友よ! ライダー!

文字数 8,340文字

(お題コミュ作品です、お題は ①煙草 ②落し物 ③家族写真 でした。)

「出でよ! シューゾー!」
「シューゾー? テニスウエアにラケット……マツオカか?」
「別人だ(キッパリ)! 我々ショッカーの改造にかかれば火の玉サーブの持ち主なぞ、すぐに生み出せるのだ!」
「火の玉サーブだと?」
「百聞は一見にしかず! 文字通りの火の玉サーブよ! シューゾー! 見せてやれ!」
「あっ、シューゾーが炎に包まれて……私が心配すべきことではないが、彼はあれで大丈夫なのか?」
「ふん、この炎はシューゾーの内部から湧き出てくる炎よ、限りなく熱い改造人間、それがシューゾーなのだ! 焼け死ぬが良い、ライダー! やれっ! シューゾー!」
 バシッ!
 炎をまとったボールがレーザービームのようにライダーを襲う、あまりのスピードにライダーでもかわすのがやっとだ。
「うっ! ボールから焦げた臭いがする……しかし、地獄大使、火の玉というわりには火が消えているが?」
「なんだと? シューゾー、どういうことだ?」
「時速五百キロのサービスなので、風圧で火は消えますが?」
「そ、そうなのか? しかし、ボールは焦げているではないか」
「空気摩擦で焦げます」
「火はつかんのか?」
「八十キロくらいのサービスなら燃えたまま飛びますが……」
「それでは簡単に避けられるではないか! ええい! こうなったら体当たりだ! シューゾー! その燃えさかる炎の体でライダーに体当たりを食らわせるのだ!」
「はいっ!」
 シューゾー自身が火の玉となって走り出すと、ライダーマンが割って入った。
「ライダー、ここは私に任せてくれないか?」
「ライダーマン、スーツド戦闘員は片付いたのか?」
「ああ、マッスルが大暴れさ、彼一人で充分だ、だから加勢に来たのさ」
「対シューゾーの秘策でも?」
「ああ、新兵器を試すのにちょうど良い機会だ……食らえ! ウォーターガン!」
「ぎゃあ!」
「ああっ、シューゾーの炎が……消える……ええい! シューゾー、戦闘員ども! 退け、退くのだ!」


「何だったんだ、あれは……」
「あっけなかったな」
「それはそうと、ライダーマン、ウォーターガンとは?」
「まあ、平たく言えば水鉄砲さ」
「君が開発したのか?」
「本体はトイザらスで購入した、千九百八十円プラス消費税だったよ、まあ、少々改造はしたがね」
「千九百八十円プラス消費税で撃退される怪人か……ショッカーも堕ちたものだな」
「いや、しかし、いまやスーツド戦闘員がデフォルトだ、一点豪華主義から薄利多売へ方向転換が進んでいるのかもしれないぞ、今日はプチ改造プラス強化スーツの戦闘員もいたようだ」
「それはなかなか手ごわいな……マッスルと条件は同じじゃないか」
「いや、元々の筋力が優れているのに加えてプロレス技も使えるし、場外乱闘にも慣れていて臨機応変に戦える、マッスルは格闘の天才だよ、プチ改造スーツド戦闘員と言えども彼の敵ではないさ……おや? マッスル、どうしたんだ? ぼんやり立ち尽くしたりして」
「ああ、いや、なんでもない……」
「そうか? まあ、とにかくアジトに帰るとするか」


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「あなた、どうしました? 浮かない顔……、ショッカーは蹴散らしたんじゃなくて?」
「ちょっとこれを見てくれ」
「ロケットペンダント? 今時珍しいわね」
「写真が入ってるんだ」
「それはロケットですもの……あら? この写真……富樫さん?」
「そうなんだ、今日蹴散らした戦闘員の中にアイツもいたらしいんだ」
「このロケットはどこで?」
「戦いの後、現場に落ちているのを偶然見つけて拾ったんだ、アイツが肌身離さず身につけていた物だからすぐわかったんだよ」
「奥さんとお子さんも……」
「ああ、五つと三つの男の子がいるんだ……」

