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「うむ、中々の剣さばきであった。次に会ったら、私が試合をしようかと思っておる。
ではこれにて、一馬殿を手厚く葬って下され。
失礼致す」

と佐々木小次郎はその場を去った。
 門弟達は一馬の亡骸に対して皆、涙を流して悔しがっていた。
 剣豪、宮本武蔵が吉岡一馬を倒したの一報は光よりも速く日本中に広まった。
正に新幹線、噂であった。
 当然、肥後の柔術家、良三君の師匠、宮本武蔵の所へも、その知らせは届いた。
お奉行所からも問い合わせがあったが。
宮本武蔵は肥後の地を一歩も出ていないので。
やはり、別人であろうと言う事になった。

 だが、宮本武蔵師匠さんは、何やら妙な胸騒ぎがして仕方無かった。
二、三日して藪千代が、憔悴しきった顔で現れて。武蔵の疑念は確信へと変わった。

「藪千代。良三、いや武良は万々寺に送り届けたのだな」

道場で正座する藪千代に、師匠宮本武蔵は問い詰めた。
すると、もじもじしていた藪千代さんは、
突然。

「済みませんでしたぁ!」

と頭を床に擦付け土下座をした。
しかし、何が済みませんなのかを、藪千代さんは言いませんので、師匠イライラしながら。

「何をした!?一体、良三は、何をしでかしたのだ!」

と怒りました。すると藪千代さん、

「吉岡一門と大喧嘩をしまして。追われておりました。このままでは、私も酷い目に合うと慌てて、帰ってきた次第で御座います」

「待て待て。では、吉岡一馬を倒したのは良三ではないのだな」

「それは存じません。噂は道中聞きましたが。
師匠と同じ名の別人かと・・・」

「そうかそうか。では、まさかとは思うが良三は、わしの名を騙ってはおらんのだな」
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