としてはそれで怯むわけにも行かない! ご都合主義は今に始まったことではないし、後にも退けないのだ。
「わははは、笑っていられるのも今の内だけだ、やってしまえ! マグマ男!」
ボン、ボン、ボン。
マグマ男は頭の天辺から火山弾を連続して打ち出して来る。
「なんの! うわっ熱っちぃ!」
火山弾をパンチで打ち返そうとしたマッスルが慌てて手を振る。
「大丈夫か!? マッスル!」
「ああ、強化スーツのおかげで火傷までは行かないよ、だが受け止めるわけには行かないな、打ち返しただけでこの熱さだ……ライダーマン、ウォーターガンは?」
「あの程度の水では文字通り焼け石に水だな、私のフックアームなら打ち返すくらいはできるが……」
「どうだ! マグマ男の実力は! だがまだまだこんなものではないぞ、マグマ男、火砕流攻撃だ!」
ボーン!
大きな音と共に高熱の黒煙が噴出し、ものすごい勢いでライダーたちに迫る!
「晴子ちゃん、ぬりかべを呼べる!?」
三人のピンチに志のぶが叫ぶ
「それが……」
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
「イーッ!」
「イーッ!」
「きゃぁぁぁぁっ!」
その頃、かの遊園地では、いかにも暑苦しい全身黒タイツの戦闘員たちが乱入し、お化け屋敷を取り囲んでいた、お化けたちを建物から出られなくするためにお化け屋敷にお札をベタベタと貼り付けて結界を張っていたのだ。
ぬりかべはマグマ男の攻撃を防ぐ能力があり、お雪はマグマ男の天敵とも言える。
このお化け屋敷の評判を聞きつけたショッカーは密かに私服姿の戦闘員を調査にもぐりこませ、お化けたちが本物であると確信して先手を打って来たのだ。
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
「マッスル、私につかまれ! ライダー・ジャンプ!」
「ロープアーム!」
ライダーたちは高台に跳び移ってなんとか火砕流攻撃を避けた。
「ひょう、危ねぇ、ライダー、感謝するぜ」
「当然だよ、仲間だからな……しかし、奴への攻撃手段が見つからないな」
「……」
マッスルが突然黙り込む、こんな時は大抵……。
「マッスル、愛のテレパシー連絡か?」
「愛の、は余計だ、照れるじゃねぇか……しかし悪い知らせだ、お雪さんとぬりかべはお化け屋敷に封じ込められてしまっているそうだ」
「うむ……確かにそれは悪い知らせだが、いつもいつも彼らに頼ってばかりもいられないだろう? マグマ男は俺たちで倒さねば……ライダーマン、なにか方策はないか?」
「難しいな、ただ一つ分かったことはある」
「なんだ?」
「マグマ男は全く移動していない、おそらく火山弾や火砕流は奴が生み出しているわけじゃない、地下深くで繋がっているんだろう」
「つまり、奴はあそこから動けないってことだな?」
「確かにそうだ、だがそれだけじゃない」
「なんだ?」
「地下と繋がっているってことは、奴のマグマは無尽蔵だってことさ」
「なるほどな、確かにそうだ、だが動けないと言うことはこっちの攻撃を避けられないと言うことでもあるさ」
マッスルは体の倍ほどもある岩を高々と持ち上げ、マグマ男に投げつけた。
「なるほど、その手が……」
「いや、待て!」
マッスルが投げつけた岩はマグマ男の脳天に命中したが、そのために却って火口が大きく開いてしまった。
「わはははは、墓穴を掘ったな、マグマ男! とっておきの噴火攻撃だ!」
ドーン! ドーン! ドーン!
マグマ男は大噴火を繰り返してライダーたちを狙う。
ジャンプ力に優れたライダーとロープアームを持つライダーマンはその攻撃をかわして跳びまわることができるが、マッスルは次第に追い詰められてしまう。
それを見たマグマ男はマッスルに照準を定めた。
「あなた! 危ない!」
がけを背にした小さな足場に立つマッスル! もう彼が跳び移れる範囲に足場はなく、地面は既に真っ赤に焼けたマグマに覆われている!