 富樫、それはマッスルがプチ改造を受けるか迷っていた時、居酒屋で相談に乗ってくれた、同期入隊の親友の名前だ。
 そして、彼は、マッスルがライダー側についた後も、こっそりショッカーの情報を流してくれたりしている……もしそれが発覚すればただでは済まないことを知りながら……。

「俺はアイツを殴り飛ばしていたのか……」
「それは仕方がないわ、覆面をしていたんでしょう?」
「ああ、しかし、今日は強化スーツに加えてプチ改造を受けたらしい戦闘員もいたんだ、多分あれが……訓練で何度も手合わせしているから、格闘の癖は知ってる、おや? とは思ったんだが……」
「富樫さんもプチ改造を?」
「ああ、俺がまだピンピンしているから副作用はないと思ったんだろう……」
「だとすると……」
「ああ、拙いな……」

 実は副作用はあったのだ。
 マッスルこと納谷剛は、プチ改造の注射を受けた後、ほぼ一カ月おきに原因不明の高熱に襲われていた、そしてその間隔は徐々に短くなり、正式にライダーチームに迎えられた頃には十日に一度の間隔になっていた。
 それを重く見たライダーマン・結城丈二が友人の医師と共に剛の血液を調べ、特効薬を作ってくれたのだ、それ以来高熱はぴたりと収まった。
 しかし、富樫がこのままショッカーに留まるならば……。


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 立花のおやっさんからの通信が入った。
「ライダー! ライダーマン! マッスル! ショッカーが現れた! すぐに出動してくれ!」
「「「了解!」」」
 三人はすぐにそれぞれのマシンに跨った。
「あなた! 待って! あたしも行きます!」
「志のぶ……お前はまだ格闘術の修行が……」
「ええ、まだ修行が終わっていないのはわかっています、でも、富樫さんを救い出さないと」
「そうか……わかった! 乗れ!」
 剛と志のぶを乗せたGO-ON号は、先に出たサイクロン号とライダーマン・マシンの後を追った。


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「わはははは、待っていたぞ、ライダー!」
 丘の上には死神博士。
「お? 死神博士か! 随分と久しぶりだな、地獄大使はどうした?」
「シューゾーの出来があまりに悪かったんで、首領様の怒りを買って謹慎中だ、ふふふ、ワシが筆頭大幹部に返り咲く番だ」
「なんだか情けない交代劇だな……」
「何とでもほざくが良い、出でよ! プチ改造スーツド戦闘員ども!」
 死神博士の背後から五人のプチ改造スーツド戦闘員……面倒なので以下スーパー戦闘員と略……が進み出て姿を現す、それを見たライダーマンとマッスルは苦りきった顔……そしてマッスルが叫ぶ。
「おい! お前ら! プチ改造薬には副作用があるぞ、俺は治療を受けたから大丈夫だが、お前らはどうなんだ?」
 しかし、プチ改造戦闘員は改造注射を受けたばかり、まだ筋力増強以外には何の自覚症状もない、しかし唯一の経験者がああ言っていると言う事は……動揺が広がる。

「ええい! 動揺するな、口からでまかせだ! マッスルよ、貴様、裏切るだけで飽き足らずにワシの返り咲きを妨害しようというのか!?」
「本当なんだ、お前ら、ひと月ごとに高熱に悩まされるぞ、そしてその間隔はだんだん短くなる、そのままだと二~三年で死ぬぞ!」
 あまりに具体的な説明……動揺は更に広がったが、しかし、その中の一人が一歩前に出た。

「俺はこれに賭けたんだ! 先が短いなら、余計にここで手柄を挙げないとな!」

 富樫の声だ……。
「富樫か、俺はお前と戦いたくない、お前を殴りたくないんだ! 頼む! 投降してここにいるライダーマンの治療を受けてくれ!」
「おいおい、空気を読めよ、この場、この状況でそんなことが出来るはずはないだろう?」
「富樫……」

