番外編 ショッカー・チャンネル『もっとショッカーを良く知ろう!』

文字数 7,170文字

(もしショッカーが動画サイトで隊員募集をしたら……そんな想像で書いたものですw)

      『もっとショッカーを良く知ろう!』

            その1

「はい、初めまして~、ショッカー・チャンネル『もっとショッカーをよく知ろう!』、本日開店で~す、良かったら『読者になる』を押して下さいね~、あと、コメントもお待ちしてま~す」

「第一回の今日はショッカーのアジトをご紹介しますね、興味あるでしょ? 悪の秘密結社の内部」

「ここが戦闘員棟で~す、燦然と輝く鷲のマークが格好良いですね! え? そんなに堂々と掲げて大丈夫かって? 大丈夫なんです、強さの象徴、鷲のマークはあちこちで使われてますからね、どうにでも言い逃れられるんです、秘密結社とは何のかかわりもない大正○薬まで鷲のマークを使ってるでしょう? では、さっそく内部をご紹介しましょう」

「ここがエントランスホール、二層吹抜になっていまして、正面上部に首領様の巨大な肖像が掲げてあります、戦闘員はここに足を踏み入れるたびに首領様に忠誠を誓うんですよ、え? 首領様の肖像を見たい? さすがにそれは……モザイクでカンベンして下さい」

「1階は主にジムになっていて各種トレーニング器具が並んでます、なんと言っても戦闘員は体力勝負ですからね! 柔道場、空手道場、剣道場も併設されていて、戦闘員は日々稽古に励んでま~す」

「2階は食堂、バランスが良くてカロリーも充分な食事が朝昼晩と提供されています、お味のほうもGood! このスペースは研修室、講義室としても活用されま~す」

「3階から5階までは戦闘員のスペースになってます、3階は戦闘員ナンバー200番台用です、かく言う私も戦闘員NO.253、200番台の戦闘員の任務は主に雑役、正直に言っちゃいますと一番下っ端なんです、具体的にどんな仕事かと言いますと、運転手、物品運搬、武器弾薬の調達、施設の保守点検や修繕、戦闘場所の整備、通信、負傷した仲間の救出と応急手当、各種妨害工作などなど、いろんな事をやってます、大型車両免許、建設業、電気工事、看護士などの特殊技能を持っていると特殊技能手当てもつきます、基本大部屋で雑魚寝ですけど、ロッカーは一人一台割り当ててもらえますよ。ここは浴室、一度に10人が入浴出来ます、疲れた体を癒すジャグジー、サウナも完備されてます、その隣はトイレ、そして階段横のこのホールは談話室になっています、煙草は奥の喫煙ブースで吸うのがマナーです、自動販売機コーナーでは卸値で飲み物が購入できますが、アルコール類は夜8時から11時までと決められています」

「4階に上がってまいりました、4階は戦闘員ナンバー100番台用です、100番台の主な任務は銀行強盗や貴金属店などの襲撃、誘拐身代金要求などの資金調達、それと暴動の扇動やテロなど、社会不安を煽る悪事を働いています、やはり経験者は給与面で優遇されますよ、あ、あと医療班も100番台です、3階は雑魚寝でしたが、こちらは4人部屋、カーテンを引いてプライバシーも守れるようになっています、浴室、トイレ、談話室、喫煙ブース、自動販売機コーナーは2階と共通ですね」

「いよいよ最上階の5階です、ここは戦闘員ナンバー一桁から二桁用になっています、二桁は実戦要員、ライダー達と闘うのが唯一の任務となっておりまして、その為に日々鍛錬を重ねています、全身タイツは特殊強化スーツを除いては他の戦闘員と共通ですが、ベルトにショッカーのエンブレムが付いたバックルを付けることが出来ます、柔道や空手の黒帯のようなものですね、花形だけあって個室が与えられていますが、家族の元から通うことも許されています、待遇面でも特別でして、給与が格段に良いだけでなく、戦闘で負傷した場合の医療費全額支給に加えて公傷手当も給与並み、戦闘で功績があった場合は経費での家族旅行も与えられます、また、不幸にして戦闘で亡くなった場合は退職金に遺族年金も加味されます」

「そして、戦闘員番号一桁は、二桁の戦闘員の中から特に技量の優れた者が選ばれる指導員となってます、ショッカーの戦闘員となったからにはいつかは二桁の番号を貰いたい、そして一桁の番号を貰って定年までショッカーのために尽くしたい、それが我々新米の憧れであり目標なんですね」

