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文字数 592文字

 その言葉を聞いて良三君。

「素手にて。我が流派は柔術なれば」

と答えました。
 本当は良三君、剣術がからっきしでした。
人をぶん投げるのが好きだったのです。
又はぶん殴るのが。
一馬さん、ニヤリと笑うと1番若い門弟に、

「お前から行け!肥後の柔術家、宮本武蔵先生の腕前を、とくと拝見させていただけ!」

と若武者に言ったのでした。
 確かに見た目は10代の青年でした。
良三君は25歳、一馬さんは27歳ですが。
過酷な労働環境で良三君は日にも焼けてましたし、30代と言っても良いほど、老けて見えたのです。

 だから一馬さんは、ひょっとしたら本物かもなと思っていたのでした。
ですが肥後の田舎の武芸者など、高が知れていると、なめてもいました。
当然、剣で相手をすれば、勝てないまでも負ける事はまずなかろう、と若武者を1番手にしたのでした。

 1発良いのを入れてやれば。
おお!流石吉岡一門と、それで後は笑って、酒でも飲んで仲良くなれるかもな、とすら思っておりました。
 さて、ちょっと緊張気味だが若武者、
ヤー!と気合を入れた。
 だが良三君は、意に関せずどうせ練習だからと、フフフと笑っていた。
すると鋭い一撃が頭に、
スカポーン!ガツン、ときた。

「痛っ!いてーっ!」

思わず頭を押さえる良三君。
ほらなとニヤニヤ笑う一馬さん。これは案外、簡単に事が済むかもと思っていると。
良三君、鬼の形相になった。
顔は真っ赤で完全に切れていた。
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