 マッスルは唇を噛み締め、死神博士は満足げに頷く。
「そうだ、その通りだ、しかも、ライダー、お前を倒すためだけに改造した怪人を連れて来ているのだ、先が短いのは貴様らの方だ、しかもそれは二年、三年先じゃない、たった今、ここで死ぬのだ!」
「俺専用の怪人? 続・かっぱ男じゃあるまいな?」
「わはは! かっぱ男は貴様に食われたが、今度は貴様を食らう怪人を造り出したのだ……これを見ろ!」
 歩み出てきたのは赤い長襦袢をゆる~く纏った熟女、胸元からは豊かな胸がこぼれそう、右脚をぐっと前に突き出して太ももも露わにし、煙草を咥えた口元には真っ赤な口紅。
「女?……やけに色っぽい怪人だな、だが、強そうには見えないぞ」
「わはは! 正体を現せ! かまきり夫人!(*注)」
 さっと腰紐を解いた女は、見る見るうちにカマキリに変身して行く。
 赤い長襦袢を纏ったカマキリ……胸部は緑色に変わっているものの、巨乳はそのままの形で残り、大きな鎌は鈍く銀色に光っているが、中肢、後肢は肌色のままで、形状にも妙に人間っぽさが残っている、頭部は完全にカマキリと化しているが、口元には真っ赤な口紅が……。
「バッタはあたしの大好物よ!」
「うっ……なんだか艶めかしいような、気持ち悪いような……しかし、死神博士、どうしてカマキリ女でなくてかまきり夫人なんだ?」
「そのほうがエロティックだろうが」
「大人向けの番組ではないのだが……」
「最近は母親の人気を得ようとイケメン俳優を使うではないか、お父さんにもサービスがあってしかるべきではないのかな?」
「わかったような、わからないような……いや、そんなことはどうでも良い、受けて立つぞ、かまきり夫人!」

(*注:かまきり夫人:当時35歳の五月みどり主演、熟女ブームを巻き起こした1975年公開のポルノ映画)

 かまきり夫人が翅を広げて飛び立つと、五人のスーパー戦闘員も丘を駆け下りる。

「ライダー! 戦闘員は私とマッスルが引き受ける!」
「わかった、怪人は任せろ!」
 激しい戦闘が二極に分かれて繰り広げられる。

「きぃっ! きぃっ!」
 かまきり夫人はその大鎌を振り回してライダーを襲う。
「女みたいな掛け声だな、あ、女か……しかし、この鎌は厄介だな……うっ、しまった!」
 硬派のライダーはなかなか女性に手を上げることが出来ず、鎌をかわしながら下がるうちに崖を背負ってしまったのだ。
「くっ……パワーもあるな……」
 ライダーは鎌の根元を掴んで止め、足払いをかけるが、なまめかしい四本足のかまきり夫人には通じない。
「ならば……これでどうだ!」
「ぎゃっ」
 ライダーが頭突きを食らわすとかまきり夫人がひるみ、その隙にライダーは高くジャンプして窮地を脱した。
「もうっ! 鼻がつぶれるじゃない!」
「鼻? どこが鼻だか良くわからないが……」
「あんただって鼻はないじゃない!」
「確かにそれには反論できないな、しかし、戦闘は別だ、これで鎌は封じたぞ」
 ライダーはかまきり夫人の背に跨り、鎌を備えた腕を羽交い絞めにして封じた。
「きぃっ! だけどそれじゃあんただって攻撃できないじゃない!」
「そうでもないさ」
 ライダーは上半身を横に回転させてかまきり夫人を投げ飛ばした。
「きぃっ! なかなかやるわね、ここからが勝負よ」
「望むところだ、女だからと言ってもう容赦はしないぞ」
 ライダーとかまきり夫人は再びにらみ合った。


 その頃、ライダーマンは二人のスーパー戦闘員相手に苦戦を強いられていた。
 強化スーツの性能はライダーマンに分があるものの、プチ改造が加わったスーパー戦闘員にパワーでは及ばないのだ、加えて、弱点だったアメフト用ヘルメットも透明シールドを備えた専用の物に変わっている。
(くそう、分が悪いな……そうだ! 逆にシールドが弱点になるぞ!)
 ライダーマンは背を向けて走り出す。
「逃げても無駄だ、見苦しいぞ、ライダーマン!」
「逃げてなどいないさ、間を取っただけだ、これを食らえ!」
「うわっ! 何も見えない!」
 ライダーマンの右腕にはスプレーペイントアーム、ライダーをツタン仮面から救った時にはクリアブラック塗料を仕込んでいたが、今回はマットブラック、それをシールドに浴びたスーパー戦闘員は前が見えずに鉢合わせ、その隙を狙って、ライダーマンはロープアームを発射し、二人をぐるぐる巻きにしてしまった。