その時だ。
「調子に乗ってんじゃないわよ~!」
およそ似つかわしくない悪態と共に晴子が冷気を吐く。
「晴子ちゃん! お願い! 頑張って!」
晴子の冷気とマグマはしばし空中でせめぎ合っていたが、マグマの熱は急激に失われ、冷えた溶岩石となって固まって行った。
「晴子ちゃん、今のって……」
「えへへ……できちゃった」
晴子はペロッと舌を出したが、気を失うように倒れ込んで危うく志のぶに抱きかかえられた。
身寄りのない晴子にとってライダーチームは家族も同然、その大ピンチに直面して晴子の潜在能力が解放されたのだ。
「助かった! 晴子ちゃん、恩に着るぜ! やい、マグマ男! これでも食らえ!」
九死に一生を得たマッスルは固まった溶岩石を折り取ると、再びマグマ男に投げつける。
そして狙い違わずそれは火口に突き刺さった。
「ぐあっ!」
「ええい! 怯むな! マグマ男! そんな岩など噴き飛ばしてしまえ!」
「ぐぅぅぅぅぅぅ……」
マグマ男がいきむ、しかし溶岩石はマグマ男の想像以上に深く突き刺さっていた。
「あ、マグマ男! よせ! 危険だ!」
マグマ男の円錐形の体が徐々に膨らんで来たのを見て、地獄大使はうろたえた。
「それ以上いきむと爆発するぞ」
「うぐぅぅぅぅぅ」
マグマ男はもういきんでいるわけではなかった、地下からどんどん供給されるマグマは彼がコントロールできる量を超えていたのだ。
「い、いかん! お前たち! 退却だ!」
地獄大使が戦闘員を引き連れて一目散に逃げだした、その直後……。
ドカーン!
血を揺るがすような大音響と共に、マグマ男は跡形もなく飛び散った……。
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
「やっぱり無理みたい……」
一度はマグマを止めるほどの冷気を吐くことができた晴子だが、アジトに戻ってトライしてみるとやはり戦闘員を怯ます程度の冷気しか出せない。
「お雪さん……」
晴子が自分並みの冷気を吐いたと聞いたお雪は、晴子のコーチとしてアジトにいた。
酷暑の東京とあって、お雪が纏う冷気とたっぷり湿気を含んだ熱気のせめぎあいは、お雪の周囲を水蒸気だらけにしていて、その姿がほとんど見えないほどだ。
「イメージの問題だと思ったけど、そうじゃなかったみたいね、あなたはマッスルさんのピンチに直面した、その時『気』が爆発的に噴出したのね……すごく疲れたでしょう?」
「うん、気を失って倒れこんじゃった」
「良く火事場のバカ力って言うでしょ? 同じことがあなたにも起こったんだと思う、いっぺんに『気』を全部使っちゃったから抜け殻みたいになっちゃんだわ」
「あの力はいつでも使えるわけじゃないってこと?」
「そうね、でも大ピンチに直面すればまた使えるんじゃない?」
「だといいけど……」
「きっとそうよ、でも一回限りの最後の手段だってことは憶えておかないとね、あなたの力を全部解放しちゃうんだから、その直後はいつもの陰陽道も使えなくなると思う」
「確かにそうかも……」
「あ~あ、それにしてもお札で封じられるなんて情けなかったわね……やっぱりあたしたちは人間界に出て来ちゃいけないんだわ」
「えっ? もう出てこないの? それってもう会えないってこと?」
「ううん、おおっぴらに出て来ちゃ拙いって思うだけ、あなたに呼ばれればいつでも駆け付けるわよ、ショッカーなんかに日本を征服されるわけには行かないもの、ここはあたしたちの国でもあるんだからね」
にっこり笑ったお雪は空中に溶けて行くかのように消えた、山に帰ったのだ。
ちょっとしょんぼりしてしまった晴子だが、その肩をポンと叩く者がいた。
「晴子ちゃん、今回は本当に助かったよ、今度は俺たちが君を守るからな」
振り返ると仮面ライダー・マッスルこと剛の気持ちの良い笑顔、
その後ろには志のぶ、隼人、丈二、そしておやっさんの笑顔も並んでいる。
「うん」
晴子はにっこりと微笑んだ。
(そう、あたしにはこの人たちがいる、家族同様の大事な人たち……守り、守られながら、共に正義のためにショッカーと戦う仲間たちが……)
数年前、ショッカーと手を組んだ陰陽師・アシャード・ドゥーマンとの戦いに敗れた父、父と一緒に命を落とした母……目の前で大事な人を奪われた時の悔しさ、悲しさは今でも鮮明に憶えている。
二度と自分と同じ思いをする人があってはならない、だからこの大事な人たちと一緒に戦う、ショッカーを殲滅するその日まで……。
そう心に誓う晴子、いや、陰陽師・アベノセイコであった……。
そこで、熱いんだか冷たいんだかよくわからない話を投稿しますw
これもお題で書いたもので、お題は……。
①凍る、冷たい、寒いのどれかもしくは全部
②白、青、黄のどれかもしくは全部
③できちゃった
の三つでした。
『熱いぜ! ライダー!』
「きゃぁぁぁぁぁ!」
「うわぁぁぁぁぁ!」
都内のとある遊園地、今日もお化け屋敷は大盛況だ。
それもそのはず、お化け屋敷のお化けたちは全て本物なのだ。
