待ってよ! ライダー!

文字数 2,309文字

(お題コミュで書いたものです、お題は前作と同じく ①サイコロ ②手を繋ぐ ③過剰でした。 前作は3つとも使いましたが、今作は③の過剰だけ、スピード違反ですw)

           『待ってよ! ライダー!』

 ウィーーーーーーーーーーーーーン
 ウィーーーーーーーーーーーーーン
 ウィーーーーーーーーーーーーーン
「はい、そこのバイク、路肩に寄って停まりなさい」
「えっ?…………」

 仮面ライダー2号、一文字隼人はショッカーを追って爆走中だった。
 すると、わき道から突如現れた白バイによって停止を命じられてしまったのだ。
 停まればショッカーを取り逃がしてしまう……しかし正義のヒーローとしては警察を振り切るわけにも行かないのが辛い所だ。


「はい、あのね、今何キロ出てたかわかってる?」
「いえ……夢中でショッカーを追っていたもので……」
「ふ~ん、ショッカーをねぇ……あのね、160キロ出てたの、この道路の制限速度知ってる?」
「いえ……気づきませんでした……」
「60キロなの、160から60引くと幾つ? 100キロオーバーだね? こりゃぁ免許なくなっちゃうなぁ……」
「スミマセン……」
「それにさ、ナンバープレートはどうしたの? 付いてないじゃない」
「はぁ……」
「しかも、まぁ随分とハデに改造したもんだねぇ、これじゃ車検通らないでしょう? 車検の時だけ元に戻して通してるんじゃないの?」
「サイクロン号は私に合わせて変身するもので……」
「へぇ、そうなんだ、バイクも変身をねぇ……それとそのコスプレね……実は僕もね、子供の頃仮面ライダーに憧れて、そのまま大きくなって白バイ隊員になったくらいだからさ、気持ちはわかるんだよ、気持ちは、でもさ、ボディスーツは良いとして、そのヘルメットはねぇ……ちゃんとSG規格に合ってるのかなぁ」
「これはヘルメットと言うわけでは……」
「見たところ丈夫そうだし、頭部を全部覆ってるから安全そうに見えるけどね……法律は法律だからさ、調べるからちょっと脱いでみてよ」
「いえ、脱げないんです、これが地なもので」
「あ~、すっかりライダーになりきってるんだ……そのスタイルは2号かな?」
「あ、良くご存知で、1号と見分けてくれる人、少ないんですよ」
「だろうねぇ、でも僕はホラ、子供の頃夢中になって見てたからさ、分かるんだよね、やっぱり1号と2号は原点にしてベストだよねぇ……まぁ、それはそれとして、違反切符を切らないわけにも行かないんだよね……」
「あっ! ショッカー!」
「えっ!?」
 その時、後方からショッカーの戦闘員が息を切らせて追って来たのだ。

「ショッカーの戦闘員め! まだウロウロしていたのか!」
「ハァハァハァ……仕方がないだろ! ハァハァ……置いてきぼりにされたんだから!」
「何と……死神博士は冷たい上司だな、職を替えたらどうだ?」
「ハァハァ……でも待遇は良いんだよっ! ハァハァ……それに俺たちみたいな前科者を雇ってくれる所は他にないんだ!」
「職の為に私と戦うと言うのか?」
「ハァハァ……そうだ! ライダーに遭遇したのに戦わなかったと知れたらクビになっちまうだろ! それにライダーと戦って怪我したとあれば、医療費全額支給に加えて一時見舞金も出るし、ボーナスにも色をつけてもらえるんだ! ハァハァ……」
「……ショッカーも色々大変なんだな……だが、あくまで戦うと言うならば相手になってやるぞ」
「やらいでか! お前に傷の一つでも負わせられればハワイ旅行の特典もつくからな、しかも配偶者は無料で、子供でもじいちゃんばあちゃんでも同行者二人までは半額なんだ」
「随分と資金があるんだな」
「世界制服の為にはお前は目の上のたんこぶだからな、目的を同じくしている、とある国の後盾があるんだ」
「おい、同志よ、それは秘密のはず……」
「あ……しまった、つい……」
「ははは、それくらいは察しが付いているさ…………だが、ハワイ旅行はあくまで私に傷の一つもつけられたらの話だろう? 私に敵うとでも思っているのか?」
「ウルセー! 男には戦わなくちゃならない時もあるんだよ、たとえ敵わないとわかっていてもだ! 行くぞ、ライダー! イーーーッ!」
「「「「「「イーーーッ!」」」」」」
「おまわりさん、私の後ろに隠れて……とおっ!」

 死神博士も怪人も抜きで戦闘員のみ、しかもかなり長距離を走って来て疲れきっている。
 ライダーは、家族思いの戦闘員たちに、過剰な重症を負わせないように手加減しながらも、あっという間に彼らを蹴散らし、巡査はただ呆然と見守るだけだった。

「つ……強い……あなたは、ほ……本物のライダー……」
「おまわりさん、こいつらの処置はお任せしても良いですか?」
「え?……あ、ああ……分かりました」
「それと、違反切符は勘弁していただけませんか?……」
「あ……そうですね……ショッカーを追っていらしたわけですし……では、緊急車両扱いと言う事で……」
「ありがとう、助かります」
 ライダーは巡査に手を差し伸べ、感激した巡査はその手をしっかりと握り締めた。
「ところで死神博士と怪人は?……」
「だいぶ時間を食いましたからね、もう追っても無駄でしょう……私も変身を解いて帰ります、安全運転でね」
「あ……ライダーが一文字隼人に……バイクもノーマルに……」
「職務ご苦労様です、では私はこれで……」
「あ……ライダー、いや、一文字さん」
「はい、まだ何か?」
「ヘルメットはちゃんとかぶって下さいね……」


        
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