 マッスルもまた苦戦していた。
 一対三でもマッスルの格闘センスを持ってすればそうそう苦戦はしない、しかし、そのうちの一人は親友の富樫、彼もマッスルに準じる格闘センスを持っている上に、マッスルには富樫を傷つけたくないと言う思いもあるのだ。
 その時……。
「うわっ!」
「何だ! これは!」
 ライダーマンのスプレーペイントが炸裂し、二人のスーパー戦闘員の視界を奪う。
「ライダーマンキック!」
 ライダーマンは右往左往するスーパー戦闘員を易々と倒し、マッスルに向かって叫ぶ。
「マッスル! そいつは任せるぞ、私はライダーの加勢に廻る!」
「ああ! ぜひそうさせてくれ」


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「ライダー! 大丈夫か?」
「ライダーマン! 相手が女だと思うとどうも勝手が違うんだ」
「う~ん……ライダー、これを女と認める君を尊敬するよ」
「な、何ですってぇ! きぃぃぃっ!」
 かまきり夫人はめちゃくちゃに鎌を振り回しながらライダーとライダーマンの間を右往左往するばかり、しかし、迂闊には近づくことが出来ない。
「ライダー! あの崖を使おう」
「ん? そうか! 俺が囮になる」
「頼んだぞ! ライダー!」

「こっちだ、こっちだ、ヒステリーオバサン」
「オバサンですって? きぃっ!」
「どこを狙ってるんだ、そんなに無闇に鎌を振っても当たらないぞ……」
 ライダーは一つ大きく息を吸って、決定的な台詞を吐いた。
「このバケモノ!!!!」
「なによっ! あんただって同じようなものじゃない!!! ああっ! いけない!!!」
 ライダーが大きくジャンプしてかまきり夫人の攻撃をかわすと、そこは崖っぷち。
「あわわわわ……」
 たたらを踏むかまきり夫人の背中にライダーマンのロープアームが飛んで翅を封じると、ぎりぎりのところで踏みとどまっていたかまきり夫人は崖を踏み外す。
「あ、ロープ……ああ、ダメ、鎌で切れちゃう、掴まれないわ! ああ、うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……」

「あんただって同じようなもの……か……その台詞は堪えるね……」
 がけ下へと落ちて行くかまきり夫人の悲鳴を聞きながら、ライダーはひとりごちた……。


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「富樫、これを返すぜ」
「これは……」
 マッスルが軽く放ったのはあのロケットペンダント。
「大事なものなんだろう? もう落とすんじゃないぜ」
「ああ……礼を言うよ」
「訊いたことがあったよな、何でそれをいつも身につけてるのかって」
「ああ……あったな」
「あの時、お前はこう答えたんだ……『俺たち戦闘員はいつ死んでもおかしくない、死ぬ時は家族に見守られて死にたいものだが、そう上手くも行かないだろう、だからせめて家族の写真を肌身離さず持ち歩いているんだよ』ってな……一字一句間違いなく憶えているぜ」
「確かにそう答えたかも知れないな……」
「高熱の話は本当だ、四十度の熱が何日も続いてみろ、確実に死ぬぜ、お前は家族を残して死にたいのか?」
「……だが、だが、他にどうしろと言うんだ? 俺には家族を養う義務があるんだ、確かにプチ改造は安全だろうと考えたのは甘かったようだ、だが、次々と志願していく中で、中年に差し掛かった俺がショッカーで生きていくためにはそうするしかないじゃないか!」
「ショッカーと言う組織の中ではな、だが、俺を見ろよ、ショッカーから足を洗ってもちゃんと生きてるぜ」
「俺だってそうしたいさ、だが、家族はどうなる? お前と違って小さな子供もいるんだ、俺が逃げ出したら、妻は? 子供は? 無事でいられると思うのか? 俺はショッカーを裏切るわけには行かないんだよ!」
 そう叫ぶと富樫はストレートパンチを繰り出して来た、マッスルがそれを難なくかわすと、白いロープが飛んで来て富樫を絡め取り、白い忍者装束が閃光のように走ると、富樫に馬乗りとなって、ヘルメットを脱がせた。
「富樫さん、じっとしてて」
「その声は……志のぶさんか?」
「そうよ、捕まって動けないフリをしてて」
「それは……」
「今、ここであなたは死んだことにするの、そうすればショッカーもあなたを探したりしない、家族にも手は出さないわ」
「そ……そうか……」
「このクナイであなたを刺すフリをするわ、出来るだけハデに死ぬ演技を……」
「わかった……」
「行くわよ……エエイッ!!」
「ぎゃああああああああああ」
 志のぶがゴム製のクナイを富樫に突き立てると、空洞になったクナイの中から真っ赤な血のりがハデに飛び散った。
「い、いかん……退却、退却だ! 貴様ら、ワシを守って走れ!」
 死神博士は、あくまでも自己中に、僅かなノーマル戦闘員だけを引き連れて逃げて行った。