「はい、以上、駆け足でしたが秘密結社ショッカーの戦闘員棟をご紹介してまいりました、このアジトにはこのほかに幹部棟、研究・医療棟があり、幹部を始めとして悪の科学者、医師などが、近い将来の世界制服を目指して日夜研鑽を積み重ねています」


「悪の秘密結社はどこでも同じと考えていらっしゃいませんか? ショッカーは違います、充実した指導体制による能力の向上を望むことができます、ショッカーは徹底した実力主義、能力さえあればステップアップが可能です、すべてはあなたの才能と努力次第なんです、また、ご紹介してまいりましたように福利、厚生にも力を入れており、安心して働ける、やりがいのある職場です、また、世界組織であるショッカーなら世界を股に駆けて暗躍することも出来るのです、いかがですか? 自分は世の中からはみ出しているな、今の世の中は息苦しいなと感じていらっしゃる悪人の皆さん、ショッカーで存分に暴れてみませんか?   
今月は体験入隊実施期間になっていますので、お気軽にお申し出ください、連絡先はこちら、電話、ファックス、メール、いずれでも結構です、また、個人情報の管理には万全を期しておりますので、ショッカーに連絡を取ったから警察に目をつけられるというご心配も要りません、ご応募、心からお待ちしてま~す!」

            その2

「『もっとショッカーを良く知ろう!』第二回は、『ショッカーに聞く」です、まず最初はショッカー日本支部大幹部、地獄大使よりのメッセージ、では大使、お願いします」

「うむ……君、そこの君だ、君には生きる目標があるか? 大きな夢を抱いているか? 我々ショッカーは大きな目標、夢を抱いておる、それは他でもない『世界征服』だ。 悪人の、悪人による、悪人のための世界を共に築こうではないか! いかにライダーどもが我々を妨害しようとも我々は決してブレない、近い将来、必ずやライダーどもを倒し、悪の理想社会を作り上げる、それを私は君たちに約束しよう……我々は型にはまった無害だが無益な人物を求めてはいない、君には君の個性と言うものがあるはずだ、君には君の適性と言うものがあるはずだ、それが今の世の中からいかにはみ出していようと、我々はそれらを決して否定しない、我々にはどのような個性、適性であってもそれを生かすだけの用意がある、腕っ節の強い者はそれを生かせ、悪知恵の働く者はそれを生かせ、スピード狂ならそれを生かすのだ。 我々は過去の過ちにもこだわらないぞ、そもそも過ちなどと言う観念は画一的な社会観から外れたというだけのことだ、他に類を見ないような経験をした、そう捉えれば貴重な経験を持っている貴重な人材、そう考えることが出来るのではないかな? さあ、ショッカーに来たれ、君が君らしく輝くこと、それが我々の大望である『世界征服』を手繰り寄せる原動力となるのだ、君の力が欲しい、君の経験を生かしてくれ、そして我々に力を貸してくれ!」 

「大使、熱いメッセージありがとうございました、続いて先輩の声を聞いてみましょう」

「俺か? 俺は戦闘員NO.135 強盗・窃盗班に所属してる。 俺の特技はピッキングだよ、どんな錠前でも俺の指先と針金一本あれば屁のツッパリにもならねぇよ、ショッカーに入ったキッカケかい? まあ、スカウトされたんだな、その頃はドジな仲間と組んだせいでパクられてよ、ムショから出たばっかりだったのさ、仲間もいなけりゃ仕事もなくてなぁ、いや、一度は心を入れ替えて真っ当に生きようって思ったこともあったぜ、だがよ、前科者にゃ冷たい世の中だぜ、バイト一つさせちゃ貰えなかったさ……そんな時にショッカーは俺の腕を見込んで声をかけてくれたのよ、あん時ゃ嬉しかったなぁ、涙が出たぜ。 ショッカーでの仕事かい? やりがいがあるぜ、なにしろ仲間は腕利き揃いだ、こないだ銀行をやったんだが、まず元暴走族でドラフト走行の名人がケツからクルマで銀行に突っ込む、すぐにずらかれる様にさ、それからライフルのプロが窓口に置いてあるマスコットの首を吹っ飛ばして見せる、あの腕を見れば誰だって上げた手を下ろそうなんて考えやしねぇさ、で、俺の出番だ、素早く金庫を開けて、運転手と一緒に金を袋に詰め込む、ライフル男が構えてりゃ誰一人邪魔をする奴はいねぇよ、で、三人クルマに乗り込んでずらかる、サツが来た時ゃもう仕事は全部終わってる……こんな鮮やかな仕事はショッカーでなきゃできねぇさ……おっと、言い忘れてたが、クルマも違法改造のプロの手で改造されてるぜ、サツの拳銃くらいじゃ穴なんて空けられないし、タイヤだってパンクさせられねぇよ……。 ああ、確かに給料制だからな一攫千金って訳にはいかねぇさ、だけどよ、腕利きのプロと組めるからパクられる危険性はぐっと小さい、万一パクられても顧問弁護士がついてるしよ、臭いメシを食ってる間も給料は保証される、マネーロンダリングなんて面倒な仕事は知恵の働く奴がやってくれるしよ……実際、札の通し番号から足が付くことってのは多いのさ、それやこれやを考えれば生涯で稼げる額は変わらねぇと思うぜ、そう考えれば臭いメシを長いこと食わねぇで済む方が良いだろう?……それによ、やっぱり大きな夢を共有できる仲間が沢山いるってのは生き甲斐になるってもんよ」


