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文字数 650文字

 良三は以前、酔って師匠に殴り掛かり投げ飛ばされて、腕を圧し折られたのでありました。
その時の痛みと、世の中には、こんな鬼みたいに強い人がいるのかと、大人しくなったのでありました。
 さて良三、立ち上がり路銀を貰い、明日の用意でもと思っておりますと。

「待て!お前、まさかその格好で行くつもりではあるまいな。ああ、そうか着物など持たぬか。う~ん待て、三河屋に着物を頼もう。
ならば、後2日はかかるな。う〜ん、ちょっと待て!」

と師匠は考えました。
 田舎者の百姓の出の良三では、京の都に入る前に捕まってしまう。
それでは意味がないと思ったのでした。
何故なら、この旅は良三を戒める為のものでございました。
 万々寺住職は、やはり同門の柔術の達人で。
街のチンピラの大男二人を投げ飛ばし、弟子として小遣いとして、寺に住まわせていたのでした。町の人からは、万々寺の生き仁王と呼ばれる程の、やはり2メートルを超えるかと言う猛者なのでした。

 良三の村には、そしてこの肥後には、良三を超える背丈の者がおりません。
従って良三は自分こそが、この日の本で1番強い男だと思っているのでした。
 まあ、師匠や先輩達を除けば、では御座いましたが。

 だから書状には、良三の精神を鍛えてくれと書記されておりました。
 そんな事は知らない良三は、これは物見遊山だな、師匠も分かってらっしゃる、と良い気分でいたのでした。
 さて師匠、う〜んと考えて、道場を見回すと片付けをしている男が目に入りました。
男の名は、大堀藪千代(おおぼりやぶちよ)で御座いました。
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