「富樫さん、もう大丈夫よ」
「ああ……ありがとう……」
「縛ったりしてごめんなさい」
「とんでもない……俺は危うく家族を泣かすところだった……恩に着るよ……ありがとう、納谷、ありがとう、志のぶさん……」
「良いんだ、礼なんか、親友じゃないか、当たり前のことをしただけさ……それより、まずは奥さんに電話だ、ショッカーから死亡通知なんか届いてみろ、奥さんの寿命が縮まっちまうぜ」
「ああ、そうだな……あ、でも、スマホが……」
 すると、ライダーマンがスマホを差し出す。
「これを使ってくれ……おっと、その前に注射だ」
「それは……」
「副作用を抑える薬だよ」
「何から何まですまない……ああ、俺だ……無事だよ、納谷に救われたんだ、ショッカーから通知が行くと思うが、俺はピンピンしてるから心配するな、ショッカーからも足を洗えるんだ……ああ、本当だとも、新しい仕事を見つけるまで苦労をかけると思うが……そうか、ありがとう……しばらく子供たちと待っていてくれ、ほとぼりが冷めたころ必ず迎えに行くから……ああ、そうだ……うん、新しい人生の始まりだよ……ああ……ああ……必ず……わかってるよ……じゃあな………………ありがとう、ライダーマン……それと、こんなことを頼めた義理じゃないんだが……もし良かったらプチ改造を受けたあいつらにもさっきの薬を……」
「いいとも、ただし、もうショッカーに戻らないと約束してくれたらだがね」
 ライダーマンはいたずらっぽくウインクを……多分、した……。


O(・_・)○☆   o(・_・)○☆   o(・_・)○☆   o(・_・)○☆


(テーマソング https://www.youtube.com/watch?v=D6wNzIrdSUk を右クリック、一旦YouTubeに飛んでからお戻り下さい)


「あなた、富樫さんから手紙よ」
「そうか! 早く見せてくれ!」
「もちろんよ、ねぇ、どうしてるの?」
「ちょっと待ってくれよ、これから読むんだからさ……岩手の田舎に戻って畑を耕しているそうだ」
「へぇ、富樫さんなら人の二倍耕せるわね」
「ははは、違いない……お、写真も入っているぞ」
「どれ?……わぁ、幸せそうね……」

 それは、太い腕に二人の息子をぶら下げてにっこりと笑う富樫と、微笑みながらそっと寄り添う奥さんが写った家族写真だった。

 剛が窓の外の夕焼けに目をやると、志のぶもまた窓の外に目をやった……。
 かつて苦楽を共にした親友もまた、故郷の畑でこの夕焼けを眺めていることだろう……。
 
 親友とその家族は平穏な暮らしを手に入れた。
 自分は、志のぶは、まだまだ戦いの日が続くだろう……。
 だが、そんなささやかな幸せを、この美しい日本を蹂躙しようとするショッカーを野放しにするわけにはいかないのだ……。

 志のぶの手を握ると、志のぶもまた、その手を力強く握り返して来た……。


         
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