「俺かい? 俺は戦闘員NO.35だ、実戦班だよ、ショッカーに入る前はボクサーだった、8回戦まで行ってたからもう少しで日本ランカーになれるところだったんだ……人生の歯車が狂っちまった晩のことは良く憶えてるよ、あの日は試合が終わったばかりでなぁ……知ってると思うけど、ボクサーってのは減量とも戦わなくちゃならねぇんだ、付き合い始めて3年になる彼女がいたんだが、トレーニングと減量で試合前はデートもままならないのさ、でも彼女は文句一つ言わないで応援してくれてたぜ……試合の翌日にはもちろんデートしたさ、それまでさんざん我慢してたし、我慢させてたんだからな、結構苦戦したけど7ラウンドKO勝ち、祝杯の意味も兼ねてちょっと奮発したレストランに連れて入ろうとしたんだが、なにしろかなり打ち合ったからな、俺の目は真っ青に腫れあがってててさ、門前払いさ、ボクサーなんだ、試合で受けた傷なんだ、喧嘩じゃねぇぜって説明したんだけどよ、『ほかのお客様が怖がってしまいますので』と来たもんさ……俺はムカっとしたけど、彼女はそんな俺を上手く宥めてくれるんだ、本当に俺にはピッタリの彼女だよ。 で、場所を変えて居酒屋で一杯やってたんだがよ、隣のテーブルにイキがった兄ちゃんたちが座ったんだ、そいつら、喧嘩にはちょっと自信があるみたいでよ、俺の顔を見て喧嘩でボコボコにされた奴、弱い奴だと勘違いしたらしいんだ、俺に舐めた口をきいてる内は俺も我慢してたんだが、そのうち彼女にちょっかい出し始めたんだよ『こんな弱虫じゃなくて俺たちと付き合えよ』とかなんとかな、それに対して彼女が『この人はあんたたちみたいなゴロツキとは違うのよ』と言ったもんだから気色ばみやがって、彼女に手を上げそうになったんだよ……俺は頭に血が上っちまってなぁ、気がついたら奴らは血反吐を吐いて床に転がってた……奴ら、結構でかい声で騒いでたから店にいた店員や客は事の次第をきちんと証言してくれたんだけどな、プロボクサーが素人相手に立ち回りしちまうと過剰防衛になるのさ、一人はちょっとばかり障害が残っちまったしな……期間は短かったけど実刑判決が出てさ、ボクサーライセンスは剥奪、バイトしてた店もクビ、仕事を探そうにもムショ帰りじゃどうにも……な……。 そんな時に手を差し伸べてくれたのがショッカーだったわけだ、最初は誰でも200番台だよ、だけど俺にはボクシングがあったからさ、すぐに今の番号を貰えたよ、ショッカーは徹底した実力主義だ、頑張れば頑張った分きちんと評価してもらえる、過去に何か汚点があったとしてもそんなのは関係ねぇんだ……俺はやるぜ、いつかライダーに一泡吹かせてやるんだ、それでよ、俺がムショに入っている間もちゃんと待っててくれた彼女に良い暮らしをさせてやりたいんだ。 今は秘密結社だけどよ、いつか世界征服を成し遂げられたらショッカーの世の中が来る、そしたら大手を振って彼女を嫁さんにしてやりてぇんだ、世界一の花嫁にな、それが俺の世界タイトルってわけさ。」


