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文字数 592文字

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 さて案の定、武良は宿場町に着くと。必ず町の茶屋で酒を飲み大騒ぎをしておりました。
兵庫に着く頃には、既に路銀も殆ど無くなり。
最早、急いで京の都へと着かなければ、飢え死にする程で御座いました。
藪千代、流石に腹に据えかねて。

「お前、この旅は何の目的か、分かっているのか?」

と聞きました。すると、

「物見遊山。師匠も分かっていらっしゃる」

と存外、気にもかけておりませんでした。
 更には、

「すまん!お前が怒るのも分かる。しかし、
侍はモテるな。思わず金を使い過ぎた。
後は食うだけしか残っとらんな。
うん、分かった。すまん酒は飲まん」

と謝ったので御座いました。
 藪千代、さっさとこいつを万々寺に放り込んで。早馬で帰ろうと心に誓ったので御座いました。藪千代は、師匠より万々寺で良三が修業をさせられるのを聞いていたのでした。
 さて、何だかんだと漸く京都に着きました。
道の往来には、かなりの人がうろうろしていて賑やかなものでした。
そして佇まいは、とても静かで、風流。
線香の匂いなどが立ちこめる、何とも有り難い街で御座いました。
 
 お上りさんの田舎者、良三はキョロキョロしながらも、侍の格好をしておりますので。
ふんぞり返って腕を組み、大道の真ん中を歩いておりました。
 すると前より、綺麗な着物を着た颯爽とした若武者達がやって参りました。
数は八人はいたでしょうか?
どうやら、何処かのお武家様の様でした。
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