真っ暗な中に狐火が浮かび、唐傘お化けやろくろ首が暗闇からにゅっと現れる。
更に進むとぬりかべにぶち当たり、井戸からは皿を数える声が聞こえて来る。
やせ衰えた女が水飴を乞い、壁にかけられた小袖からはにゅっと手が伸びて来る。
戸板がバンと裏返るとお岩さんが張り付いている、ようやく明るい所に出て来たと思えば提灯が笑い出す……。
へたりこんで動けなくなる女性もいるほどの怖さだ。
だが、その中でも一番人気は雪女だ。
そもそもその部屋に入っただけでぞっとするほど涼しい、部屋の片隅には青色LEDに照らし出された雪女がぼうっと浮かび上がり、その美しい顔を上げると冷気を吹きかけて来る、その冷たさと言ったら……。
『怖いもの選手権』と言うイベントが毎年定期的に開催されるようになり、お化けや妖怪たちも時折現代社会に出てくるようになった。
となるとお化けも人の子……かどうかはわからないが……物欲だって生まれて来る、物欲を満足させたいと思えば金が要る、金を稼ぐには働かないといけない。
そのための夏季限定アルバイトがこのお化け屋敷のキャストなのだ。
雪女は当然お雪本人だが、来場者を凍らすわけにも行かないのでお雪としては相当に手加減した冷気しか吐けない、お雪が吐く冷気のせいで普通の人間にはぞくっとするほど涼しい部屋だがお雪にとってはまだ暑い、お雪が纏う冷気と、湿った空気がせめぎ合ってお雪の周りには常に白い水蒸気が立ち込める、それがお雪を一層幻想的に、かつ美しく見せ、男女を問わずお雪は大人気なのだ。
お雪が東京に滞在しているとあって、お雪の勤務時間が終われば晴子は毎日のようにお雪の元に通っている。
お雪が吐く冷気は一種の『気』だ、だとすれば気を操る陰陽道でも冷気を吐くことが可能になるのではないかと考えたのだ。
「う~ん、やっぱり上手く行かないなぁ」
「でもちょっとは出せるようになったじゃない」
「これくらいじゃ武器としては使えないわ」
「まあ、一朝一夕で出来るもんじゃないわよ、簡単に出来たらあたしの存在価値はどこにあるの? ってカンジだもん」
「なんかコツみたいなものはないのかしら」
「まあ、強いて言えばイメージね、絶対零度のイメージ」
「絶対零度って言われてもねぇ……」
お雪に『イメージが大事』と言われ、おやっさんのツテを頼って冷凍倉庫体験させてもらったりはしている、しかし冷凍倉庫と言えどもせいぜいマイナス50度、絶対零度のマイナス271度には遠く及ばない。
とは言っても液体窒素に浸かるわけにも行かず、晴子が抱けるイメージはマイナス50度が限界なのだ。
「まあ、マイナス50度でも戦闘員を怯ませるくらいはできるんじゃない?」
「あたしにはそれくらいが限界なのかなぁ……」
晴子はちょっと悔しそうにつぶやいた。
あくる日……。
「ショッカーが現れた! みんな、頼むぞ」
おやっさんが警察の連絡を受けて檄を飛ばす。
「どんな怪人なんです?」
「火山のような、と言っていたが……詳細はわからん」
「火山か……この暑いのにまた暑苦しい怪人だな……だがそうも言っていられない、みんな、行こう!」
ライダーチームはそれぞれのマシンにまたがる、晴子もON-3号のタンデムシートにまたがり、志のぶの腰にしっかりと腕を回した。
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
「わはははは……ライダーども、飛んで火に入る夏の虫とはよく言ったものだ、バッタの怪人だけにな」
「地獄大使! その冗談はサムいぞ」
「ははは、毎日毎日暑いからな、この場で死んで行くお前たちにせめてものサービスだ、やれ! マグマ男!」
現れたのは全身が黒い岩に覆われたような怪人、体全体がまるで火山のように円錐形でところどころ見えるひび割れは内部のマグマで真っ赤に見える、そして天辺からは黒煙を吹き出している。
「なるほど、火山みたいな怪人と言う情報はかなり正確だったようだな」
「しかし、あれも改造人間なのか? 火山のDNAなんて聞いたこともないぜ」
「なんだか出て来る怪人が段々現実離れして来たな」
「作者のネタ切れじゃない?」
志のぶの鋭い指摘に三人ライダーがうんうんと頷く……だが作者としてはそれで怯むわけにも行かない! ご都合主義は今に始まったことではないし、後にも退けないのだ。
「わははは、笑っていられるのも今の内だけだ、やってしまえ! マグマ男!」
ボン、ボン、ボン。
マグマ男は頭の天辺から火山弾を連続して打ち出して来る。
「なんの! うわっ熱っちぃ!」
火山弾をパンチで打ち返そうとしたマッスルが慌てて手を振る。
「大丈夫か!? マッスル!」
「ああ、強化スーツのおかげで火傷までは行かないよ、だが受け止めるわけには行かないな、打ち返しただけでこの熱さだ……ライダーマン、ウォーターガンは?」
「あの程度の水では文字通り焼け石に水だな、私のフックアームなら打ち返すくらいはできるが……」
「どうだ! マグマ男の実力は! だがまだまだこんなものではないぞ、マグマ男、火砕流攻撃だ!」
ボーン!