「僕ですか? 戦闘員のユニフォームが似合わない? まあ、そう言わないでくださいよ、確かにガリガリで背も低いですけどね。 ええ、今はまだ新米なんで200番台ですけど、もうすぐ研究所の方に移ることになってます、化学は専門外ですけど勉強中でして、研究所のほうでも大丈夫だって言ってくれてますよ。 ショッカーに入る前は引きこもりでした、就職に失敗して……自分で言うのも口はばったいですけど、頭脳には自信があるんです、日本では一番偏差値が高い大学の出身ですし……でも、コミュニケーション能力がちょっとね……僕、論理的でないことが我慢できないんですよ、日本の企業じゃ能力もさることながら、コネだとか派閥だとか、能力以外の『人付き合いの上手さ』みたいなものが物を言いますでしょう? 面接で仕事や能力と関係ない事を聞かれるとイライラしちゃうんですよ、それで面接官を言い負かしたくなっちゃって……。 ショッカーを知ったのは偶然ネットで見つけて……これだって思いました、完全な能力主義ってここにしかないですよ……アメリカの企業? だめだめ、全然能力主義じゃないです、イメージが能力よりも重視されますからね、スリムで背が高くてスマートに会話が出来れば能力がある見たいな風潮っておかしいですよ、俳優じゃないんだから……そう思いませんか? 僕ってチビでガリで眼鏡で出っ歯でしょ? これで首からカメラ下げてりゃ昔の風刺漫画に出てくる日本人そのものなんですよね、実は書類を送った事はあるんですけどあっさり断られました、イメージが悪いってだけの理由で……。 ショッカーに出会えて本当に良かったと思います、僕の能力を世界征服なんて壮大な目標に生かせる……それが本当のやりがいってものじゃないですか?」


「あたし? ユニフォームじゃないって? 当たり前さね、食堂で料理作ってるんだよ、そう、だから割烹着があたしのユニフォームさ。 ここに来る前にも調理師やってたよ、役所の食堂でね、でもさ、なんだか『役所の食堂だからこの程度で良いんだ』みたいな雰囲気でさぁ、なんだかみんな惰性で働いてるみたいだったよ、そこへ行くとここは違うね、基本的に体を使うのが多いからもりもり食べてくれるしねぇ、ええ、胸のすくような食べっぷりさね、献立を考えるのは大変っちゃ大変だけど楽しいやね、幹部さんから栄養のバランスにも留意してくれって言われてるから栄養学の勉強もしてるよ……ううん、全然悪い気はしなかったよ、『隊員の健康は任せた』って言ってもらったようなもんだろう? 意気に感じるって奴さね。 そりゃ確かにガラはちょっとばかり悪いけどね、でも取りすましたやつらがカロリー気にしながらボソボソ食べてるのよりよっぽど気持ちが良いやね、ここじゃ建前はいらない、そんなものは通用しないんだよ、本音と実力、それで勝負するのが男ってもんじゃないかい? あたしはそう思うね」
 

「私ですか? はい、地獄大使の秘書をさせていただいております、ここに来る前はとある大企業の専務秘書でございました、でもその方が社長の椅子をめぐる争いに敗れられまして……はい、その方と一緒に辞職いたしました。 人物、能力、人望……すべてに於いてその方こそ次の社長にふさわしいと思っておりました、でも少しだけ堅すぎたようでして……実際に社長になられた方は人付き合いだけが取り得のような方です、出世のためにはそれも大事なのでしょうが、会社のためにはない、私は今でもそう考えております、実際、ここのところ収支が悪化する一方でございますし……。 地獄大使は人付き合いのお上手な方でいらっしゃいます、でも、あの方とは違って組織のためにはどう振舞うべきかを良くご存知で、いつでもそれを念頭に置いて行動されます、ご自身の立身出世のためではなく……それと申しますのも、組織としての目標がきちんと定まっているからではないでしょうか? 私はそう感じます……世界征服……その言葉だけを捉えますと荒唐無稽のように思われがちでございますが、その大きな目標に向かって着実に一歩一歩を進められている……私はそのお手伝いが出来る事を誇りに思っております」


「はい、以上ショッカーで働く先輩達の声でした、いかがですか? けっしてブレない大きな夢、徹底した実力主義、過去にこだわらない懐の深さ、ショッカーは魅力的な職場です。 それに加えて充実した施設、手厚い福利厚生制度、給与体系、安心して働ける秘密結社です、悪人の皆さん、悪の秘密結社に興味をお持ちなら、是非ショッカーをご検討下さい、決してガッカリさせませんよ。 今なら体験入隊実施期間中、さあ、今すぐショッカーにご連絡を!」
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