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文字数 609文字

 それから藪千代さん、近くの宿に入ると。
良三を介抱して。風呂に入らせ、髪結いを頼み何とか一端の武士に良三を仕上げると。
女中に笑われながら、吉岡さんの道場の場所を聞いたのでした。
 何で笑われるのか?と思ったら、京の都でそんな事を聞くのは、命知らずの武芸者か田舎者だけだと言われたのでした。

 藪千代さん京の都は、宿の女中まで田舎者を馬鹿にする。
早く帰りたいと切に願うのでした。
 本当は吉岡の屋敷へと、二人で行くつもりでしたが、テンションがマックス下がった藪千代さんは、飛脚便が届けた師匠よりの金子で酒を飲みだし。

「お前一人で行け。鬱陶しい」

と管を巻いたのでした。
 良三君、ご飯を食べながら、

「ああ、じゃ適当にここの不味い飯止めて。
吉岡さんに、ご馳走してもらうよ。あははは
本当に俺一人で良い思いしていいの?」

と、袋叩きに会うかも知れないのに。存外平然と宣いました。酒癖の悪い藪千代さん、ニヤリと笑いました。そして、

「あははは、俺は良いよ。何なら土産でも貰ってきてくれ」

と、良三君に吉岡道場の場所を教えると。
一応礼儀として、菓子折りを持たせて宿の前で見送るのでした。
 藪千代さん、

「死ねばいいのに」

と思っておりました。
 ご機嫌な良三君は吉岡さんの屋敷に着くと、

「たのもう!」

と道場破りの様な声を出したのであります。
当然、門前の者も、こやつやる気だな?
と完全戦闘モード。

「こちらへ」

と、そそくさと良三君を道場へと案内したのです。
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