大きな音と共に高熱の黒煙が噴出し、ものすごい勢いでライダーたちに迫る!
「晴子ちゃん、ぬりかべを呼べる!?」
三人のピンチに志のぶが叫ぶ
「それが……」
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
「イーッ!」
「イーッ!」
「きゃぁぁぁぁっ!」
その頃、かの遊園地では、いかにも暑苦しい全身黒タイツの戦闘員たちが乱入し、お化け屋敷を取り囲んでいた、お化けたちを建物から出られなくするためにお化け屋敷にお札をベタベタと貼り付けて結界を張っていたのだ。
ぬりかべはマグマ男の攻撃を防ぐ能力があり、お雪はマグマ男の天敵とも言える。
このお化け屋敷の評判を聞きつけたショッカーは密かに私服姿の戦闘員を調査にもぐりこませ、お化けたちが本物であると確信して先手を打って来たのだ。
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
「マッスル、私につかまれ! ライダー・ジャンプ!」
「ロープアーム!」
ライダーたちは高台に跳び移ってなんとか火砕流攻撃を避けた。
「ひょう、危ねぇ、ライダー、感謝するぜ」
「当然だよ、仲間だからな……しかし、奴への攻撃手段が見つからないな」
「……」
マッスルが突然黙り込む、こんな時は大抵……。
「マッスル、愛のテレパシー連絡か?」
「愛の、は余計だ、照れるじゃねぇか……しかし悪い知らせだ、お雪さんとぬりかべはお化け屋敷に封じ込められてしまっているそうだ」
「うむ……確かにそれは悪い知らせだが、いつもいつも彼らに頼ってばかりもいられないだろう? マグマ男は俺たちで倒さねば……ライダーマン、なにか方策はないか?」
「難しいな、ただ一つ分かったことはある」
「なんだ?」
「マグマ男は全く移動していない、おそらく火山弾や火砕流は奴が生み出しているわけじゃない、地下深くで繋がっているんだろう」
「つまり、奴はあそこから動けないってことだな?」
「確かにそうだ、だがそれだけじゃない」
「なんだ?」
「地下と繋がっているってことは、奴のマグマは無尽蔵だってことさ」
「なるほどな、確かにそうだ、だが動けないと言うことはこっちの攻撃を避けられないと言うことでもあるさ」
マッスルは体の倍ほどもある岩を高々と持ち上げ、マグマ男に投げつけた。
「なるほど、その手が……」
「いや、待て!」
マッスルが投げつけた岩はマグマ男の脳天に命中したが、そのために却って火口が大きく開いてしまった。
「わはははは、墓穴を掘ったな、マグマ男! とっておきの噴火攻撃だ!」
ドーン! ドーン! ドーン!
マグマ男は大噴火を繰り返してライダーたちを狙う。
ジャンプ力に優れたライダーとロープアームを持つライダーマンはその攻撃をかわして跳びまわることができるが、マッスルは次第に追い詰められてしまう。
それを見たマグマ男はマッスルに照準を定めた。
「あなた! 危ない!」
がけを背にした小さな足場に立つマッスル! もう彼が跳び移れる範囲に足場はなく、地面は既に真っ赤に焼けたマグマに覆われている!
