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文字数 683文字

 良三君、寒い道場にポツンと残され。
はて?ご馳走は?と思っておりましたが。
成る程、京の都の有名な道場は凄いな。
宴会場も道場か?!
とニコニコしておりました。
 藪千代さんから、吉岡一門は京でも有名な武芸者集団だから、さぞかし美味いものが出てくるだろうよ、と嘘を聞かされていたのでした。
 完全に罠にはまった良三君の命運は、風前の灯でした。
と、そこへ、

「お待たせ致しました。菓子折り有難う御座います。祖母が喜んでおりました」

と3人の門弟を連れて一馬さんが現れました。
当然、道着を着ておりました。
はて?練習終わりかな?
 流石に一流の武芸者こんな遅い時間まで、と感心しきりの良三君でした。
とそんな良三君に、

「では、一手ご教授願おうか」

と木刀を持って、3人は良三君の前へと立ったのでした。
良三君、はて?京の仕来たりは、先ず練習で腹ごなしかな?
と郷に入れば郷に従えで、

「よかろう」

と立ち上がったのでした。
 良三君、宿で不味い飯を食っておいて良かったと思ったのでした。
 宿の飯は決して不味い物ではありませんでしたが。良三君に言わせれば、カブの漬け物は薄いし酸っぱい。婆ちゃんの漬けた漬け物方が遥かに食べ応えがあって良かったし。
豆腐は湯豆腐で、あっさりし過ぎだと思っておりました。

 良三君は味覚音痴で、安くて大量の飯とおかず。こってり脂ギトギトが美味いと思う、青年だったのです。
 そんなグルメリポートを、頭の中でしておりますと。

「では、一人一人お相手致そう。
我が流派は剣術にて、木刀でお相手致す。
宮本殿は、いかが致しますかな?」

と、一馬さんが武士として卑怯にならない様に聞いたのでした。
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