その時だ。
「調子に乗ってんじゃないわよ~!」
およそ似つかわしくない悪態と共に晴子が冷気を吐く。
「晴子ちゃん! お願い! 頑張って!」
晴子の冷気とマグマはしばし空中でせめぎ合っていたが、マグマの熱は急激に失われ、冷えた溶岩石となって固まって行った。
「晴子ちゃん、今のって……」
「えへへ……できちゃった」
晴子はペロッと舌を出したが、気を失うように倒れ込んで危うく志のぶに抱きかかえられた。
身寄りのない晴子にとってライダーチームは家族も同然、その大ピンチに直面して晴子の潜在能力が解放されたのだ。
「助かった! 晴子ちゃん、恩に着るぜ! やい、マグマ男! これでも食らえ!」
九死に一生を得たマッスルは固まった溶岩石を折り取ると、再びマグマ男に投げつける。
そして狙い違わずそれは火口に突き刺さった。
「ぐあっ!」
「ええい! 怯むな! マグマ男! そんな岩など噴き飛ばしてしまえ!」
「ぐぅぅぅぅぅぅ……」
マグマ男がいきむ、しかし溶岩石はマグマ男の想像以上に深く突き刺さっていた。
「あ、マグマ男! よせ! 危険だ!」
マグマ男の円錐形の体が徐々に膨らんで来たのを見て、地獄大使はうろたえた。
「それ以上いきむと爆発するぞ」
「うぐぅぅぅぅぅ」
マグマ男はもういきんでいるわけではなかった、地下からどんどん供給されるマグマは彼がコントロールできる量を超えていたのだ。
「い、いかん! お前たち! 退却だ!」
地獄大使が戦闘員を引き連れて一目散に逃げだした、その直後……。
ドカーン!
血を揺るがすような大音響と共に、マグマ男は跡形もなく飛び散った……。
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
「やっぱり無理みたい……」
一度はマグマを止めるほどの冷気を吐くことができた晴子だが、アジトに戻ってトライしてみるとやはり戦闘員を怯ます程度の冷気しか出せない。
「お雪さん……」
晴子が自分並みの冷気を吐いたと聞いたお雪は、晴子のコーチとしてアジトにいた。
酷暑の東京とあって、お雪が纏う冷気とたっぷり湿気を含んだ熱気のせめぎあいは、お雪の周囲を水蒸気だらけにしていて、その姿がほとんど見えないほどだ。
「イメージの問題だと思ったけど、そうじゃなかったみたいね、あなたはマッスルさんのピンチに直面した、その時『気』が爆発的に噴出したのね……すごく疲れたでしょう?」
「うん、気を失って倒れこんじゃった」
「良く火事場のバカ力って言うでしょ? 同じことがあなたにも起こったんだと思う、いっぺんに『気』を全部使っちゃったから抜け殻みたいになっちゃんだわ」
「あの力はいつでも使えるわけじゃないってこと?」
「そうね、でも大ピンチに直面すればまた使えるんじゃない?」
「だといいけど……」
「きっとそうよ、でも一回限りの最後の手段だってことは憶えておかないとね、あなたの力を全部解放しちゃうんだから、その直後はいつもの陰陽道も使えなくなると思う」
「確かにそうかも……」
「あ~あ、それにしてもお札で封じられるなんて情けなかったわね……やっぱりあたしたちは人間界に出て来ちゃいけないんだわ」
「えっ? もう出てこないの? それってもう会えないってこと?」
「ううん、おおっぴらに出て来ちゃ拙いって思うだけ、あなたに呼ばれればいつでも駆け付けるわよ、ショッカーなんかに日本を征服されるわけには行かないもの、ここはあたしたちの国でもあるんだからね」
にっこり笑ったお雪は空中に溶けて行くかのように消えた、山に帰ったのだ。
ちょっとしょんぼりしてしまった晴子だが、その肩をポンと叩く者がいた。
「晴子ちゃん、今回は本当に助かったよ、今度は俺たちが君を守るからな」
振り返ると仮面ライダー・マッスルこと剛の気持ちの良い笑顔、
その後ろには志のぶ、隼人、丈二、そしておやっさんの笑顔も並んでいる。
「うん」
晴子はにっこりと微笑んだ。
(そう、あたしにはこの人たちがいる、家族同様の大事な人たち……守り、守られながら、共に正義のためにショッカーと戦う仲間たちが……)
数年前、ショッカーと手を組んだ陰陽師・アシャード・ドゥーマンとの戦いに敗れた父、父と一緒に命を落とした母……目の前で大事な人を奪われた時の悔しさ、悲しさは今でも鮮明に憶えている。
二度と自分と同じ思いをする人があってはならない、だからこの大事な人たちと一緒に戦う、ショッカーを殲滅するその日まで……。
そう心に誓う晴子、いや、陰陽師・アベノセイコであった……。